《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島6

夢話ノ陸 お元気三ネズミで頭スッキリ?

 「で?ネコが、ネコ飼ってたにゃんか?」

 そらの決めセリフなど全く興味なく、オットは大きななあくびをする。そらはフゥーーっと、怒ったように毛を立たせている。

 「ネコがネコ飼えるわけにゃいにゃ!!吾は、人間で、大切な人と暮らしてて、花を飼ってたんにゃ!!!」

 「ん?大切な人、人間のご主人と暮らしてた、飼いネコだったにゃか?」

 「ちがーーう!!!......ん?にゃ?吾、飼いネコにゃ?ん?人間?ネコ?人間??」

 あちゃーというように、オットは片方の前足を顔の前においた。片目だけ前足から出ていて、そこからそらを伺うが、こんがらがってしまって両手をキミョウにくるくる回し始めている。

 「仕方ないにゃ...よし!いでよ、お元気ミネズミ!」

 人差し指を一本立ててくるくる二回、ピンと指を上にしてそう言うと、パチンと指を鳴らした。
 オットの頭の上ら辺がもやもやとキラキラ光る七色のわたあめみたいな雲がもくもくっと現れて、そこから雲を突き抜け、消すようにけちらして、三匹の小さい黒いファンシーネズミが元気に、オットの頭にスチャっと忍者みたいに降り立って登場した。

 「わぁーい、オットーひっさー!!」

 三匹ネズミは元気よく頭の上でピョンピョン跳ねながらそう言って、オットの長い白ひげをビンビン引っ張って遊んだかと思うと、遠慮なしにオットの体を踏んづけて、ピョン、ピョン、ピョーンと一列になって飛んだ三匹は、きれいな半分お月様のような半円を空中に描いて床に降りると、タタタタと素早く四つ足で駆けて、一斉にピョンと大きくウルトラジャンプ、そらの顔目掛けてキックをめり込ます。
 そらの頬がグニャっとへっこんで戻った時には、スタッとソファーにキャッキャ両手を上げて踊っている。
 そらは頭くるくる、目くるくるで、足ふらふらで、しんぼうたまらずしゃがんで丸くなって両手で頭を抱える。

 「さ〜てにゃん、そら!!こっち見るにゃん!!」

 大きな声を出したオットに、ビクッとしたそらは慌ててピョーンっとキョンシーみたいに立ち上がり、オットを見て目を見開いて固まった。

 「よし!そらは、何者にゃん?ここ、魔法の国、キャットストリー島になんで迷いこんだにゃん?」

 そらは敬礼して、腕を下ろしてピンと背筋を伸ばす。

 「吾は、人間であったにゃん!千葉って所に小さいマンション借りて、人間!そう!恋人の歌愛里(かおり)と、ホゴネコだった花ちゃんと一緒に暮らしてたはずにゃん!何かを探して、ネコ神社にお友達と出かけた...それ以上分からないにゃん!」

 「ふむ、ふむ。だいぶ、記憶そうしつにゃんね。でも、そらは大事なことを覚えてるにゃん。それが叶えられれば、元に戻れるにゃんよ〜」

 オットはニヤニヤ〜っと、三日月みたいな目と口で大きく笑う。

 「それなら話は早いにゃん、ここに住んで、わたしゃのお店の手伝いすれば、す〜ぐにゃん!助かったにゃん!」

 クククっと怪しく笑うオットと、いつの間にかオットの頭の上に三匹の黒ネズミが戻って、同じようにクククと片方の前足を口に当てて笑っている。
 そらはそれを見て邪悪すぎると思い、本能的に花へ抱きついた。花は優しい顔をそらに向けた後、キッとオット達をかるく睨んだ。

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