12球団ドラフト展望⑩~広島東洋編~

リーグ4連覇を目指したものの、4位に沈んだ昨シーズンから巻き返すどころか最下位争いを余儀なくされている。3連覇に貢献した多くの選手がピークを過ぎていることに加え、近い将来、看板選手の大瀬良大地と鈴木誠也が流出という特大の爆弾を抱えている。

上記のことにだけではなく、ベテラン勢の年俸の高騰も相まって苦しい球団運営が予想される。ここ数年は、チーム再建のためのドラフトを送ることになりそうだ。苦しい状況を鑑みて、今年のドラフトを占っていきたい。

1 先発投手

森下暢仁が早くも大黒柱となる一方で、チームとしては先発陣の弱体化が進んでいる。ジョンソンは状態が上がらず、ファームでの調整を余儀なくされている。野村祐輔も最多勝を獲得した姿ではない。そして頼みの大瀬良までも、右肘の故障で長期離脱してしまい、チームで規定投球回に達している投手はゼロだ。

さらに来シーズンには大瀬良がフリーエージェント権を取得見込みで、宣言することになった場合は争奪戦となり、残留する保証もない。まずは短いスパンで立て直したい。

即戦力に近い存在となると、左投手だと早川隆久(早稲田大)、右投手だと栗林良吏(トヨタ自動車)が筆頭格になる。

早川は、今秋の東京六大学野球リーグで2試合に登板、18回の投球回に対して30奪三振と異次元の投球を見せている。コンスタントに140キロ台後半から150キロ前半を記録するストレートは勿論、スライダーやツーシームといった変化球をコースに投げ分けるテクニックも光る。

一方の栗林は、150キロ近い速球に加えて、130キロ台のフォーク、120キロ程度のカーブを織り交ぜた投球で都市対抗野球東海地区予選でMVPを獲得した。制球の不安もなく、目立った欠点が少ないことから、最も即戦力に近い投手とも言える。

両投手が指名できなかった場合は、大道温貴(八戸学院大・投手・右投)を指名して先発陣の強化を図りたい。昨年の全日本大学野球選手権でも好投したが、今秋のリーグ戦ではノーヒットノーランを記録するなど、敵なし状態だ。美しいフォームから50キロに迫るストレートとスライダーで勝負する正統派投手だ。

2 主力野手の後釜

鈴木誠也の後釜となる選手を早めに確保する必要がある。近い将来、ポスティングシステムやFAで他球団に移籍した場合は、丸佳浩が巨人に移籍した以上のダメージが残ることが予想される。

坂倉将吾や小園海斗など、左打ちに有望株が多いこともあり、鈴木の後釜は右打ちで補うことができれば理想的だ。鈴木のように三拍子揃った選手になる姿を想像とすると、是が非でも元謙太(中京・内野手・右打)を指名して、新たな看板選手に育成したい。長打力のある打撃は勿論、投手としても最速140キロを超える強肩を生かし、外野手として起用できるとよい。山本浩二から脈客と受け継がれる5ツールプレイヤーにふさわしい存在だ。

ポスト鈴木と同時に、菊池涼介の次を担う二塁手の指名も視野に入れたい。牧秀悟(中央大・内野手・右打)を指名できるに越したことは無い。ただ、牧は1位で指名することが予想されるため、獲得は現実的ではない。

それならば内山壮真(星稜・捕手/内野手・右打)を3位前後で指名したい。内山は捕手としても一流だが、二塁手を任せたい。体格に恵まれているわけではないにも関わらず、スケールの大きなプレーを志向する。センスあふれるプレーと垣間見えるパワフルな打撃は、本家と似ている。

3 リリーフ陣の若返り

中崎翔太や一岡竜司といった三連覇を支えたリリーフ陣にも陰りが見えており、立て直しは急務だ。今年はケムナ誠や島内颯太郎が一軍に定着しているが、絶対的な存在ではない。

左右ともに質・量に不安を抱える中継ぎ陣に加わる候補の中で気になる存在が平内龍太(亜細亜大・投手・右投)だ。神戸国際大付時代から注目されていたものの、大学入学後は故障もあって登板機会に恵まれていなかった。故障が癒えた今秋のリーグ戦では、主にリリーフとして起用され、最速156キロのストレートを投げ込み注目を集めた。

とはいえ、魅力あふれる剛球を投じる反面、アバウトな制球や変化球の精度には課題が残るだけに、経験を積む過程で解消していきたい。

故障がちだった平内に対して、森博人(日本体育大・右投・投手)は4年間の上積みがある。スリークォーターから繰り出すストレートの最速は155キロに達し、高速スライダーという決め球も持っている。

またアクセントとして、小木田敦也(TDK・投手・右投)中川颯(立教大・投手・右投)といったチームにいないタイプの投手でブルペン陣の活性化を図りたい。

まとめ

一つの時代が終焉を迎え、新たな時代に突入した赤ヘル軍団だが、10年前は暗黒時代の最中だった。三連覇が夢の中だったと思われないためにも、実りあるドラフトをして再度大輪の花を咲かせるシーズンの訪れを待ちたい。

参考


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