『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三章
深夜1時を回るころ、オレこと高藤哲司は自宅に到着した。自宅は大きな戸建てばかりが立っているエリアの一画にある。お父さんの高藤隆治が金融業界専門の業界誌の社長として成功して、うちはこの辺でも一番大きい家を建てていた。辺りはしんとしていて、自転車のチェーン音が妙に響く。オレは高藤という表札がかかっている大きな門扉をそろそろっと開けて家の敷地に滑り込んだ。
うちの庭で飼っているビーグル犬のシュヴァルツがくーんと鼻を鳴らしてオレの脚にすり寄ってきた。オレはかがみこんでシュヴァルツ