インスタントフィクション「リスト」

大都会に漂流した。ただ時間を浪費しているのが初めは怖かった。カッターで印をつけると日にちの感覚を失わないようなった。私は今でも覚えている。初めて印をつけた時に生きていると強く実感した。印が増えていくたびに実感はますます増した。そうして、私は漂流してから今まで印をつけ続けてきた。でも困ったことに、もう印をつける場所が少なくなってきた。印はだんだん小さくなっている。しかし私は小さい代わりに、深くまで印をつけた。もっと初めから小さくしておけば良かった、なんて後悔をする。でも、それは仕方のないことだ。そんな後悔をしてもしょうがない。私は印を出来るだけ多くつけられるように、小さく綺麗につけた。先のことを考えて不安になる時、何か嫌なことを思い出した時、そして自分自身がどうしようも無くなった時は決まって深く印をつけた。漂流しても、私は生きていると実感できた。

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