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ある日の夕方、近所を散歩していると、見慣れないお店を見つけた。そこは、赤いレンガ造りの高級店のような店構えをしていた。窓を覗いても、薄暗くて中の様子がほとんど見えない。看板には、「ありがとうカフェ」とだけ書かれている。僕は、その店の重たいドアを押した。 中に入ると、僕の想像はあっという間に裏切られた。店の外観とは対照的に、少し古びた内装をしていた。カフェというよりは昔ながらの喫茶店のようなアットホームな雰囲気がそこには漂っていた。 客は2、3人が点々といるだけで、店
人の素顔を見ることはできないのか。仮面の奥には何が見えるのか。M氏は、時々そんなことを考えていた。 そして、そんな想像をすればするほど、むかし母から聞いた話を思い出した。 「お母さんが若かった頃はね、仮面なんて付けてなかったの。ちゃんと顔を見てお話ができたわ」 「仮面を外すと、みんな顔は違うの?」 M氏は、夢中になって話をつづけた。 「みんな顔は違うわ。それでも、化粧をしないといけなかったの。だから、見た目で人を判断するのは、今も昔も変わらないのよ」 この国では