桜並木で
夕暮れの桜舞う道歩いてく
二人手に持つ黒い筒
喜と悲の詰まる思い出を背に
長きにわたる通い路も
遠い記憶も鮮明に
深いため息裏腹に
速い鼓動を意識する
二人とも声を出せない静寂に
心地よささえ感じて歩く
桜道 終わる時間が刻々と
別れの時が近づいてきて
どちらともなく足を止め
見上げる桜 美しく
散る寂しさと胸の内
二人想うは同じ言の葉
賑わいの桜舞う道初めての
希望抱いて向かう空
君と出会いし学び舎は晴れ
長く短い通い路も
舞う薄紅は鮮明に
望む未来と裏腹に
春一番に口閉ざす
苦しくて声に出せない静寂に
震えた声で幕を引く君
「じゃあまたね」またが来ないと知っていて
交わすいつもと違う挨拶
乾いた喉で絞り出す
明日と言えない最後の日
震えながらに紡ぐのは
想いと違う同じ言の葉
踏み出す足と遠ざかる君
刹那の時もスローに見えて
踏み出す勇気 声出す勇気
臆する暇はありはしないと
ここを逃せば「また」は来ないと
呼び止める やっと出てきた胸の声
またが欲しいと伝えなければ
桜舞う景色の君を前にして
うまく言葉にならない想い
それでも言わねば次はない
君のこわばる顔を見て
マイナス全部呑み込んで
伝える五文字 「君が好き」
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