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サンスクリット語と日本語のお話

皆さま今日は、雨音村雲ことエリカです。
8月になり毎日暑い日☀️😵が続きますが如何お過ごしでしょうか。

さて、これまで比較神話学占いについて呟いてきましたが、今回はちょっと趣向を変えながらも、

比較神話学にも関わってくる言語のお話。

サンスクリット語のお話を短めながらもしてみたいと思います。

サンスクリット語とは?

サンスクリット語は別名梵語とも呼ばれ、その最も古い形であるヴェーダ語の歴史は紀元前1500年前に遡ります。ヴェーダ語とは古代インド・パキスタン🇮🇳🇵🇰のバラモン教の聖典である『リグ・ヴェーダ』などを中心とする諸ヴェーダの記述に使われていた言語で、お隣イラン(古代ペルシャ)🇮🇷のゾロアスター教の聖典である『アヴェスター』の記述に使われたアヴェスター語(古代ペルシャ語)とはかなり近しい関係になります。

南伝でスリランカ・ミャンマー・カンボジア・タイなどに伝わった上座部仏教が多く、

プラークリット(中期インド・アーリヤ諸語、民衆語)と呼ばれる雅語としての特徴に乏しい音韻変化した諸方言の一種であるパーリ語を使っているのに対し、

北伝でアフガニスタン、中国、朝鮮半島、日本、ヴェトナムなどに伝わった大乗仏教の経典群の多くはサンスクリット語のまま翻訳されているものが多く、

仏教史を知る上でも、サンスクリット語及びパーリ語と言うのは非常に大事な言語なのですね。

更に古代言語、たとえば既に

語族、語派全体が死語(母語として話されない言語)になってしまったシュメール語やヒッタイト語、古代エジプト語

或いは同語族や語派が広範囲の公用語となりながらも自らは死語となってしまったアッカド語

などに比して、サンスクリット語は未だに現役の母語として少数ではありながら、機能しており、更に語形変化や音韻変化もサンスクリット語と同語派のヒンディー語に関して言えば、上記の言語と子孫の言語に比して随分と小さいと言う稀有な言語です。

そこら中に残っているサンスクリット語(地名編)

サンスクリット語はバラモン・ヒンドゥー文化や仏教文化の媒介者としてユーラシアの東半分を駆け巡ったため、

非常にたくさんの痕跡を残しています。

まず、地名や国名を挙げれば...

●カンボジア王国🇰🇭=恐らくインド西北にあった国(Kamboja=カンボージャ)が起源
(クメール語で太祖で僧侶のカンプーの子孫(チャ)と言う説もある。
また、正式名称で「王国」を意味するリアチア・ナー・チャック(Réachéa-na-châkr)はサンスクリット語のラージャ・アナ・チャクラ(王が支配する地域)から来ている。

●タイ王国🇹🇭=タイ自体はタイ語で「人間、自由民」を意味するが、国名にカンボジアと共通のラーッチャ・アーナー・チャク(Ratcha Anachak)が入る。

●モルディブ共和国🇲🇻=国名がサンスクリット語のマーラー・ドウィーパ(Mālā-dvīpāḥ)、「島々の花輪」に由来

●スリランカ社会主義民主共和国🇱🇰=スリはサンスクリット語のシュリー(Sri)、「吉祥なる」に由来し、ランカーは語源が不詳。

首都スリジャヤワルダナプラコッテは「シュリー・ヴィジャヤ・ヴァルダナ・プラ(吉祥なる勝利を益すものの街)であるコッテ」という意味。

更にシンハラ語で社会主義民主共和国を意味するPrajathanthrika Samajavadi Janarajaya
(プラジャ・タントリカ サマジャ・ワディ ジャナ・ラジャヤ)

はprajaがサンスクリット語の「王権、支配」でthanthrikaがtantrika「ドクトリン、主義主張」、Smajサマージが「社会、集会」、vadiがvatiで「〜を持つもの、Jana-rajayaがGana-rajayaで「大衆が支配権を持つ」で合わせて「社会主義を持ち民衆に主権が存する政権体制の国)と言う意味になる

シンガポール🇸🇬=サンスクリット語で獅子の都(シンハー・プラ)に由来する。

などなどインド周辺からインドシナの国々には濃厚にこれらの語彙が残っています。

他にインドネシア🇮🇩にあったシュリーヴィジャヤ王国(吉祥なる勝者)やビルマ🇲🇲からマレー🇲🇾半島を指したスヴァルナドウィーパ(黄金の島)など枚挙にいとまがありません。

更に挨拶や暦にも...!

更にタイ🇹🇭語やラオ🇱🇦語、クメール(カンボジア)🇰🇭語、ミャンマー(ビルマ)🇲🇲語などは特にサンスクリット語やパーリ語からの借用語彙が多い事が知られています。

例えばタイ語でこんにちはは、

サワッディー สวัสดี (sa wàt dii)

で男性ならこれにクラッ、女性ならカー、トランスジェンダーならハーをつけますが、

このサワッディーサンスクリット語のस्वस्ति (svasti:スヴァスティ)、「吉祥なる」から来ています。

つまり「あなたに幸運あれ!」が原義なんですね。

また卍の事をswastika(スヴァスティカ)とも呼びますが、これも同じ語源です。

更に、クメール語でこんにちはは、

スオスダイ(ជំរាបសួរ)と言いますがこれも同語源です。

また、ビルマ語でこんにちは

ミンガラーバー(မင်္ဂလာပါ)と言いますが、

これはサンスクリット語のमङ्गल (magala:マンガラ)、「幸せ」から来ています。

やはり相手の幸福・幸運を祈る言葉から来ているんですね。

その他、タイ語では月曜日をワン・ジャン(wan can)、日曜日をワン・アーティット(wan ʔaatʰít)と言いますが、これらもcandra(チャンドラ)とaditya(アーディトヤ)それぞれサンスクリット語で月🌛と太陽🌞から来ています。

この様にインドの暦法もちゃんと東南アジアに輸入されているんですね。

古代日本語に借用された多数の梵語、そして現代でさえも...

日本には漢訳仏典を通して伝わったため、

多くの仏教用語、特に仏教建築用語に多数の梵語が残っています。

例えば

●伽藍(がらん)=僧伽藍摩(そうぎゃらんま/saṁgha-ārāma:サンガ・アーラーマ)、「教団員(サンガ)の為の園」が語源

●精舎(しょうじゃ)= विहार(vihāra:ヴィハーラ)の意訳で「区切られた住居スペース」の意

●塔=卒塔婆(そとうば/स्तूप:stūpa)、で「積み上げられたもの」が語源。英語のtowerなどと同語源。

●瓦(かわら)=kapala(カパーラ)で「頭蓋骨、頭」が語源。英語のcapなどと同語源。

他にも甍(いらか)がサンスクリット語イシュタカー、パーリ語イッタカー、「煉瓦」が語源
※日本琉球語の「うろこ」と二重語説も有り

などと仏教語を通して日本建築史にもかなりの影響を与えているといえます。

また精舎を意味するビハールやビハーラは、現在仏教系の幼稚園、介護介助施設やホスピスの名称にも使われたり、

ヨーガ(yoga)チャクラ(cakra)などはポピュラーカルチャーやスピリチュアリズム、インド医学の分野を通しても知られている単語ですよね。

この様に古代から現代に至るまで、サンスクリット語やパーリ語などインドの言語は多大な影響を我々、東アジアや東南アジアの国々に及ぼしていると言えるのです。

ちょっとこの一回だけでは纏められない分量ですが、また追記や続作のnoteでそこら辺の詳細も纏めていけたらと思います。

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