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No.48 フォスフォフィライト

48.フォスフォフィライト

フォスフォフィライトといえば、市川春子氏の漫画「宝石の国」の主人公として有名だ。私は1巻の時点で「重い」と感じて読むのをやめてしまったのだが、とても人気が高い作品で多くの方から支持されている。
また近年ではこの漫画がきっかけで鉱物に興味を持ったという方も多いようだ。実際私も漫画にはハマらなかったが、1巻を読んで「フォスフォフィライトってなんだ?」と検索したことにより鉱物の魅力にズルズルとハマった人間である。
まあつまるところ私が鉱物にのめり込むきっかけを与えたのはフォスフォフィライトなのだが、当時検索したときに見たフォスフォフィライトは透明なミントグリーンの個体で、まるでミントキャンディのようだと思った。が、今回の個体はミントというよりマスカットキャンディのようである。だが透き通るようなその見た目は心が洗われるような気分になる。光に透かすと儚さが滲み出てなお良い。
しかしこの鉱物はとにかく脆い。脆すぎてミネラルタックから外すときに少し割ってしまった。だがフォスフォフィライトはとても希少で、主産地であるボリビアのポトシ鉱山では採り尽くしてしまっているので事実上もう採ることができないと言っても過言ではない鉱物なのだ。だから割れて欠けてしまった欠片も大事に保管している。
さて、このフォスフォフィライトにはちょっとしたエピソードがある。
2019年。ツイッター上で行われた「鉱物アドベントカレンダー」という企画に参加した。これは12月1日から12月25日まで一つずつツイッターに鉱物写真を載せて、クリスマスまでの日々を楽しもうじゃないかという企画である。私は毎日「何を載せようかなぁ?」と楽しみつつ参加していたのだが、12月11日に気まぐれでフォスフォフィライトの画像を載せてしまった。その時は深い意味もなく「ちょっと自慢しようかなぁ」と軽い気持ちで載せた。
しかし、これがめっちゃバズってしまった。
リツイートは53件、いいねは179件と過去最高のバズりに私は若干の恐怖を感じた。嬉しいことは嬉しいが想定外過ぎて頭の処理が追いつかなくなってしまったのだ。
やっぱり、漫画の影響ってすげぇな。
私は素直にそう思った。
と、同時に思うところもある。
確かに「宝石の国」の影響力は凄まじい。その威力故にとある企業がツイッターで「新宿のミネラルフェアでフォスフォフィライト売ります」と告知したら開始1時間で完売してしまったらしい。
ブームが来るのは良い。現に私もこのブームに乗っかってハマったようなものだ。だが問題はハマったあとにのめり込めずに飽きてしまった場合である。もし飽きてしまったら集めてきた鉱物はどうするのだろう?そのまま放置だろうか?それならまだマシだが最悪捨ててしまうのでは?私はそれが気がかりでならないのだ。
確かに漫画の影響力が凄いことは認める。だがその影響力が永久に続くとは思えない。影響力がなくなれば今まで築いてきた牙城は一気に崩れる。ましてや漫画やアニメと言ったメディアではそれが起こりやすいではないか。もしそうなった場合、今まで集めていた鉱物をどうするのかが私は不安なのだ。特にフォスフォフィライトは先程も言ったようにもう採れないといっても過言ではない鉱物だ。それをブームが去ったからと言って適当に扱ったり捨てたりしてほしくないと私は思っている。
石は私達よりもずっとずっと長く残るもの。もし飽きたとしても大事にしてくれる方に譲るなどして、自分の手から離れるまで大切にしてほしいものである。

【補足】

「ミネラルタック」
鉱物を飾るときに固定するねり消しのような固定剤。ねりねりして柔らかくしてから鉱物にくっつけ、固定したい場所に貼り付けて使用する。新しいものや扱いがうまいものは簡単に鉱物から剥がれてくれるのだが、古かったり扱いが下手だったりすると鉱物にこびりついて採るのが難しくなる。正直著者はこれが嫌い。

「新宿のミネラルフェア」
正式な名前は「東京国際ミネラルフェア」。池袋で行われる東京ミネラルショーが「池袋ショー」と呼ばれるのに対し、こちらは新宿で行われるので「新宿ショー」と呼ばれる。日本では東京ミネラルショーと肩を並べる鉱物イベントだが、東京ミネラルショーより若干規模は小さいかと思われる。しかし東京ミネラルショーが毎年12月頃の一回しか行わないのに対し、こちらはだいたい6月頃と10月頃、年二回開催される。


【参考書籍】

「ネイチャーガイド・シリーズ 宝石」
ロナウド・ルイス・ボネヴィッツ 文
伊藤伸子 訳   化学同人  2015年


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