新アトラクション「シュガーラッシュ」から考える新トゥモローランドの方向性

「ディズニーランドは永遠に完成しない。この世界に想像力が残っている限り、成長し続ける。」

ウォルト・ディズニー

この言葉の通り東京ディズニーリゾートは1983年の東京ディズニーランドの誕生以来、進化を続けながら多くの人々を楽しませる最上級のエンターテイメントを提供してきた。こだわり抜いて作られたエリアやアトラクション、キャストさんのホスピタリティ溢れる笑顔の対応、そのすべてに一切の妥協がなくイマジネーションの無限の可能性を感じることのできる至高のテーマパークだ。ウォルト・ディズニーの「現状維持では後退するばかりである。」という言葉にもあるように、東京ディズニーリゾートは常に新しさと進化を追い求めてきた。時に、ゲストの思い入れが強い歴史の長いアトラクションをクローズするという犠牲を払ってでも、時代に沿った”新しさ”を信じることをやめなかった。まさに変わらないために変わり続けている。

そんな進化の片鱗が今、私たちの前にも表れている。
それが、2024年4月26日に発表された「シュガーラッシュ」を題材とした
新アトラクションの設立である。いつだってディズニーの新しいアトラクションの発表はワクワクする。シュガーラッシュはゲームの世界を題材とした映画なので、シューティングタイプのライド形式とも相性がよく、きっとすごく楽しいアトラクションなのが想像できる。楽しみだなぁ。
しかし、同時に悲しい発表もあった。それが現在運営されている人気アトラクション、「バズ・ライトイヤーのアストロブラスター」の終了である。
正確にはバズのアトラクションがシュガーラッシュを題材としたものに置き変わるという事だ。
これは本当に悲しい。恐らく多くのディズニーファンも悲しみに暮れているだろう。私としても、バズのアトラクションには多くの思い出がある。小さい時は自分が本物のスペースレンジャーだと思い、あの丸型のライドに乗り込んではバズと一緒に宇宙の平和を守っていた。大人になってからも友達と点数を競ったりしながら何回もリピートして乗り続けたこともある。いつ行っても待ち時間は50分前後で人気の高さも伺えたあのアトラクションが本当にクローズしてしまうのか信じられない部分も正直ある。
しかし、冷静に分析するとクローズの兆候は確かにあった。


バズのアトラクションがクローズしてしまう理由は大きく二つあると思っている。
一つは、単純な施設の老朽化だ。バスのアストロブラスターは2004年にトゥモローランドに誕生したアトラクションだ。今が2024年なので20周年という節目にその歴史に幕を閉じることになる。アトラクションのメンテナンスやコロナ禍の閉園を除いてほぼ毎日スペースレンジャーを務めていたバズにも当然疲れが出てくるし、アトラクションのシステムとしても老朽化してしまうのは仕方のないことだ。人も毎日老けていくように世界に息をするすべての物は時間の流れには逆らえないのだ。ディズニーのイマジネーションも時間の前では無力である。
実は、バズのアトラクションがそろそろ限界なのでは?という意見はディズニーファンの中では話題に上がっていた。ライドの塗装が剥げていたり、アトラクション内で登場する的を有したモニュメントが一部動かないものがあったりとガタがきているなという印象は残念ながら感じていたので、正直覚悟していた発表ではある。
しかし、クローズの原因が老朽化だけなら長いメンテナンス期間を経て修理すれば良いのでは?という意見も出るだろう。その疑問を払拭してしまうのが二つ目の理由だ。

その理由とは東京ディズニーシーにある「トイストーリーマニア」の存在である。前提として東京ディズニーリゾートは時代に沿った新しいアトラクションをどんどん作りたいと思っている。しかし、それを困難な状況にしているのは圧倒的な敷地不足である。現在、東京ディズニーリゾートの敷地はとてもとてもギリギリである。度重なるエリアの増設により幾度となく舞浜周辺は開拓され続け、駐車場や道路を潰しながら少しずつ面積を広くしていった。新エリアであるディズニーシーの「ファンタジースプリングス」も奥地にあった「ロストリバーデルタ」の更に奥を無理やりえんやこらとエリアに組み込んだほどである。もうほんとに土地がない。これ以上敷地を増やすにはまた海を埋め立てるしかないが、そんな莫大な予算も簡単には出せないだろう。そうなると、新しいアトラクションを入れるためにはどうしないといけないのか。それが、既存のアトラクションのリニューアルという方法しかなくなってしまった。アトラクションのシステムをそのまま流用しテーマを変えるだけなら敷地を新たに確保する必要もないし予算だって浮く。進化のためには古い物を代える犠牲だって仕方がない。そうやって私たちディズニーファンの思い出のアトラクションは時代と共に何度も消えていった。
ちなみに私はまだストームライダーのリニューアルを許していない。オレたちの気象コントロールセンター!!

さて、オリエンタルランド(ディズニーの運営)の目線に立って比較的にリニューアルしやすいアトラクションとはどのようなものだろうか。まず思いつくのは古い物だろう。システムの老朽化によりクオリティを維持できなくなってしまったアトラクションは新しい物に代えてしまっても仕方がないというところはある。常に最上級のテーマパークでなくてはならないディズニーにとっては一つたりともこのアトラクションは古くてちょっとガタがきてるけど許してよ笑 というアトラクションは存在できないのである。合理的な判断だ。
そして次に思いつくのはテーマがバッティングしているアトラクションだ。要はリゾート内で二つ以上同じ作品をテーマにしたアトラクションがあるという状態のことだ。こういった場合は一つリニューアルしたとしてもまだこちらのアトラクションが残っていますので、、という風にその作品のファンのショックも和らげることができる。お気づきだろうか。この二つの理由ともバスライトイヤーのアストロブラスターは満たしてしまっているのだ。
ディズニーシーにある「トイストーリーマニア」もバズと同じくトイストーリーをテーマにしたアトラクションなのでランドの方がクローズしてしまうけど、バズに会いたかったらディズニーシーに来てね!というのが出来てしまうわけだ。これが紛れもないバズの終了の理由である。


実は、バズのアトラクションがリニューアルされるという動きは日本が初めてではない。香港ディズニーランドにも以前には同じようにバスのアストロブラスターがあったのだが、2019年にマーベルヒーロー「アントマン」を題材としたものに変更されている。そう、私が驚いたのはバズのリニューアル先がマーベルヒーローではなくシュガーラッシュだったということだ。
バスがリニューアルされてしまうことは大方見当がついていたのだが、それに代わる新アトラクションはアントマン、もしくはそれに関連するマーベル系のアトラクションだと思い込んでいた。というのも、最近東京ディズニーはマーベルの要素を取り入れる動きが著しい。今まで海外には遅れをとるように日本のディズニーには一切マーベルが出てこなかった。ハロウィンの仮装もマーベル関連は禁止されていたほどだ。しかし、ここ数年になってハロウィンの仮装が解禁されたり、ディズニーホテルにマーベルルームが期間限定でコラボ開催されたりとマーベル歓迎の動きが顕著に出ていた。極めつけはディズニーランドで開催される新ナイトプログラム(夜のショー)にアイアンマンとスパイダーマンが登場するという情報が発表された。東京ディズニーのショーにマーベルヒーローが出るというのは本当にすごいことで、例えるならスシローでサイゼのミラノ風ドリアが出てくるくらいすごいことなのだ。なんかよくわからない例えだな。ごめん。
要するに、このまま順当にいけばマーベル作品のアトラクションがパークに来る=バズの後継はマーベル関連だと推測を立てていたのだけれども大外れだったというわけ。

なぜ、シュガーラッシュなのか自分なりに考えてみた。
仮にアントマンが日本に来るということにしてみよう。アトラクションを導入するにあたって大事なのはその作品の認知度である。あまり日本で知られていない作品をテーマにしても盛り上がりに欠けてしまう。人気度という面で大きな指標になるのはその映画の興行収入だ。アントマンは海外ではめちゃくちゃ人気。もちろん、エンドゲームまでMUCを追いかけていた私もアントマンは結構好きな作品。特に初代なんてめちゃくちゃおもしろいよ。おすすめ。
海外のアントマンの興行収入はめちゃくちゃいいのに対し、日本は実はそうでもなかったんだ。一番良かった興行収入でいっても初代の13億円、まだまだ日本のマーベル浸透率の低さを感じる。確かに、海外に比べて一部の人が見ているというイメージは強いかもしれない。そのくらいの認知度のアトラクションをパークに導入するのはリスクしかない。
それに比べて、シュガーラッシュの興行収入をみてみよう。現代、シュガーラッシュは2作品公開されており、その両方とも興行収入は日本において30億円を超えている。人気コンテンツだと一目でわかる。さらに、世界のディズニー興行収入ランキングでは2作品とも10位以内にランクインしておりここで東京ディズニーが世界で初めてシュガーラッシュのアトラクションを作れば話題性もばっちりだ。充分すぎる布石が実は散りばめられていたらしい。


では、マーベル作品がアトラクションで導入されることはないってこと?夜のショーにも出演するのに?そう思った人もいるだろう。私が先述したリニューアルしやすいアトラクションの定義を覚えているだろうか。古い物とテーマが被っている物。ディズニーランドにこのテーマ被りが起きている作品がもう一つある。それはスティッチだ。どうでもいいけど、私はスティッチのモノマネが得意だ。本当にどうでもいいね。この話やめよう。
現在ディズニーランドにはスティッチのエンカウンターと魅惑のチキルームという二つのアトラクションがある。そのうちトゥモローランドにあるスティッチエンカウンターは正直あまり人気がない(小声)。いつクローズされてもおかしくないとファンの間には話題になっているが、このアトラクションのリニューアル先が何らかのマーベル作品になるのではないかと予測できる。そもそも、マーベルを題材にするとしてアトラクションの置き場なんてトゥモローランドくらいしかあり得ないからこの可能性が最も高いと推測している。マーベル関連の何かを出さないんだったらUSJからスパイダーマンを回収した意味もなくなってしまうからね、、


新しいアトラクションや大きな変革を迎え、トゥモローランドはどうなっていくのだろうか。
新スペースマウンテンとその周辺の広場にはこんな題材が示されている。
「宇宙と地球が結びつき、人類と自然が調和した未来」
これが答えではないだろうか。今までのなんとなく漠然とした宇宙、未来がテーマであったトゥモローランドから自然と宇宙の調和した新スペースマウンテン、サイバー感のあるシュガーラッシュ、科学のヒーローであるマーベル。それらが表しているのは科学の自然の共存。人類と自然が尊重し合う未来こそが私たちのトゥモローなのではないかと私は考える。



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