死ねない理由にするために借金を作った話
もう人生は終わり。でも本当に死んでいいのかな。
借金作って遊び呆けてみようか。
楽しかった思い出と借金があれば、気持ち的にも、物理的にも、死ねないって思うんじゃないかな?
家に帰れば毒親、学校に行けばいじめ。
辛かったけど、あのころは思考というか思いやりが育っていなかったから、「自分が正しいのに!」という気持ちでいっぱいで、正直メチャクチャ辛かったわけじゃない。
親にも友達にも認められないことが悔しかった。
自分を認めない、この場所が悪い。
そう思って、高校を中退しようとした。
するとまさか、毒じゃない父親のほうに「逃げるな」と喝を入れられ、
悔しくて火が付いた。
そこで知ってしまった。
悪いのは世界じゃない。自分だ。って。
私が周りを傷つけていたんだ。
思考も思いやりも言葉もすべて足りないせいで。
もっと悔しくなった。
けれどこれは火が付く悔しさとは違う。
火が消える悔しさ。
信じていた「自分」の火が、静かに消えた。
自分だけは、自分だけは自分の味方。
周りが悪いんだよ、自分は悪くないよ。
そう思ってたのに。
自分が未熟だって、自分が知ってしまった。
唯一の味方の自分が。
唯一の味方の自分を強くしてあげなくちゃ、
そう思ってとにかく心理学の本を読んだ。
思いやりが本当にわからなかったから、本で知るしかなかった。
こういうとき、人はこう感じるんだ。
こういうことをされたら嫌なんだ。
こういうことをされたらうれしいんだ。
知れば知るほど、過去の自分が刺された。
信じていた自分が、こんなに嫌な奴だったって気づくから。
未来のための勉強は、過去の自分を否定していく。
私は実家を出て、大学生になった。
友達が増えた。誰とでも仲良くなれた。
後輩も慕ってくれる。先輩もかわいがってくれる。
親との関係も柔らかくなった。
だれからもいじめられない。
むしろ「あいつうざくない?」という話を聞く側になった。
でも、もう自分は自分の味方じゃなかった。
「今の発言変じゃない?」
「あいつきっとお前のことうざがってるよ」
そういうことしか言ってくれなくなっていた。
そのまま社会に出た。
誰とでも仲良くなれる私は、営業として重宝された。
仕事の成績もいいし、飲み会では盛り上げ要員。
幹部それぞれともサシ飲みに行くくらいかわいがられた。
客に合わせた自分、飲み会の自分、幹部の前での自分・・・
使い分けて5年が経とうとしていた。
ある日突然、
「本当のお前は誰?」
と自分が聞いてきた。
知るか。知るか知るか知るか。
合わせないと生きていけないんだよ。
でも、もう本当に、自分が誰なのかわからない。
趣味もない、好きなこともないし嫌いなこともない。
あー、自分って何だっけ?どれだっけ?
もう機械じゃん、今。
ずっとこうして生きていくの?無理。
でもこうしないと生きられない。
無理。もう死のう。もう終ーわり。
「なんか好きなこと、一つくらいしようや」
久しぶりに、自分の心が否定以外を言った。
私が好きだったこと。
知らない土地に行くこと。
そこで出会った、飛行機の距離のご当地アイドル。
よし!最後に行ってみよう!
私は飛行機に乗って、週1で通った。
ライブでめちゃくちゃコールして、ライブ後の特典会でアイドルに直接楽しかった気持ちを伝えた。
大声を出して、心底楽しんで、感じたままに感情を出せる。楽しい、感動、楽しい。
その気持ちのまま、知らない土地をドライブする。
自分の知らない世界。自分のことも知らない世界。
この日々が心にあれば、私はまだ頑張れるかもしれない。
この日々のために働くのなら、頑張れるかもしれない。
このへんで貯金が尽きた。
お?これは借金をすれば、
「未来にある楽しいことのため」に働くのではなく
「過去に楽しかった思い出のため」に働かざるを得ない?
働かざるを得ないほうが、生きざるを得ない!!
馬鹿ですね。あ、現在の本音が。
今になって冷静に見れば、もうトチってるんですよね。
はい、一気に〇〇万借金しました。
そして遊ぶぞー!と少し使った頃に、
なんとコロナ騒動ですよ。
コロナ禍となる前に、私は死ぬほど遊んだわけです。
少しお金が残っちゃったんですけどね。
もうこれ以上ないでしょってくらい遊びました。
なんたって週1で飛行機乗ってるんですから。
借りたお金は残っていたけど、
「死なないための借金」だから、
まるっとは返さず、毎月ちょこちょこ返すほうが、長く生きられると思ったので、そのままにしました。
そして、今も返し続けています。そして、まだ生きています。
楽しかった思い出は、楽しかっただけでなく、感情の解放の仕方を教えてくれました。
それを、毎月支払うたびに、思い出すんです。
コロナ禍でストレスがあったり、仕事でストレスがあったりするけど、人に流されすぎず、自分中心にもなりすぎず、自分らしく生きようって思わせてくれます。
自分が「正しい存在」ではなく「変」だと知り。
自分が「唯一の味方」から「唯一の敵」に変わり。
自分で自分を責め続け、自爆。
自分だけの評価も、
他人だけの評価も、
どちらかだけで、心は生きられないと知った。
自分で感じた感情に素直に、
楽しい、悲しいが言えるようになるまで、
お金も時間も、たくさん使ってしまった。
まあ結局、最初の
「自分が変」っていうのは変わってない。
だって借金で生きようとするなんて、多分変。
けれど、それが自分らしさだ、仕方ない。
いろんなことがあったけど、
まるっと、大事にできる。今なら。
いつもありがとう、自分。
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