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打球角度を理論的に検証する

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

さて前回の記事では、フライボール革命やバレルゾーンは誤解されている、という話を書きました。フライボール革命が想定しているモデルがすごすぎて、MLB選手とかでないとなかなか活用できないのですね。

そこで今回は、我々東大野球部を含む多くの野球選手が目指すべき場所はどこなのか、というところについて書いてみます。これもまた一つの意見にすぎないので、そういう考えもあるのか、くらいに思ってもらえれば幸いです。

目指すべき打球角度はどこか

前回の記事では、バレルが打球速度と打球角度から定義されている、ということを書きました。当然ながら打球速度は速ければ速いほど良いわけで、ここに関してはひたすら上を目指すべきでしょう。

しかし打球角度に関しては、上げすぎても下げすぎてもよくないですから、ちょうどいいバランスというものがあるはずです。なので、ここに関しては十分に考える価値があるかなー、と思っています。

フライボール革命が流行った時には打球角度30°付近を目指そう、みたいなことが盛んに言われていたわけですが、これは打球速度が158km以上を仮定した数値です。普通の野球選手が打球角度30°に打つとどうなるのでしょうか。

MLBの公式サイトには、打球速度と打球角度を設定するだけで、打率や長打が出る割合などを自動でシミュレーションしてくれるページがあります。

MLBの平均打球速度は87マイル(=約140km)と言われていますから、打球速度87マイル、打球角度30°でシミュレーションしてみましょう。すると、こんな結果になります。

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なんと打率は.036、ホームランは0本です。スタンドまで運ぶほどの打球速度を出せない場合、打球角度30°に打ち返すとほとんど全てアウトになってしまうのです!

まして大学野球では打球速度140kmに満たない打球も多いですから、打球角度30°に打ってもあまり意味がないことがわかります。では、われわれ東大野球部を含むアマチュア野球選手が狙っていくべき打球角度は、どのくらいなのでしょうか。

打球速度を87マイル(=140km)に固定して、さまざまな打球角度での検証を行った結果、もっとも打率が高くなるのは打球角度14°という結果になりました。

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打率はなんと驚異の.956!ほぼアウトになることはないのです。しかも打球が塁線付近や外野手の間に飛べば2ベースになる可能性もありますから、多くの野球選手が目指すべき路線はこちらなのではないかと思います。

打球角度15°は、打球でいうと内野ライナー以上外野フライ未満だと言えるでしょう。もちろん理想論ではありますし、当たり前っちゃ当たり前の話にはなるんですが、打球角度15°を目指してみてはいかがでしょう!というのが今回の結論になります。

もちろん例外はあるよ

さて、ここまで「打球角度30°は上がりすぎだ!目指すべきは打球角度15°である!」という主張をしてきましたが、もちろん例外はあります。

例えば、パワーがあって速い打球をそれなりに期待できる場合。より具体的にいうと、MLBのデータによれば100マイル(=160km)以上の打球になると1割以上の確率でホームランになりますから、このくらいの打球速度がそこそこ出せる人、ということになります。

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この場合、打球角度30°に打ち返すとだいたい半分くらいの打球がホームランになります。逆にいうと、ホームランを打つなら最低でも打球速度160km、打球角度は30°を目指すべきだ、ということになります。

単打の得点価値は0.44、ホームランの得点価値は1.42ですから、ホームランを1本打つことはヒットを3本打つよりも価値があります。野球というスポーツで勝つためには、ホームランの重要度がそれだけ高いのです。

ですから、みんな打球角度を下げてヒットをコツコツ打つべきだ!と主張したいわけではありません。ホームランを打てるポテンシャルのあるバッターは、勝つために積極的にホームランを打ちにいくべきです。しかし、まだそこまでのパワーや技術がない場合には、打球角度15°を狙っていった方がおトクだよ、というおはなしでした!

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