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短編小説

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夢から着想を得ることが多いです。
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2020年5月の記事一覧

夜の海(詩)

耳をすませてごらん 窓の外のもっと遠くの向こう側だよ そこの窓ぎわのいびきの向こう側 窓の外の、高くそびえ立つ魔女の山よりも外だよ 聞こえない 心の耳で聞いて ほんとに魔女が住んでるの? たくさん、たくさん さて、何がある? うみ ザザーンて言ってない? どぉーんてきこえた ざわざわざわって 砂浜を濡らして するするするって引いていく 波の形に残った泡が、ぽつぽつ白く残って 穴があちこちに開いている。 ほらまた来るよ どぉーん! ざざー ざわざわざわ… その音を聞いてね

What a day 今日はなんて日(短編小説・ダーク)

ひまだ。 寝転んでテレビを見ながら、彼はシャツ一枚になって長く体を伸ばした。 妻が食器を洗いながら後ろから言う。 「看護士さんのお友達がね、ここまで何とか抑えているのは、日本人が持つ普段からの衛生意識と無関係ではないと思うって言ってた」 「ここまで大変なことになるとはね」 うちの会社いつまで持つかな、と言おうとしてやめた。不安にさせても仕方がない。ストレッチをしながら見上げると、対面式のキッチンカウンターからこちらを見下ろしている妻と目が合った。 妻はにっこり笑う。 「頑張ろ