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学生コーチとして選手を見る際に気をつけているバイアス

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

東大野球部の現状報告

まずは東大野球部の現状についてご報告しようかなと思います。

現在東大野球部は、活動内容に一部制限がありながらも活動自体は再開できている状況です。

リーグ戦の日程も公表され、4月10日に開幕戦となる試合で早稲田大学と対戦することになりました。

試合形式については、昨秋に引き続き2回戦総当たりのポイント制になるとのことです。延長戦もなく9イニングで打ち切りとなるため、代打や代走などの選手交代も積極的に行われそうですね。

1ヶ月を切ったリーグ戦に向けて最善の準備を尽くして参りますので、応援よろしくお願いします。

野球と行動経済学

というわけで、今回は学生コーチとして選手を見る際に気をつけているバイアスについて書いてみようかなー、と思っています。

僕は1年半くらい前に選手をやめてスタッフ側に回ったわけですが、そのときに強く感じたのは、選手の能力を判断したり、実際にオープン戦でサインを出したりと正確な意思決定が求められる仕事が多いな、ということでした。

なのでプロ野球の監督の本なんかもたくさん読んだりしたのですが、それと同じくらい個人的に役に立ったなと思っているのが「行動経済学」という分野です。

行動経済学というのはいわば経済学と心理学の間のような分野で、特に現実世界での人間の行動や選択を理解するには向いています。

従来の経済学では「人間は常にもっとも合理的な判断をする」と仮定していたのに対し、行動経済学は心理学の知見などを元に「人間の行動は必ずしも合理的でない」という考え方をしているのですね。

この現実世界への適用を意識している点が僕はとても好きで、50冊くらい行動経済学の本を読んだりしたので、今回はそこで学んだ中で特に選手を見る際に気をつけているバイアスについて書いてみることにしました。

(ちなみに読んだ中で個人的に1番よかったのはダン・アリエリーという人が書いた「予想通りに不合理」という本でした。)

「バイアス」とは

行動経済学では人間が時々不合理な判断をするものだと考えるわけですが、不合理な判断を産んでしまう人間の思考の偏りのことを「バイアス」といいます。人間にはこのバイアスがたくさんあることが知られています。

というのも、例えば「靴をどっちの足から履くか」みたいな日常の些細な意思決定に対していちいち脳のリソースを割いてしまうと、人間の脳ではとても処理しきれません。

なので、人間には無意識のうちに選択や判断を行うシステムがあり、そのシステムには多くの人に共通する偏りがあるので、自然と「バイアス」が生まれてしまうのです。

このようにバイアスの発生自体は人間のシステム上のバグなので、なかなか避けることはできません。

しかし、ありがちなバイアスを知ることで意識的にバイアスを修正することはできると思うので、特に意思決定を多く行う人はバイアスについて学ぶ価値があるかなと考えています。

選手をみる際に陥りがちな「確証バイアス」

選手を見る立場としてもっとも気をつけているのが「確証バイアス」です。

確証バイアスとは、自分にとって都合のいい情報ばかりを探してしまうバイアスのことをいいます。

例えば、ある選手に対して「守備はまだまだだけど打撃は魅力的だな」という第一印象を抱いたとしましょう。

すると、自然とその選手がいいバッティングをした時のことばかりが記憶に強く残り、逆に凡退した時のことは忘れてしまいがちになる、みたいな現象のことです。

特に大学野球になると分業制も進み、「打キャラ」や「守備キャラ」みたいなラベリングがされやすくなるので、一度ついた評価を覆すのはかなり大変だったりします。

なので、選手を見る際にはできる限りこの先入観を取り払ってフラットな視点でみられるように、というところを強く意識していました。

評価を細分化することも有効

また、確証バイアスを緩和するためには要素ごとに細分化してみるのも有効です。

「打撃はイマイチ」みたいな全体的評価を下してしまうと、それは短期間で大きく変わるものではないので、固定観念が生まれやすくなります。

しかし、「再現性はまだ低いがスイングは速い」みたいに細かい要素に分けて評価することで、より客観的かつ柔軟に上書きしやすい見方ができるような気がしています。

六大学における東大のように、他のチームの方が総合的な能力が高い場合は、総合的に他大学を上回るのはかなり困難なのが現実です。その中で勝つには、全体的には劣っていても部分的な優位性を見出し、その数を増やしたり優位度を高めていくことが重要です。

そういう意味でも、選手に対する評価はよりきめ細やかに、かつ柔軟にできるようにしていきたいなー、と考えています!

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