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【司法試験予備試験】憲法統治分野直前整理ノート【短答式】


はじめに

短答式における憲法の統治分野は、論文では聞かれないような知識も多く問われ、馴染みの薄さから苦手とする方も多いと思います。
しかし、統治分野は、基本的な条文知識や決まった判例知識を問われることがほとんどであり、比較的少ない暗記量でも短期間で得点源とすることができます。
そこで、この記事では、全過去問を分析した結果から、主要な条文、判例及び学説について覚えておくべきポイントを示し、効率的に知識を総ざらいできる形にまとめています。こちらに記載の内容で、統治分野で過去に出題された全肢の8割程度をカバーしています。

以下では、憲法の章ごとに、頻出知識を列挙し、暗記するべき箇所を太字で示しています。ぜひ、直前期の知識整理にご活用ください。
※ 出題頻度を基準に情報を取捨選択しているため、網羅性を保証するものではない点にご留意ください。

なお、記事の最後に、印刷用に整形したPDFファイルを添付しています。よろしければご活用ください。
サンプルはこちら。

国会

条文

第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

  • 「唯一の立法機関」

    • 国会中心立法の原則:国会による立法以外の実質的意味の立法は、憲法が定める2つの例外(議員規則最高裁判所規則)を除き許されない

    • 国会単独立法の原則:国会による立法は、国会以外の機関の参与を必要としないで成立する

第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

  • 「法律の定める場合」

    • 院外における現行犯の場合(国会法33条)

    • その院の許諾のある場合(同条)

第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。

  • 会期制

    • 憲法に規定はない採用

    • 会期1年と定めることは不可

  • 会期延長、会期不継続の原則

    • 憲法に規定なし

    • 国会法に規定あり

  • 一事不再議の原則

    • 憲法、国会法に規定なし

第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。※ 将来効

第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第五十六条 両議院は、各々その総議員三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員三分の二以上の多数による議決を必要とする。

  • 「院内の秩序をみだした」

    • 議場外の行為で会議の運営と関係のない個人的行為は懲罰の事由にならない

第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

  • 衆議院の優越の程度は【予算案】【条約】【法律案】

  • 両院協議会は、各議院で選挙された委員で組織

第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

  • 議員ではなく議院の権能

  • 特定の事件について裁判所の下した判決内容の当否の調査は不可

  • 審理中の事件の事実について立法や行政監督目的での調査は

第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

  • 弾劾裁判所は、司法権がすべて裁判所に属するという原則の例外

  • 弾劾裁判所の裁判の結果に不服があっても、司法裁判所への訴え不可

判例・学説

  • 政党

    • 憲法上、政党について直接定めた条文はない

    • 憲法は政党の存在を当然に予定(最大判昭45.6.24)

    • 政党の設立・加入・脱退の自由は21条1項の結社の自由によって保障

    • 党員に対して一定の統制可(最判昭63.12.20)

    • 政党が、議院において議員が行った発言や表決について、その政治的・道義的責任を追及することは、51条とは無関係であり、自由に処分可

    • 除名処分の有効性(最判昭63.12.20)

      • 一般市民法秩序と直接関係を有しない内部的な問題にとどまる→裁判所の審査権は及ばない

      • 一般市民法秩序と直接関係を有しない内部的な問題にとどまらない

        • 政党内の規範が公序良俗に反しない(原則)→裁判所の審査権は及ぶが、当該規範等に則って処分がなされたか手続の適正性のみについて審理可

        • 政党内の規範が公序良俗に反する等(例外)→裁判所の審査権が及び、処分の内容の適正性についても審理可

    • 政党の方針に反したことを理由として除名された場合、または党籍を移籍した場合に議員の身分を喪失するとの制度の合憲性

      • 小選挙区選出の衆議院議員→違憲(自由委任の原則違反)

      • 比例代表選出の衆議院・参議院議員→合憲

    • 新聞紙上で、ある政党から批判された政党は、同じ新聞紙上に反論文を掲載する権利を有しない(最判昭62.4.24)

    • 小選挙区選挙において、候補者届出政党にのみ政見放送を認める規定は合憲(最大判平11.11.10)

    • 二度と聞かれることはないと思いますが、「政党法」は存在しません(H19-12)

  • 議員

    • 議員が院内において質疑等によって個人の名誉を低下させる発言をした場合の国の損害賠償責任(最判平9.9.9)

      • 議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別な事情がある場合に限り認められる

      • 議員の個人責任は認められない

  • 選挙制度

    • 多数代表制(小選挙区

      • 二大政党化による政局の安定化

      • × 死票が多い

    • 少数代表制(大選挙区

      • 死票が少ない

      • × 区域の広域化に伴う選挙費用増加

    • 比例代表制

      • 民意の忠実な繁栄

      • × 小党乱立による政局の不安定化

  • 議員定数不均衡

    • 憲法は投票価値の平等を要求しているが、政策等との関連から一定限度譲歩させても違憲とはいえない(最大判平24.10.17)

    • 衆議院

      • 小選挙区制における1人別枠方式は、一時的な激変緩和措置として当初(~平成17年)は合憲(最大判平11.11.10、最大判平19.6.13)であったが、新制度の安定運用後(平成21年時点)は違憲状態(最大判平23.3.23)

    • 参議院

      • 参議院の都道府県代表的性格、半数改選制を踏まえ合憲(最大昭58.4.27)

      • 制度と社会の状況の変化踏まえ違憲状態(最大判平成24.10.17)

      • 人口の少ない選挙区について行われた合区が一定程度機能したため合憲(最大判平28.9.27、最大判令2.11.18)

内閣

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