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個人的にやりたいと思ってること

言語学+考古学(含む分子人類学)+比較神話学=古代や建国神話への理解が超深まる?

個人的にやりたいと思っていることをおおよそ短い表現にまとめると上のタイトルみたいな感じになります。

私は高校生の時に日本古代史や日本神話の研究を始め、同時に6歳の時から習っていた英会話をちょうど高校生から外国語学や言語学と結びつけて専攻にし始めたんで、ちょうど2つのクラスタがベン図みたく重なってる人間なんですが、

特に古代史・神話のクラスタとして言語学や考古学の知識を元に古代史や神話の読み物(註:学者がキチンとした引用形式や参考文献を挙げて書く「論文」では無い)を見ているとしばしばこう言うものを見かけるんですね。

布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)や布留御魂大神(ふるのみたまのおおかみ)のフツやフルは古代モンゴル語で解釈できる!!!

...まず、1つ古代モンゴル語(Ancient Mongolic)ってなんやねん、と。古代モンゴル語という言語は厳密にはありません。

チンギス・ハーンがモンゴル帝国を築きモンゴル標準語(コイネー)として中世モンゴル語(Middle Mongolic)が出来たのがおおよそ13世紀(1200年代)ですから、それより前のモンゴル祖語(Proto-Mongolic)やモンゴルよりも早く、中央アジア〜東北アジアのステップ地帯に登場した系統的にモンゴル語に近い言葉を喋っていたとされる遊牧民の言語、いわゆる側モンゴル語(Para-Mongolic:契丹語など)が広義で言えば「古代の」モンゴル(諸)語にあたる訳ですが、こう言うタイプの記事を一般向けの読み物に書く人はまず大抵キチンと言語学の勉強をしていないし、する気もない。

一般向けとは言え、こう言うことに興味を持って下さる人向けに書く訳ですから、キチンと比較言語学や歴史言語学、或いはちゃんとした史料などを用いて推定しなければいけないのに、見かけるものといえば...

ヤマトはヘブライ語で解釈できる!
萬葉集は(全て)古代韓国語で理解できる!
日本語はアルタイ語と南方語の混合言語だ!
日本神話と檀君神話はそっくりだから日韓は同祖だ!

ええかげんにせぇよ。

もちろん、全部が全部、批判(以前に唾棄するべき棄却の)対象という訳ではありません。

例えば『萬葉集』や『記紀』の中には実際、百済語や高句麗語の語彙上代東国語(日本語・琉球語と同系統に属する奈良時代ごろまで関東・東北などで話されていた言語)の歌も何首かあります。

古代韓国語を再構して読んでみると解釈できそうな歌も当然あります。

でも、それをしている人間の態度が問題です。

まともに歴史学や言語学に基づいた考察をすると言うより...

「わー!韓国語のサル(米)って猿田彦の猿(サル)と同じ発音だー!思えば日本語で猿と田んぼの組み合わせなんて不思議だよね解釈し辛い!よし!コレは韓国語!多分!」

こう言う感覚で行われているのが実際の所です。

でもこれではサイエンスとは言えない。

なので、ここにキチンとした比較言語学歴史言語学のメスを入れないといけないと言うのが一つ。

ゲノムの解析と考古学的進展で神話の意味がわかる様になった!?

一方で、ゲノム・サイエンスや考古学のここ20年ほどの成果で人類が出アフリカを果たしてから、どの様なルートで拡散してきたのか、が良く分かるようになってきました。

とは言えこれらは自然科学の領域の影響が強く、人文科学中の人文科学である神話学などとどう繋がりがあるのか?と思われるかも知れません。

もっと分かりやすく言うと、日本人のゲノムが縄文人由来だとか弥生人由来だとかそういう事だとか弥生土器とか青銅器とどう神話が関係するの...?

神話って虚構(フィクション)じゃないの?

って事ですね。

それに一つ一つお答えしていくと、

まず神話とは虚構(フィクション)なんですが科学の未発達な時代、神話とは同時に、

由来を説明する寓話(アレゴリー:比喩)でもあるんです。

比喩と言うことは、その例えを用いて何かを説明したい訳です。

つまり、それの元となる自然現象、血縁、職業や氏族の起源、事件など、それのモデルは実在し、それの形が科学の発達した後では陳腐化したり、辻褄合わせで崩れたり、崩されたりしたのが「神話」という事ですね。

つまり、神話と史実と言うのが全く無関係という訳では無いのです。史実や自然現象などの反映と抽象化や顕彰が神話な訳です。

そして、ここからが考古学との関わりになるのですが、弥生文化に特徴的な「青銅器の伝来」と中央アジアの考古学の成果である「ユーラシアの青銅器の編年・変遷」を重ねてみたところ、「弥生文化の青銅器は中央アジアの青銅器の末裔である」と分かったのです。そしてそれらの冶金技術が古くは「中央アジア西部やメソポタミア方面から印欧語の話者によってもたらされたもの」であると言う事も。

つまり、我々の祖先である縄文人・弥生人がその神話を青銅器とともに借用した可能性が高いと言う事実が分かってきたんですね。

この類似性は既に戦後から三品彰英(みしなしょうえい/大谷大学・同志社大学)大林太良(おおばやしたりょう/東京大学)、吉田敦彦(よしだあつひこ/学習院大学)などの比較神話学の権威によって取り沙汰され、例えばギリシャ神話と日本神話がそっくりだ、と言う形で指摘されてきましたが、

正直なところ「系統論」としては真面目に取り扱われず、「形態は似ているが同型の神話による偶然の一致」ぐらいに扱われてきました。ですが、我々の祖先が、朝鮮半島や中国東北部の遼河方面とも交流していた事が考古学上もゲノムサイエンス上もハッキリしてくると事情は変わります。

要するに「我々の祖先がその神話をどこからどう言うルートで借用し、どの様な自分達の史実と絡めて弄ったか」「系統的に明らか」になるのです。

つまり、これは人文科学と自然科学がさらなる交点を持つと言う事です。

これが言語学+考古学(&分子人類学)+比較神話学が古代史や神話をもっとリアリティあるものに出来る。

って言う自論なのです。

既に実は検証が進んでいるエリアもある?

実を言うとこれがもう既にだいぶ進んでいるエリアもあります。

それは印欧語の話されているエリア。

印欧語と言っても言語に詳しく無い方は分からないかもですが、

インド諸語(とイラン諸語)

そしてヨーロッパで話されているゲルマン諸語、ロマンス諸語、ケルト諸語、スラヴ諸語などが

「同じ祖語の子孫」から分かれ出ている事から名付けられた語族です。

一例を挙げるとインド語派のサンスクリット語で1、2、3はエーカム、ドヴェー、トリーニ。

イタリック語派のラテン語で1、2、3はウーヌス、ドゥオ、トレースと特に語頭の子音がよく似てますね。

この語彙の同系統性による類似は、神名でも同じで、

例えばラテン語で神はDeus(デウス)
対してサンスクリット語でDeva(デーヴァ)
と全く同じです。

かつ彼らは遺伝子的に同じコーカソイド系かつ、言語上も同祖語の子言語を話す。

つまり血縁上も文化上もかなり近い枝から分かれた親戚同士と言う事ですね。

故にその神話にも類似性があり、たとえば「太陽神はスーリヤとかソル(solarとも同語源)と呼ばれ、馬や馬車に乗り天空を駆け、大地を温める」と言う共通性があります。

こう言うところを異語族同士でも考古学的成果や隣接する民俗の歴史や言語を絡め、詰めていく事で、日本・琉球語族や韓国語族の神話もいずれその系統の解明が出来るのでは無いか?

と期待しているのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

上記の様に学際的に研究経過をクロスさせる事で神話や古代史をもっと詳細かつ濃厚に理解し、それを平易に共有したい、と言うのが私の目標の一つです(>ω<)

こんな感じでドンドン書いていきたいと思いますので宜しくお願い致します!

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