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「盗塁はハイリスクローリターン」というセイバーメトリクスの主張に反論してみた

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

盗塁はハイリスクローリターン?

野球を統計的な観点から分析する試みを「セイバーメトリクス」と呼びます。そしてセイバーメトリクスでは、しばしば盗塁が「ハイリスクローリターンの戦略である」と言われます。(動画の18:40〜)

その根拠としては、「得点期待値で考えた場合、盗塁成功率の損益分岐点は7割前後なので、それ以上の成功率でなければ意味がない」というものです。

この根拠が数値に基づいた客観的なものであることは間違いありませんが、僕はこの主張には少し問題があるかなと思っているので、反論してみようと思います。

盗塁を得点期待値で評価するのは間違っている

最もクリティカルなポイントは、盗塁は得点期待値で考えるべきものではないということです。

得点期待値とは、「そのイニングに入る得点数の期待値」です。よって、そのイニングに何点入るかを予想しているわけです。

しかし、1イニングで複数得点を期待するのであれば、そもそも盗塁を仕掛ける意味はありません。0アウト1塁でも0アウト2塁でも2点取りたいならバッターがホームに帰ってこなければいけないため、盗塁は関係ないのです。最終回に2点負けている状態で、1塁ランナーは盗塁を仕掛けないよね、という話です。

なので、盗塁は「得点期待値」ではなく「得点確率」で評価しなければいけません。得点確率とは「そのイニングに点が入るかどうか」表した確率のことです。

「得点確率」で考えた時の盗塁成功率の損益分岐点は次のようになります。

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(出典:蛭川皓平「セイバーメトリクス入門」)

基本的に盗塁を仕掛けるのはランナー1塁の場面ですから、「6割成功するなら盗塁を仕掛けるメリットはある」と言えるでしょう。

盗塁成功率6割はどのくらいすごいのか

そうなると気になるのが、盗塁成功率6割がどのくらいの数値なのか、ということです。

上の動画では、赤星選手が.812、川崎選手が.712、福本選手は.780となっていました。この3人は盗塁を仕掛けるメリットが十分にありそうですね。

NPB平均で考えると、セリーグの盗塁成功率の平均が66.9%、パリーグの盗塁成功率の平均が72.4%です。なので、点が入る確率を高める手段としては盗塁が有効であるといえるのです。

さらに、打率や長打率がプロよりも低い大学野球においては、盗塁はかなり有効なのではないかと予想しています。

ということで、前回は守備側の観点から、今回は攻撃側の観点から、それぞれ盗塁について書いてみました。まだ読んでいない方はこちらもぜひ!


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