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私が彼に癒着していった理由

過呼吸になったユウヤを置いて帰ることができなかった私。結局その日はそのままホテルで一晩を過ごすことになりました。さっきのモラハラぶりはどこへやら。ユウヤはすっかりおとなしくなり、私を慈しむような態度を見せ始めます。

彼の内側にある「何か」に
強烈に惹かれて……

「もう会えなくなっちゃうと思ったら、息ができなくなった。せっかく会えたのに、絶対に嫌だ」。

私が帰らないとわかったのか、すっかり安心した様子のユウヤ。ようやく私に気を許したのか、自分のことを話し出しました。

絵画教室でアルバイトをしながら、プロの画家を目指していること。子どもの頃、お姉さんが病気で亡くなっていること。いまは友達とシェアハウスで暮らしていること。などなど。

彼の話を聞きながら、私は別のことを考えていました。

なぜあのとき、彼を置いて帰れなかったんだろう。

心理学のことなど何も知らなかった当時の私でも、彼がなんらかの心の闇を抱えていることはわかりました。でも不思議と、もっと彼と一緒にいたいと思ってしまったのです。

自分でも意識できないくらい深い深いところで、強烈に彼に惹かれる私がいたのだと思います。

その日から、私のユウヤへの感情はあきらかに変化しました。それまではたぶんお互いに、ちょっと遊んでやろう。くらいの気持ちだったのだと思います。

しかし、彼が自分の内側を私に見せたことで、2人を取り巻く空気はいっきに親密なものに変わりました。

そしてそこから私は、深い深い沼へとはまっていくことになります。

たまにうちに来てゲーム三昧
謎の行動は続く

その日を境に、ユウヤは仕事帰りに私の家にやってくるようになりました。彼が来てすることといえば、恒例のアレ。そして、ゲームでした。

よほどゲームが好きなのか、何時間でもテレビの前に張り付いて、ゲームをしています。私が参加してもしなくても、それはどちらでも良いようです。

そして、うちに泊まることはなく、家に帰っていきます。もちろん、外でデートをしたことはほとんどありません。今思えば、それも明らかに怪しいのですが、当時の私はなぜか、そこに疑問を持ちませんでしたし、彼に問い詰めることもありませんでした。

いまでも、あのときの感情を不思議に思うことがあります。他に誰か女性がいるのでは、と、疑える要素はたくさんありました。でも表層意識の私は、本当にひとつも疑っていなかったのです。

おそらく、無意識に心の底にある「不安」や「疑い」に蓋をして、感じないように、感じないようにしていたのだと思います。

その頃の私は、ユウヤにべったりと癒着していました。文字通り、心がくっついていたのです。理由はわからないのですが、私のユウヤに対する気持ちは、ただの恋愛感情ではありませんでした。

しいて言えば、近い言葉は「執着」でしょうか。「好き」よりも、もっともっと粘度が高い、じっとりと湿った感情です。

なぜ私がユウヤにこれほどまでに執着したのか。それは彼の言動にも理由があったのだと思います。

ユウヤからは、何度も心が凍るような思いをさせられました。特に思い出に残っているのが、とある日、彼と外で食事をしたときの出来事です……。












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