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『HUNTER×HUNTER』に寿命を捧げた14歳のわたし

最近、HUNTER×HUNTER界隈が騒がしい。静かに、だけども確実にざわざわしています。


アニメ版のゴン役とキルア役の声優さんが、収録報告をふたり同日にツイート。なんの収録かは不明ですが、十中八九HUNTER×HUNTER関連だと思われます。(アニメか?と思われましたが、そうでなさそうです)

本誌休載は800日を超え、え?そう?昨日のことのように喜びを思い出せるけど??なんて去勢をはってみたものの、若干本誌の内容を忘れかけている自分がいます。(ごめんなさい)

産後脳に優しくなかった『HUNTER×HUNTER』


現在の休載に入る前、わたしは産後1年ちょっとたった頃でした。出産は、交通事故に例えられるほど心身ともにボロボロになります。1年が過ぎ、やっと生活は安定したけれど、体のあちこちが痛み、意識も日々ぼーっとしていました。

HUNTER×HUNTERの複雑な設定とストーリーは、文字も読めない上に思考力も低下していた産後脳には正直持て余し気味でした。

最新刊36巻を読み(発売ほやほやの36巻の続きが本誌でした)、現在描かれている、王位継承戦編の冒頭である32巻から読み返し、感覚を取り戻そうとしたけれど、脳みそが早々に閉店してしまったのです。


文字が読めない、上滑りする、全然理解できない。

世界で、銀河で、いちばんだいすきな作品を読むことができない焦りといら立ちで、どうにかなってしまいそうでした。
それでも、読む。HUNTER×HUNTERだけは絶対絶対!なにがあっても!読め!!と20年前のわたしがボロボロのわたしを突き動かしました。

休載とわたし


20年前、わたしは14歳で、人生で1番へこたれていました。
生まれてから現在までの浮き沈みをグラフに表したら、めちゃくちゃずどんとへこむ場所、それが14歳の頃です。

当時は新しい学校に通い始め、転校生のテンプレ通りうまく馴染めず、パリピっぽい集団からからかいやいたずらをうけました。学校にいきたくないけど、行かなかったら席がなくなってしまいそうで、毎日必死で通学していました。

心の灯が消えなかったのは、大好きなHUNTER×HUNTERを読めていたから。HUNTER×HUNTERは太陽であり酸素であり水であり、わたしを生かすすべてでした。

当時、天空闘技場編の真っ只中で、ジャンプの紙面に休載のお知らせが載った日、たぶんわたしは絶望して、泣きました。

ジャンプでHUNTER×HUNTERを読むことだけが、推しのキルアに会うことだけが1週間の生きる希望だった中学生の悲しみは、容易に想像してもらえるでしょう。

暇を持て余した連休に買ったジャンプをパラパラめくっていた時に見つけた、ツンツン頭の見目麗しい少年が誰かの心臓を抜き取り握り潰すという、非常にやばい回がHUNTER×HUNTERとの出会いでした。

ページを何度もめくりながら、あっという間に恋に堕ちました。こんなやばいことやっちゃう、このマンガなに?この子誰?と、心を鷲掴みにされて何度も何度も繰り返し読みました。登場人物紹介も載っていないので、誰が主人公かもわからなかったマンガの単行本を買い集め、その魅力にメリメリとのめり込んでいきました。雛鳥が初めてみたものを親鳥だと思い込むのは、こんな感じなのかもしれませんね。(?)

そうしてわたしは、ゾルディック家の三男・キルアに恋をし、末長く20年以上お慕いし続けております。蛇足ではありますが、わたしの初恋は邪眼で黒龍破で黒っぽい衣装のあの方です。

休載の一報を読んだ中学生のわたしは、HUNTER×HUNTERが読めるならいくらでも払うし、なんでもする!と母の前で泣き叫んでいたような覚えがあります。当時はSNSなどもなく、この辛さを分かちあえる友達もおらず、ただただ家族に当たり散らし、HUNTER×HUNTERが読めない世界を嘆いていたように思います。お母さんごめん。

たぶん、神様に寿命のいくら分かは勝手に捧げたかもしれません。神様もいい迷惑だったでしょう。

そんなわけで、寿命を捧げた当時のわたしからすれば、疲れてるぐらいなによ!ありがたく読め!と20年後の自分を叱責したくなったはずなのです。

あの時の、もしかしたらもう2度と読めないかもしれない。キルアに会えなくなってしまうかもしれない、という世間知らずな中学生が陥った真っ暗闇の先の見えない不安に比べれば、なんと幸せなことでしょうか。その後、幾度となく休載を迎え、私の心は図太くたくましくなりました。

最新36巻は超難解

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界隈がざわつき始めたのを機に最新36巻を改めて手にしたのはいいものの、超難解な王位継承戦編がさらに難解なのがこの巻です。セリフも多いし、新しい登場人物も多いです。それだけに、今後の展開に大切なエッセンスがいくつも描かれています。
ここで適当に読んでしまうと次がつまらないので、しっかり読むことをおすすめします。

幻影旅団が再登場しているので、旅団ファンの方にも嬉しい巻ですね。


ツェリードニヒの水見式も見所です。底知れぬ悪を内包しているツェリードニヒがどんどんクラピカに近づいてきている気がします。気持ち的には、緋の目だけ置いてどっかに行って欲しい。どうかクラピカが最後に笑ってくれますように。

歳をとるのは最強の装備


歳をとればとるほど、休載も待てるようになってしまいました。残念なことに、14歳のわたしと35歳のわたしとでは、おなじ1年でも感じ方が倍以上ちがいます。
800日を超える休載期間ですが、体感では365日ぐらい。ゆえにあと800日は余裕。余裕余裕。

愛息のために1日でも永らえないといけないこの命…もう寿命は捧げられないから。日本の片隅で、じっとその時を待っています。

産後に無理をするのは絶対NGです。産後は文字が読みにくくなる方が多いようです。

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