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誰しも人には言えない秘密がある。それは、男のばあい通帳だった。その通帳は机の引き出しの奥にそっとしまってある。 いつぐらいだっただろうか。物心ついたころにはその通帳を持っていた。その頃から、手帳に貯金をしていた。正確に言うと貯金ではない。男が貯めていた物は時間だった。 その通帳を使えば、自分が苦痛に感じる時間をスキップすることができた。だから、嫌なことがあれば、頭の中で念じる。すると、いつのまにかその状況を脱することができた。そして、その空白の時間は男の通帳に記帳される。
ある晴れた日のこと。小さな研究室で、二人の男たちは喜びの声をあげた。 「博士。完成しました」 「おぉ。とうとうできたか」 「誰か被験者になってくれませんかねぇ」 彼らは、政府の依頼で記憶を取り除く装置を開発していた。その機械がやっと完成したのだ。 これにより、日付と時間が分かれば、その期間の記憶を脳内から取り出すことができる。取り出された記憶は、装置の中にある試験管に保存される仕組みだ。 これがあれば、思い出したくない記憶を消すこともできるし、取り出した記憶を保管した