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[本の紹介]未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

樋口恭介(著)

SFプロトタイピングすることにはどんな意味があるんだろう?
そんな疑問を持ち、試してみたり、いろんな書籍を読んでいく中でこの著書に出会い、一番わかりやすく感じました。
その中から自分のために拾ったワードです。
実際にワークショップをやってみて、後から読み落としに気づき「ああ、ここちゃんと読んでおけばよかった!」ということもしっかり拾っています。

SFプロトタイピングとは?

・つまらない現実を撹乱して本当望む世界を描くための手法
・妄想を用いてぶっ飛ぶこと
・制約に縛られない企画を出せる
・現状から遠く離れ、本当に欲しい未来をいきなり考える
・思考の枠組みを外す
・顕在化していない起きうることを表出させる営み
・想像力によって「ほしい未来」を描き、自らの意思と技術によって未来を現実のものとできる

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

SFプロトタイピングの良さ・特徴とは?

・人はフィクションなら見てくれる
・未来を担っている世代に自由な議論をしてほしかった
・感情レベルでステークホルダーを巻き込む
・物語を通して製品のある世界を疑似体験することで製品のおかれる文脈を複雑に把握できるようになる

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

「フォアキャスティング」「未来予測」との違いは?

・未来予測などはできない
・フォアキャスティングは確実性は高いがイノベーティブになりにくい
 バックキャスティングは確実性は低いがイノベーティブになりやすい
・フォアキャスティングはやりたいことから技術を考えること
 バックキャスティングは技術からやりたいことを考えること
・SFプロトタイピングをバックキャスティングだけではなく、フォアキャスティングに落とし込むことは可能。

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

SFプロトタイプングのバックキャスティング的アプローチ

1. 技術要素以外の未来の舞台を設定する
2. 物語を描くことで、舞台の中で使われている技術を想像する
3. 想像した技術と、現在の類似技術の差分を洗い出す
4. 洗い出した差分をステップ化する
 35年後にはーーが普通になっている
 30年後にはーーができるようになっている
 25年後には法整備が整っている
 15年後には人間の身体に装備されている
 5年後にはプロトタイプ第一弾が作られている
5. ステップを検討し、直近に着手するべきターゲットとゴールを設定する

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考

SFのパターン

SF評論家ジュディス・メリルによるSF三つの分類
①教育的ストーリー
新しい科学的アイデアを提出するために小説形式を利用した、脚色エッセイないしは仮想論文。小説というより科学技術の魅力を伝える紹介記事。
②伝道的ストーリー
異世界未来世界を舞台にして寓意を描き、現代社会に風刺をもたらすもの。科学的下支えがなく、舞台となる未来は恣意的でリアリティに欠ける。
③思弁的ストーリー(スペキュレイティブフィクション)
ある仮定に基づく虚構世界において、人間がどのように変化するかということをリアリティを持って描いた小説。仮説・実験・観察という科学の方法を持って、作中世界の宇宙・人間・現実を探索すること。

SF評論家ジュディス・メリル 「SFに何ができるか」

この③が最もSFの本質的要素だと指摘しているようです。

虚構世界の事象自体が、この世界にとって現実的・科学的ばものであるとは言えなかったとしても、変わっていく世界、変わっていく自分の中で、「科学の方法」だけは手放さないこと。徹底的に考え抜き、科学の方法によって確からしいものを明らかにしていくこと。そのようにして、科学の方法だけを手掛かりに、人間の実存に関する考察の過程が描かれた小説のことをジュディス・メリルはSFと呼んでいるらしいです。

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉


最初に考えるべき三点

1. SFプロトタイピングを行う目的を設定し、SFプロトタイピングを通して何を得たいのかを考えること
2. SFプロトタイプ作品は誰か一人で作りすぎないこと
3. SFプロトタイプ作品そのものの完成よりも、議論しながら「チーム全員の妄想を爆発させる」ことの方が貴重であることを、参加メンバー全員が理解しておくこと。

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

決めておいた方がいいこと

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未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

ワークショップを行うにあたって大事な考え方

・どんな妄想でも許容される場が作られること。
・妄想が複数人のものになり、複数人の妄想の中で、徐々に実態を帯びて行くプロセス。
・問題解決や費用対効果やマネタイズを目的にしていない。
・正解はない
・議論で得たものが大事
・議論が盛り上がることが大事
・重要なのはプロセスであってアウトプットではない

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

未来の区分

起こってほしい未来
起こりうる未来
起こってもおかしくない未来
起るだろう未来

アンソニー・ダン フィオナ・レイビー「スペキュラティヴ・デザイン」


優れたSFストーリーの条件

新規性:語られている内容に新しさ、意外性はあるか。
共感性:語りのうちに、感情的な表現やリアリティはあるか。
構築性:全ての要素が有機的に連動し、一つの世界観を生んでいるか。
理論性:展開は適切か。また、展開に無理・ムラ・ムダはないか。

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考


物語の構成要素

WHY:物語で最も描きたいものは何か
WHEN:物語の舞台は西暦何年頃か
WHERE:物語の舞台はどこか
WHO:物語の主人公は誰か
WHAT:現実と物語世界との差異は何か
HOW:差異はどのように起きているか

変化、対立、センスオブワンダー

未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

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