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やせいの火の玉が、あらわれた! 暗い夜道に、とびだしてきた! 僕が火の玉を見たのは、閉店時間ギリギリのスーパーまで歩く道中だった。草むらで新種のモンスターに遭遇したときのように、なんの前触れもなく出し抜けにそれは出現した。 小さな火の玉は、しだいに多くなっていった。電光石火の如く、上下左右に揺れていた。不思議と音は聞こえなかった。そのことが僕を余計に混乱させた。 もちろん、正面から猛スピードで走ってくる車なら避けられるかもしらない。けれどそれが火の玉なら、話は別
文字が消えたのは、夜中の0時を過ぎた頃だった。 ソファに寝転んで、スマホでニュースを見ているときにそれは起こった。読んでいる文字がとつぜん見たことのない文字に変わった。子供が殴り書きをしたような文字だった。それは文字というより、何かの模様と言うべきかもしれない。 不意に起こった出来事に初めはどう対処すればよいか分からなかった。こんなことは生まれて初めてだ。わたしはスマホを逆さにしてみたり、目をギューッと閉じてみたり、電源を点けたり消したりしてみた。それでも、元の文字
初めて飲んだコーヒーは苦かった。 得体の知れない黒い液体は、少女のわたしの好奇心を掻き立てた。それはまるで、用水路を流れる泥水のようであった。けれど香りを嗅ぐと、うっとりと夢見心地な気分になるものだった。 母はいつもコーヒーを飲んでいた。 そのため、濃厚なコーヒーの香りは部屋中をふわふわと漂っていた。 わたしもコーヒーを飲んでいた。 母はコーヒーの量が減っていることに気づくと、すぐにわたしを叱った。母はきまって、「コーヒーを飲むと、背が縮むのよ」と言った。 わた
音が聞こえなくなってから、どれくらい経つだろう。 遠くの方から聞こえた「みーつけた」の声も、今は聞こえなくなった。辺りはしんとしていた。それが余計に僕を混乱させた。 ドク・ドク・ドク。 心臓の鼓動は、やたらと大きく鳴っていた。胸に手を当てると、ますますそのテンポは速くなる。 ドクッ・ドクッ・ドクッ。 周囲はまっ暗だった。 まるで暗闇は、この世の全ての光を吸収したかのように、僕を包み込んでいた。目は開いているに、目を閉じているような錯覚さえおぼえた。 試