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No.55 シンハライト

55.シンハライト

シンハライト。聞き慣れない鉱物だがそれもそのはず、この鉱物は20世紀までフォルステライトだと勘違いされていたのだ。そして新種の鉱物とわかり「シンハライト」という名前がつけられたのは1952年。歴史的に見ても浅く、希少性以前に知名度が低いためあまり市場に出回っていないのだ。ポテンシャルは高いのだが結構損な立ち位置の鉱物である。
事実ミネラルショーなどのイベントでもお目にかかる機会は少ない。私も一回東京ミネラルショーで拝んだことがあるが、この時愚かだった私は「まだ自分には早いか」と諦めてしまった。
後日、私はこれをひどく悔やんだ。何故買わなかったのかと一年ほど自分を責めていたのだが、そんな私に再びチャンスが与えられた。
とあるイベントで石仲間と巡ったあと、会場近くのファミリーレストランで雑談していたら「近くにいい宝石店がある」と仲間の一人が教えてくれた。正直財布は苦しかったが興味が勝り他の仲間と共に「行ってみよう!」と話が進み、実際に足を運ぶことになった。
行ってみて驚いた。小さい店だが質が良いルースがずらりと並んでいる。中にはソーティングがしっかりついた代物もあり、全て良心的な値段で売られていた。
そして、店の中にシンハライトのルースがあった。
価格は5000円ほど。しかも鑑別書もついている。私に買わないという選択肢は頭になかった。
そして「去年の敵!」という気迫で購入。この時財布は瀕死状態だったが、関係なかった。
実際買って後悔は見事に消え去った。少しインクルージョンは目立つものの、それさえも黄金色に輝いており神々しさがある。すぐにお気に入りのルースの仲間入りを果たした。
さて、少し話を戻すが、今回のように私には買わずに後悔した鉱物がたくさんある。逆に買って後悔したものが思いつかない。
ここで学べる教訓は一つ。
「ミネラルショーで少しでも買いたいと思ったらすぐに買え」
ミネラルショーでは様々な鉱物が比較的安価に売られている。市場ではなかなか出回らない代物も割と安く販売されている。まさにチャンスの宝庫だ。
だからチャンスを逃さぬようにビビッときた代物はすぐに買ったほうが吉だ。そのためには日々の生活で倹約しなければ。これがなかなか難しい。
うん、頑張ろう。


【用語解説】
「フォルステライト」
オリビン(かんらん石)のうち「苦土かんらん石」のことを「フォルステライト」と呼ぶ。
ちなみにオリビンには2種類あり、「フォルステライト」と「ファイアライト(鉄かんらん石)」があるのだが、この内フォルステライトの中でも美しい若葉色の個体は「ペリドット」として扱われる。

【参考書籍】

「価値がわかる宝石図鑑」
諏訪恭一 著
ナツメ社  2016年

「世界のレアストーン図鑑」
亀山実 著
柏書店松原 2008年

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