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大学野球の競技特性と資本主義の精神

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

東大野球部は今何をしているのか

まずは今東大野球部が何をしているのか、というところを書いておこうと思います。

緊急事態宣言が継続されたことにより、東大球場は依然として封鎖されたままとなっています。なので、各自で公園など空いている場所を探して練習しているという状況です。

年初から2月頭までは個人のスキルアップに努めるというチーム方針でもあったので、最悪集団で練習できなくてもよかったのですが、3月ごろからオープン戦、4月からはリーグ戦という状況を考えると、チームでの練習も入れていきたいのが本音です。

早く宣言が解除されるのを祈りつつ、今できる個々の技術向上に集中して取り組んでまいります。

ベースボールの競技特性と資本主義の精神

さて、僕は大学2年の途中でスタッフ側に回ったのですが、野球というスポーツをスタッフの立場で見るようになってから、野球の資本主義的な特性を強く感じるようになりました。

資本主義的というのは、分業化が進み、より専門的なスキルが求められるようになるということです。

例えば小学生だと、運動神経のいい人がピッチャーをやりつつ、バッティングの中核も担う、というケースがかなりあります。いわゆる「4番ピッチャー」ですね。野手の中でいってもうまい人が内野、うまくない人が外野、みたいな感じになることも多いです。

中学や高校に上がるにつれ、みんなそれぞれ自分のレベルに応じたチームに入るようになるので、小学校で「4番ピッチャー」だった人もだんだんと他のポジションに移っていきます。これにより、小学校の頃はいわば「あまりのポジション」だった外野にもうまい人が回るようになってきます。

とはいえ、チームの主力選手がピッチャーもやり、打撃でも活躍する、みたいなケースはまだ普通にあります。甲子園でも、「4番ピッチャー」はときどき出てきますね。

それが大学になると、一気に分業化が進みます。いちばんの要因としては指名打者でしょう。東京六大学野球は指名打者制がないのですが、多くの大学野球リーグでは指名打者制があります。なので、ピッチャーはピッチングだけに集中することになります。

他にも、ベンチ入りのメンバー数が増えることや学校数が減ることも原因です。ベンチ入りの人数が増えれば、ここぞの場面で活躍してくれるスペシャリストの価値が高まります。学校数が減ることは、一つの学校あたりの部員数を増やすので、各々が自分の得意分野に集中したほうがより有利になります。

このようにして、だんだんと全てにおいて合格点の「ジェネラリスト」よりも、ひとつ傑出した能力をもつ「スペシャリスト」の価値が上がっていくのですね。

こういう競技特性はどこからきているか

こうした分業制という競技特性が強いスポーツと弱いスポーツの違いはどこにあるのでしょうか。

例えばサッカーだと、交代人数が5人とかに制限されていたりするので、スペシャリストとして活躍していくにはメッシくらい圧倒的な力が必要だったりします。

一方アメフトはめちゃくちゃ分業されていて、同じチームにボールを蹴ることが専門の人もいれば、ボールにはほとんど触らず相手にタックルすることが仕事の人もいます。そもそも守備と攻撃でメンバーが入れ替わるので、極めて分業化の進んだスポーツだと言えるでしょう。

これはおそらくスポーツの発祥の地が違うからだと思います。相対的に見てジェネラリストの重要度が高いサッカーやラグビーはイギリスで生まれ、分業化が進んでいる野球やアメフトはアメリカが発祥です。

スポーツが生まれた場所の違いによって、競技の特性も変わってくるというわけですね。

分業が進む野球界での生存戦略

少し話が外れてしまいましたが、今回書きたかったのは、年代が上がるにつれて分業化が進んでいく野球界では、どのように生存を図るべきか、ということです。

結論から言うと、まずひとつ自分の武器となる力を作り、そこで試合に出場する機会を獲得していくことだと思います。

大学野球ともなるとチームの人数が100人を超えるようなケースも多く、ほとんどの人はいきなりスタメンで出る、みたいなことはできないわけです。

ただ、先述したように大学野球はかなり分業化が進んでいるので、ニッチな分野で突き抜けると試合に出るチャンスが巡ってきたりします。打撃や守備で勝てなくても、バントがめちゃくちゃうまいとか、とにかく足が速いとか、そういう武器でも勝負できるわけですね。

入学してきた一年生はまず全般的な力を磨こうとするケースも多いのですが、個人的にはいち早く自分の強みを見つけて試合に出ることを目指した方が良いように思います。試合の中での経験とか、一軍のチームメイトと練習するという環境がもつメリットは、やはり非常に大きいように感じるからです。

Amazonが書籍のオンライン販売というニッチな分野で結果を出したことからスタートして、あらゆる分野で覇権を握る存在になったように、まずは得意分野を磨くことで試合に出るチャンスを獲得し、そこから苦手分野を潰してスタメンを獲得する、という順番でいくべきでしょう。

特に東大野球部は、他大学と比べて入学時に大きな実力的ビハインドを背負った状態から始まるわけですから、みんなの長所を結集して戦わなければ勝ち目がありません。

一つの分野に集中的に力を注ぐことは選手の可能性を制限しているようにも見えますが、実際には器用貧乏な選手を作ってしまう方が可能性を制限してしまいます。なので、早い段階から長所を磨いていくような雰囲気を作っていきたいなと思っています!

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