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No.41 シトリン

41.シトリン

天然のシトリンである。一見スモーキークオーツのようにも見えるが、スモーキーより茶色みが少なく黄色みが強いのでシトリンであると言える。現在流通しているシトリンのほとんどがアメジストを加熱し色を変えた加工品で、天然のシトリンは何気に珍しい。この個体は結晶の先が無色になっているので、個人的にはバイカラーだと思っている。
色は薄めでクラックが無数に入っているが、このクラックから時折分散光を味わうことができる。個人的にはお気に入りな一品だ。
このシトリンは地元の鉱物店で500円という価格で叩き売られていた。買ったときは普通に天然のシトリンだと思っていたのだが、自宅に持ち帰ってルーペで観察した私はあることに気がついた。
なんと、シトリンの中に金色の線が!!
これはひょっとしてルチルではないか?
ルチル入りのクオーツ、通称「ルチレイテッドクオーツ」は人気の高い品だ。もしやこれはルチレイテッドシトリン?だとしたらこれは500円で本当に良かったのか?
私はすぐに第三者の意見を聞こうと別の鉱物店へ例のシトリンを持っていった。そこは鉱物標本の買い取りも行っているので何か情報が得られるのでは?と思ったのだ。
店に着いてある程度話をしたあと、私は恐る恐る店主に例のシトリンを見せた。店主いわく、やはりあの金色の線はシトリンにインクルージョンとして入り込んだルチルなのだそう。しかしあの程度の量では「ルチレイテッドシトリン」とは呼べないのだそうだ。
だがしかし、中にルチルのインクルージョンが入ったシトリンを500円で販売して大丈夫だったのだろうか?もしかしたら気づいていないのでは?
おせっかいながらそう思った私はこのことを購入先の鉱物店の店長に伝えた。
「知ってましたよ?たまに入っているのがあるんですよ」
と、店長はサラッと言う。「本当に500円で良かったんですか?」とも聞いたが、店長は和やかに笑って「まあ、ラッキーってことで」と答えてくれた。
思えばこの店は堀り出し物が安価に叩き売られていることが多いような気がする。カルサイトとセレスタイトの共生標本が1回500円のくじ引きで一番末の景品として置かれていたし、つい最近はミメット鉱が650円で叩き売られていた。
実際店の人はいい人だし、何より家から近い。もしかしたら私は鉱物コレクターとして恵まれているのかもしれない。

【補足】
「シトリン」
黄水晶のこと。アメジストが熱によって黄色く変色したもの。
ちなみにクオーツに硫黄が入って黄色くなったものは「レモンクオーツ(レモン水晶)」と言う。


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