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人間は進歩する

「私はかつてあった者ではない」

古代ローマの詩人クイントゥス・ホラティウス・フラックス(前65〜前8)の言葉。
以前の私と今の私は違う、という意味の言葉である。
ラテン語の “ non sumquails dram “ は、アーネスト・ダウスンというイギリスの十九世紀末の詩人の詩の一つの題にもなっている。

漢文にも「呉下の阿蒙に非ず」という言葉がある。
これは後漢末期に呉の孫権の将軍になり、赤壁の戦いで戦功をあげるなど活躍した呂蒙のことを、孫権の参謀であった魯粛が言った言葉である。

勇敢だが教養のなかった呂蒙は孫権に諭されて勉学に励み、学問を身につけた。
その呂蒙と話をした魯粛は感心して、
「あれは呉にいた頃の無学文盲の蒙ではない」
と言った。
それに答えて呂蒙が言ったのが
「士別れて三日なれば、即ち当に刮目して相待つべし」(有為の人物とは、別れて三日経って会えば目をこすって見直さなければならないほど進歩しているものだ)
という有名な言葉である。

〈 渡部昇一・著〉

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