見出し画像

「グラデーション」2

俺は写真を撮ることが好きだった。
風景、風景だけ。人は撮らない。俺がどうやって人を見ているのかバレる気がして、人は撮れなかった。溜まった写真を何となくSNSに載せたところ、意外に反響があり驚いた。
人はみな口々に「美しい」と言った。それはそうだと思った。人が美しいと感じるテーマ、加工の写真はわかりやすく反応が大きかった。それも嘘ではない、俺が見えた世界の一瞬。俺がなすべき正しき幻像。大衆的に評価され、俺は正しく微笑んだ。

いつものようにDMを読んでいると、その中で一つ、気になる文章があった。
俺の投稿を共有する形でメッセージがついていた。

『はじめまして。あなたの撮る写真があまりに素敵で、思わずメッセージを送ってしまいました。特にこの写真が好きです。悲しくて、可哀想で、手を伸ばしたくなる。強く心が動かされました。これからも楽しみに見させていただきます。』

そこにあったのは、俺が初期の頃に投稿した何でも無い空の風景だった。
真冬の早朝。空の見事なグラデーションに思わずカメラを持った。
光の届かない深海の紺色から、叶わぬ希望を表した淡いオレンジが一つの世界をつくり、芋虫のような俺は泣きたくなったんだ。
人生は誰も救わない、生き抜くことは自分で選択し、守り、戦い、殺すべきなんだ。渇望するこの心も、俺以外、誰も救えない。嘘で固めても、本音で生きても、結局は自分だから。
…だから、俺は何のために、誰を守ってるんだろう。そう思った、あの朝の写真だった。

『メッセージ有難うございます。自分の中では好きな一枚ですがすっかり忘れていたので嬉しいです。あと、悲しいとか、可哀想と表現いただいたのは初めてでした。それも、嬉しかったです。有難うございます。』

返信を済ませると、どんな人なのか気になり相手のアカウントを見に行った。
本人は女性で、彼女の投稿は酷く卑猥な内容で溢れていた。
文字だけでなく画像、動画まで。女性が男を酷く扱い、男はみなブタのように蠢き喚く、俺の理想が全てそこに詰まっていた。
爆発する胸のときめきを抑えられず、隈なく投稿内容をチェックした。
こんなことをする人が、俺の写真にあんな感想を送ってくれたなんて。
スクロールしていく中で、何度も、何度も再生を繰り返してしまう動画があった。
全頭マスクを被され手足を拘束されたブタが惨めにうごめくだけのものだったが、そこには音声もついていた。注意していないと聞き逃すであろうボリュームで、わずかに会話が撮れていた。


--------------------

お読みいただきありがとうございます。

宜しければ、Twitterフォローお願いします。
主に新しい物語、SM、日常をぼやいています^^♥

::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::୨୧::::::::::
■Twitter
https://twitter.com/amanenoanone

::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::୨୧::::::::::


サポートいただけたら嬉しいです。 少しでも多くの癖を刺していきたいと思っています。 よろしくお願いします。