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AKIRA『さんをつけろよ、デコ助野郎!』(アニメ映画、1988)映画感想

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作品名:AKIRA
評価:4/5
放映日:1988/07/16
監督:大友克洋
(原作:大友克洋)

AKIRA(アニメ映画)を見たので感想を書いていきたいと思います。
前知識としては原作漫画は読んだことはなく、漫画史の歴史に残る名作であるとともに、大きな影響を与えた作品ということと、「さんをつけろよ、デコ助野郎!」(例の画像)しか知りませんでした。
正直30年以上前の作品を今更見ても楽しめるのか、と疑問に思っていたのですが、ごめんなさい。
今見ても十分に面白い映画でした。

もしまだ見たことなくて、今更見ても楽しめるか不安な人も安心なので、ぜひ見てみてください。
その際に本筋のAKIRAに関わるあれこれの他に、金田と鉄雄の二人の人となりと関係を感じながら見ていくのが個人的にオススメしたいポイントです。





以下本編感想ネタバレ注意





まず一切台詞がなく大爆発から表示されるタイトル。
酒場から長時間のバイクシーンで、説明がほぼ無い状況でも即引き込まれる演出と画面作り。
BGMから聞こえてくる「カネダー、テツオー」で!?となりつつ「ダッダッ!エーハー、エーハー」で追い打ちかけられる。
襲撃で返り討ちになったキャラがタイヤに轢かれて、グキって折れる演出が超痛そう!
その後の度胸試しから超かっこいいドリフトシーンで、一言も喋らずに既にキャラが立ってる金田が凄い。

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顔が皺々の子供に衝撃を受けてびっくり。
この自転で世界観の発達と荒廃がビンビン感じられて凄い。自分じゃ絶対行きたくない。

鉄雄たちが逮捕されて翌日、取調室で髪型直してる金田に爆笑。
ケイ初登場。しかし金田とケイの顔に区別がつかねえ……。

大佐とドクターの会話。
大佐「AKIRAのパターンとの比較は終わったのか?」
俺(AKIRAってなんだよ)

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学校荒廃しまくりだけど、教師に殴られて普通に血飛沫飛んでてドン引き。「指導ォ!指導ォ!指導ォ!指導ォ!指導ォ!指導ォ!……以上ォ!」
「「「ありがとうございました!」」」
よく見たら他はグーパンなのに最初の山形だけビンタでズルい。
そのあと階段を降りながら悪態を叫ぶのがヤンキーメンタルすぎる。

金田のバイクで逃げたら襲撃される鉄雄、振り下ろされた鉄パイプに合わせて画面転換する演出やべー。
炎越しに見える金田のバイクのステッカーの[Canon]で笑った。
乗り逃げしたくせにバイクを燃やされそうになると怒る鉄雄と、悪態ついてたのに追いついたらまっすぐ駆け寄る金田の距離感が絶妙。

このあとの一連のシーンで大佐が名言製造機すぎる。
「私の役目は信じるかどうかではない、行うかどうかだ」「我々はまず、リスクから考える」「それが軍人だ」
斜めスライドして降りていくエレベーター装置にロマンを感じる。

そのあとの最高幹部回の会議が無能の集まりにしか見えなくて酷い。

金田たちの潜入シーンのやり取りが面白い。
「そりゃ持って帰ってもいいですよ?でも手間は同じだから」って喋り方が詐欺師みたいだ。
子供三人が鉄雄を追い詰めるシーンが唐突にかなりホラー。
空中バイク登場からの期待通りバイクを奪う金田と水上ホバーしてぐるぐる回る演出に感心した。

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鉄雄暴走からの壁が円形に凹んでヒビが入ってく見慣れた描写の元祖がこの漫画と聞いて軽く感動。
金田が追いついたあとに、鉄雄が軍人ごと吹っ飛ばして、「お前もそこに居たっけなあ」と、その後無言で驚きの表情を浮かべる金田が切ない。

鉄雄を追う大佐の前に現れる最高幹部回の使者に、「撃て」「はっ!」で撃つ部下が覚悟決まりすぎてる。
隣に拳銃持ってる部下が居て、実際にその後撃たれるのに平然と撃たせる大佐のカリスマやばいな。

最初の酒場に戻ってきた鉄雄に「品薄でちょいとばかり高値なんだよ」から暗転する時点で薄っすらと結末が見えて、やっぱり死んでるおっさんがかわいそう。
「タコが丘で死んでるって?」「お前…、鉄雄だよな?」

山形のバイクに跨がって「こいつを届けてやるのさ」って台詞と、その後のバカヤロー!って叫びがつらい。

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鉄雄と操られたケイの戦闘で、地下からAKIRAを引っ張り出す作画がやべー。

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ビーム持ってきた金田が鉄雄と向かい合って「どうしたんだよ、揉め事か?」「ああ、でももう済んだんだ」ってやり取りがまるで世間話してるみたいで、そこからだんだんとヒートアップしていく声優さんの演技と演出すげえな。

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「おめえもボスになったんだろ?この瓦礫に山でよお」って煽りがキレッキレすぎる。
「さんをつけろよ、デコ助野郎!」

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金田に腹を撃たれたあと、あれ?平気?って感じで困惑してる鉄雄がちょっとかわいい。
ビームのバッテリーが切れて「汚えぞ鉄雄!素手で勝負しろ!」って台詞に「は?」ってなってる鉄雄にやっぱり根は一般人メンタルなんだなあってなる。
まあそのあと「悔しいってのがどんな気持ちかわかったかよ!」って煽り返すんだけど。

衛星兵器の光の柱の中で光の粒子が逆流する演出と、鉄雄が宇宙まで飛んでって衛星破壊する作画がまたすげえ。

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バイクでレーザー中のバッテリー充電するの凄いけど、バイク炎上したの見て笑ってる金田はひでえな!

バイクとレーザー合わせた戦闘格好いいんだけど、ガードしたあと苦しむ鉄雄に躊躇う金田と、そのあと体が暴走して金田に助けてくれっていう鉄雄が切ない。
そのあとの一旦脱出できたのに制止を振り切って助けに行く金田も。

鉄雄が暴走したあと金田を取り込んで見た過去の夢がおつらい……。

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バイクで並走する二人に、初めての出会いの記憶で、鉄雄が金田にコンプレックスを持ちつつも、心の底から親友同士だったっていうのがわかる。



アクションも世界観もいいんだけど、一番好きなのは金田と鉄雄のキャラクターと関係。
表情や仕草、声や会話の間で金田のリーダーシップがあって芯が強く、それでも根っこは優しい所。
鉄雄が金田にコンプレックスを持っていて、力を持って暴走しても根は普通の学生っぽい所。
そしてお互いに殺し合いをしていても心のそこではやっぱりお互いを親友だと思っている所。
SF部分抜きにしてもこの二人の繊細な描写だけで、シナリオとしては十分すぎる作品だと思います。

それでも昔の作品なので、世界観がだいぶわかってくると32年前から見た2020年の未来世界って作品なのに、2020年に見るとむしろ古臭さを感じる世界観に脳が混乱するのがちょっと難点。でもこの不思議な感覚も嫌いじゃないかも。

ここまでべた褒めしておいて満点じゃないのは、心に突き刺さる衝撃がなかったから。
ただし作品が悪いんじゃなくて、いろんな作品に影響を与えたせいで、30年で多くの要素が陳腐化して感じられてしまったから。
逆に言えばそれだけ偉大な作品ということで、個人の嗜好と主観で評価したら4点、客観で評価すれば満点な名作だと思います。

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