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データ分析はサイエンス、データ活用はアート

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

オフに入っています

一昨日から東大野球部は束の間のオフに入りました。とはいえ緊急事態宣言下でできることもあまりないためぼーっとしていたら、チームで新しくやってみたい戦術を10個くらい思いつきました。早く試したいです。

そんなわけで今回は、データ分析とデータ活用の話を書こうと思います。

先日、こんなツイートをしました。

近年ではデータアナリストを置く野球部も増えてきていますが、その仕事は主に「データ分析」と「データ活用」に分かれており、この2つは全く異なる能力やスキルを必要とします。今日はそのあたりの話を書いてみようと思います。

データ分析はサイエンス

データが与えられたときにまずアナリストが行うのは「データ分析」です。

データ分析とはデータを処理したり、わかりやすく可視化したりする段階のことです。

分析の際にはエクセルやプログラミングなどを用いて行うことが多いです。そのためデータ分析にはこうした「スキル」が必要だといえるでしょう。エクセルやプログラミングなどのスキルを習得するのは、頑張れば短期間でもできます。

また、データ分析にはある程度の「正解」があります。たとえば、ピッチャーが投げる球種の割合をわかりやすく示したければ円グラフが最適ですし、ピッチャーのイニングごとのストレートの球速を可視化するには折れ線グラフが最適でしょう。

このように前提となるスキルを学習した上で、論理的な正解を導いていくデータ分析という仕事は、まさに「サイエンス」そのものだと思います。

データ活用はアート

データアナリストにはデータ分析以外にも、分析したデータに意味を持たせてチームに実装していく「データ活用」という仕事があります。

データ活用の仕事では、エクセルやプログラミングなどのスキルではなく、選手との信頼関係という極めてアナログで感情的な部分が必要とされます。

たとえば、あなたの所属する野球部に突然見知らぬデータアナリストがきて、「おまえはここがダメだからもっとこうしろ」とか、「相手の弱点はここだからこうやって攻略するぞ」みたいなことを言ってきたとしましょう。

それがどんなに優秀だと評判のアナリストだったとしても、パッとデータだけをみていきなりそんなことを言ってこられたら、なかなか聞く耳を持てないのではないでしょうか。

ましてそれがリーグ戦の作戦とかだったら、少なくとも僕はそのデータを信用できる自信がありません。

なので、どんなに高いデータ分析の能力を持っていても、選手との信頼関係という部分が欠けていては、その分析を実際に活用することができないのですね。

そして、エクセルとかプログラミングみたいなスキルとは違い、信頼関係の醸成には時間がかかります。これが先程のツイートの「スキルは短期で習得できるが、信頼関係は短期で構築できない」という言葉の意味するところになります。

さらに、データ活用にはデータ分析と違って「正解」がありません

たとえば「今シーズンの3試合では全て試合の1球目にストレートを投げている」というデータがあったとして、それを自分のチームの先頭打者に伝えるでしょうか。あるいはそれをもとに「初球は必ずストレートがくるから狙え」と指示を出すでしょうか。

たまたま3試合連続で初球ストレートだっただけかもしれませんから、それを伝えるかどうか、さらにそこから具体的なプレーの指示を出すかどうか、というところに正解は存在しないのです。

先ほども書きましたが、データアナリストにとって最も怖いのは信頼を失うことです。軽率に「初球は必ずストレートがくるから狙え」という指示を出して外れたりすると、だんだん信頼を失ってデータ自体を活用してもらえなくなってしまいます。

このように選手との感情的な紐帯を築き、正解がない中で何をどのように伝えていくか決断していくデータ活用の仕事は、まさに「アート」そのものだと思います。

ピッチャー、キャッチャー、内野、外野、アナリスト

というわけで、データアナリストの仕事についてだいぶ熱っぽく書いてみました。

今後は少しずつアナリストを導入するところが増え、ピッチャー、キャッチャー、内野、外野、といった現存するポジションの枠組みと並列化していくといいなと思っています!


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