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書店員さん感想4「《もどかしい関係》という言葉が良く似合う」
大学の中退と父親のグランカナリア島への移住という二つの出来事があり、今後のことを自力でなんとかしようと思っていた坂本壮馬は、源神社の宮司になった兄の勧めでその神社で働くことになる。日本神話や神事の類いが大好きな兄と違って、信心がゼロの壮馬の教育係になったのは参拝者の前以外では無愛想な美少女、久遠雫だった。
本書は神社で働きながらも信心を持てない、(すこし頼りないところも好ましい)優しい青年と感情が読みづらく無愛想という印象を相手に与える巫女探偵が織り成すラブコメタッチのミステリです。物語は明るい雰囲気で進んでいきますが、壮馬が信心ゼロになったきっかけを始め、決して軽くは無い問題が扱われているのが印象的でした。特に他者とコミュニケーションを取ることの難しさ(親子、夫婦、友人など)のようなものは、全篇を通して感じられました。しかし決して暗い読後感は残さない(一部、例外的なエピソードがありますが……)。嫌な部分にしっかり目を向けながらも、明るさを損なわない物語です。
見方をすこし変えるだけで謎の答えが浮かび上がる、ミステリ部分もとても鮮やかで心地よかったです。《もどかしい関係》という言葉が良く似合う、謎を含んだ二人の恋の行方に浸って欲しいと思いました。
明文堂書店金沢野々市店 瀬戸亮太さん
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