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1NCE IoT向け通信サービスでデキそうなコト

1NCEってなに?

ワイヤレスジャパン2023に出展

開催中のワイヤレスジャパンでも話題をさらっているそう・・・10年2000円と衝撃的なチラシが撒かれています。ちょっと他と比較しようと・・・シークレットモードで「SORACOM SIM」で検索してみると、Googleのリスティング広告のトップに「1NCEのIoTSIM。SoftBankが発売」が出てきますねw

ワイヤレスジャパン2023のチラシ

1NCEがナニ者かBardで調べてみた

私> 1NCE SIMって知ってる?
Bard> はい、知っています。
1NCE SIMは、ドイツの1NCE社が提供する、IoTデバイス向けのSIMカードです。1NCE SIMは、月額定額制で、データ通信量に制限がありません。また、世界100か国以上で利用することができ、ローミング料金もかかりません。1NCE SIMは、IoTデバイスを簡単に接続して、データ通信を利用できるようにするためのソリューションです。1NCE SIMの詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。https://www.1nce.com/en/

私> 1NCE社てどんな会社?
Bard>1NCE は、IoT (Internet of Things) 向けのグローバル・ライフタイム・フラット・レートを提供する唯一の接続およびソフトウェア プロバイダーです。世界150カ国以上で、高速、安全、かつ信頼性の高いセルラー接続とソフトウェア サービスを提供しています。1NCE の IoT フラット レートは、IoT デバイス向けのプリペイド型プランです。必要な機能 (SIM カード、データ プラン、SMS など) はすべて含まれ、追加費用なしの明快な価格設定 (OPEX から CAPEX まで) で提供しています。1NCE は、2019 年にドイツの通信会社 Deutsche Telekom、Orange、Telefónica によって設立されました。本社はドイツのハンブルクにありますが、世界中にオフィスを展開しています。1NCE のお客様には、製造業、物流、自動車、エネルギー、農業、公共事業など、さまざまな業界の企業が含まれています。1NCE は、IoT の普及を加速させるために、お客様に最適な接続とソフトウェア ソリューションを提供しています。

Deutsche Telekomが母体

ドイツテレコムがバックについているようです。最近のソフトバンクの繋がりでアジアの独占パートナを任せているようですね。

ナニ者のまとめ

ドイツテレコムがバックについて2019年に設立された新しい会社ですが、急速にその事業領域を伸ばしているようです。
ドイツテレコムとソフトバンクの繋がり<ソフトバンクグループ、ドイツテレコムと長期戦略的パートナーシップおよびTモバイル株に関する株式交換に合意:2021年9月7日>もあり、アジア独占パートナとしてソフトバンクがサービス提供しているようです。

サービスの特徴(閉域 / VPN / クラウド直結)

類似のサービスと基本的に同じです。(以下、類似のサービス)

  • SORACOM Beam

  • IIJ IoTサービス(VPNアクセス)


【本題】デキそうなコトを考える

1NCEの前提条件の整理

1NCEも当然ながら夢のようなサービスではなく、いい線を狙ってきたサービスであり、万能ではありません。

  • 初期費用:無料

  • 契約:10年

  • 費用:500MBを2000円

つまり「10年で500MBをチョロチョロ使ってもOKですよ」というサービスであることが分かります。
技術的なスペックとしては

  • 回線速度:1Mbbs(ベストエフォート)

  • SMS:250通分

  • 通信規格:NB-IoT/4G/LTE-M

つまり日本で使うなら、ソフトバンクの通信網が使えそうですね。

1NCEじゃリッチなIoTサービスは無理

単純に「類似のサービス」を使った方が絶対お得なサービスは無理ですね。500MBなのでちょっとリッチなIoTサービスを考えると検討の遡上にあがらないのは明らかです。素直に、SORACOMやIIJを使いましょう!

1NCEが向いていそうなIoTサービス

実際に商用サービスを設計してみるとわかりますが、固定になってしまうSIMあたりの月額基本料金がバカになりません。
1NCEは、なんといってもSIMあたりの固定費がかからないワケですから、そんなにデータを送らないサービスにとっては、月額基本料金というオーバヘッドから解放されます。

基本設計

ネットワーク経路とベースのプロトコル

閉域網でエッジデバイスを直送するので、エッジデバイスからクラウドまでの複雑なプロトコルは不要そうです。ゼロトラストセキュリティの逆でOKそうです。当然ながらTLSも考えないので良さそうです。
もう計算が面倒なので、TCPで直送ということにしてみます。

TCPオーバヘッド

ChatGPT(Model: GPT-4)からの引用して40Byteとしておきます。

最小サイズのTCPヘッダは20バイトで、オプションが使用されると最大で60バイトになります。ただし、一般的な使用ではオプションは少ないため、TCPヘッダの平均的なオーバヘッドはおそらく20バイトから40バイトくらいになるでしょう。

ChatGPT

データ形式とか

折角の閉域で直送できそうですので、バイナリもしくはプレーンテキスト(カンマ区切りぐらい)としてみます。JSON等は不要でしょう・・・クラウド側でそれはやればOKですから。

タイムスタンプとか

エッジデバイスの時計はとかく狂いやすいものです。NTPとか実装してないと実質使い物になりません。そこで、良く使われる手段が「サーバに到着した時点でタイムスタンプを付与」するという方式です。IoTで集取するのは、殆どが温度や湿度といったトレンドデータです。なにもタイムスタンプが正確である必要性殆どありませんので、現場側で時計を持つ必要性があまりありませんね。
ちゃんとした時系列データベースをクラウド側が使っていれば、このあたり考える事もないでしょう。 もし!時系列データベースにお困りの際は、ぜひ弊社の商用時系列データベースをご検討ください。

ユースケース①:1分データを送る環境測定装置

結論:意外とイケる=93ヶ月で2000円っぽっきり!

なんだ!意外とイケんじゃんと言う感想です。500MBも有効に使うと、こんなにも長く(7年7ヶ月)使えるのですね。

通信量の計算方法

  • データサイズ:128Byte

  • 1時間リクエスト数:60

  • 1日リクエスト数:1,440

  • 月間(30.416日)リクエスト数:43,799

  • 月間データサイズ:5.35MB(5,475Kbyte = 5,606,277Byte)

データサイズ:128Byte を考える

TCP通信のオーバヘッドを考えると、1/3はこれに持って行かれますので、残りが84Byteになります。

84Byteで記述できる1分データ

エッジデバイスが何かは?クラウド側はわかってるわけなので、暗黙的なデータ設計で良いでしょう。
一般的にカンタンにセンシングできる「温度、相対湿度、CO2濃度」とかだと
例えば、それぞれ埋め込みとパースがし易いように、固定長テキストで

024.50,085,0450

と表現しても良いでしょう・・・あれw たった15バイトですね。
残りを考えるも面倒くさいですが

TMP=024.50,RH=085,CO2=0450

うーん・・・これでも26バイトにしかなりませんね。
まあ、ホントに実装する際は、HTTPにしたり、JSON形式にしたりしても良さそうです。

感想:なんか10年でも余りそう

これだけバイト数が少ないと、10年でも500MB使いきらないかも!?
そう考えると、この手の環境測定装置向けサービスに、既存のIoT向け通信サービスは相当高いということになりますね。

ユースケース②:朝晩2回の画像を送るIoTカメラ

結論:意外とイケる=65ヶ月で2000円っぽっきり!

こっちも意外とイケますね。65ヶ月も朝晩毎日画像が送られてきたらそりゃそこそこの監視が出来ますね。500MBって意外と偉大!

通信量の計算方法

  • データサイズ:128KB(131,072Byte)

  • 1日リクエスト数:2

  • 月間(30.416日)リクエスト数:61

  • 月間データサイズ:7.6MB

データサイズ:128KB を考える

実際に手元にあったIPカメラの画像データ(JPEG)のプロパティをみてみました。ファイルサイズは116KB程度で、JPEGのメタデータを見てみると・・・

実際のIPカメラのメタデータ

となっています。勿論フルカラー(白黒だともっと小さい)ですし、検証用の画像としては問題無さそうです。
TCP通信のオーバヘッドは、ファイルサイズがデカいので無視できる大きさでしょう。

感想:5年もしたらカメラ側が先に壊れそう

なので、撮影枚数を増やして、2年とか3年で2000円っぽっきり!にするのがコスパが良さそうですね。


ダラダラと最後に

サービス設計者は嬉しい

というわけでちゃんと計算してみると、それっぽいサービスは作れそうな雰囲気です。
通信業界がどんな競争状態なのかは良く存じないのですが、あくまで通信サービスを利用する側としては、1NCEのようにサービス設計しやすい仕様になっていると大変助かります。
(もちろん従量課金がサービス側とユーザ側の双方にとって良いモデルなのは分かりますが・・・)

LPWA系公衆サービスは受難?!

やはり直接的に影響がでそうなのは、LPWAの公衆回線的なサービスでしょうね。省電力とかいろいろな要素があるにせよ、日本の場合は結構いろんなところに電源はありますし、近頃の大容量バッテリーをもってすればたいした問題にならないことも多い・・・影響はいかに?

今後の競争に期待!

様々なIoT向けの通信サービスが盛り上がっていただけるのは大変嬉しいですね。他社や? 新規参入サービスの動向も注視したいところです。

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