No.52 エンスタタイト

コーラ色で透け感のある良いエンスタタイトだ。へき開の跡もしっかり確認できる。小粒ではあるが見ごたえは十分な原石である。
エンスタタイトは和名を「頑火輝石」といい、熱に強く昔はカマドの内壁に使われていた鉱物なのだ。私はエンスタタイトという鉱物がお気に入りなのだが、こういうキャラクター性の強さがエンスタタイトの魅力であると思っている。あと、「エンスタタイト」という名前の響きも可愛くて好きだ。
エンスタタイトは鉱物としてあまり珍しいものではない。しかし宝石質のものはなかなか産出しない。今回の個体はかなり質が良い方である。
色としては今回のようなブラウンの個体が多い。しかしたまにイエローやグリーンの個体が出てくることがあり、コレクターには人気があるようだ。
だが、本当にごくごく稀に無色透明の個体が出てくる。
実際私はこの目で見た。
それは私が贔屓にしている職場近くの宝石店にさらっと置いてあった。割と大きめな無色のルースで、タグに「エンスタタイト」と書かれていたのに気づいたときは度肝を抜いた。正直今までエンスタタイトはブラウンが普通で、たまにグリーン、良くてもせいぜいイエローのものしかないと思いこんでいたからだ。しかし割と近くに無色のエンスタタイトがあった。あまりにも衝撃的すぎて「本物ですか？」と思わず聞いてしまったぐらいだ。
そんなエンスタタイトだが知名度的にはかなり低い。キャラも強いし宝石質のものは綺麗なのだが、何故だかあまり人に知られていない。ちょっと残念な感じである。
ちなみに、私がその無色のエンスタタイトを見てからだいたい一年ほど経つが、知名度が低いからか今の所買い手はいない。少し値は張るが少し節約など頑張れば買えない値段ではなかったので、あと二年経っても買い手がつかないようなら、私が買って引き取ってあげようかなぁと密かに考えている。

【参考書籍】

「ネイチャーガイド・シリーズ　宝石」
ロナウド・ルイス・ボネヴィッツ　文
伊藤伸子　訳　　　化学同人　　2015年