無言
今日は夕暮れだ
やや雲が早く流れる
ススキがサラサラと揺れている
待ち合わせ場所に
帽子を被った外套の男
もうすぐ街灯が灯る時間だと
暗い瞳が伝えてくる
本当はよく晴れた
青空の花会いたかったんだ
でもどうも最近具合が良くない
風も強くて私の髪は何度も視界を遮る
男は帽子を抑えてこちらに向かって歩いてくる
怒っているのか、口は結んだまま
遠くにあれば低く見えた身長も
目の前であれば少し見上げるくらいだった
ごうごう風が鳴る中で
彼はやはり口を開かない
私はじっと見つめるが
何にも変わらない
あなたは本を差し出して
ムッとした顔のまま
表紙を指差した
トントンと
答えはこの中に
瞳でそう伝えて
ふいっとどこかへ歩いていった
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