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【声劇台本】迅雷の最適解



「俺の、最適解は」

機械技術が発達した、政府「ネムズ」の管轄都市にて、
生体兵器「TI(ティーアイ)」の暴走が発生する。
人であり機械でもあるサイボーグ「迅雷」は、全てが機械で出来たアンドロイド「ニテラ」、「アングイス」と共に生体兵器討伐へ向かう

5人劇台本(男性2人 女性3人)
50~60分程度

・性別不問
・展開を崩さない程度のアドリブは可
・兼ね役は他の方に代わっていただいてもOK


キャラ紹介

迅雷(じんらい) 男

政府「ネムズ」に造られたサイボーグ半分人間
半分機械金髪に青い瞳。
首から下は機械の体無欲でクール
必要な事以外は情報を得ないので、常識にうといところがある
アンドロイドを同族と思っていて、仲間意識が強い


ニテラ 女

政府「ネムズ」に造られたアンドロイド
白髪のショートヘア。
黒いベストに赤いスカート感情豊かで、茶目っ気を感じられる性格
最近はコーヒーにハマっている

ヒナミ(ニテラ役、兼ね役か 他の方でもOK)
とある集落に住んでいる少女
自由気ままな性格
空を飛べる能力を持っている
迅雷のことを先輩と呼ぶ

アングイス 女

政府「ネムズ」に造られたアンドロイド
一人称が「僕」だが性別は女緑の長髪。
黒いブレザーと黒パン。男性的な服装
気楽なリアリスト
携帯ゲームが趣味
迅雷のことはパイセンと呼ぶ

ハル(アングイス役 兼ね役かほかの方でもOK)
1話と8話で登場
とある集落に住んでいる少年
ヒナミと幼馴染で、何処にでもいく彼女のことを
危なっかしく心配している

カツラギ

政府「ネムズ」に所属する女性
迅雷達の指揮官黒髪のショートヘア。
全身スーツ。白シャツに黒ネクタイ
厳格で、機械で出来た迅雷たちに対して道具のように接する部分がある
女性として書いていますが、性転換OKです

ラオ

政府「ネムズ」の研究者
白いコートを羽織っている
サイボーグやアンドロイドなどの研究開発にかかわった青年
好奇心旺盛で大人びた印象
生体兵器TIに関して知識があり、今回カツラギと共に迅雷たちのサポートにまわることになる

ヒデじい様の
声劇台本置き場にも置いてあります

シナリオ本文

0:夕方、のどかな村から離れ、人のいない丘へ来る
 
ハル:待ってよ、ヒナミ
 
ヒナミ:遅いよー、ハル
 
ハル:ヒナミ、そんなに走ったら……
 
ヒナミ:もう、ハルったら、足遅いんだから
 
ハル:ヒナミが早いんだろ……身軽(みがる)というかさ
 
ヒナミ:遅いものは遅いんですー。もっと走るの頑張ったら?
 
ハル:もう……
 
ヒナミ:ふふふっ
 
ハル:……それで、こんな丘の方まで来て、何かあるの?
 
ヒナミ:あ、そこ聞いちゃう?
 
ハル:村から結構歩いてきたよ? 夜になったら辺りが暗くなって、帰れなくなっちゃうよ
 
ヒナミ:大丈夫、それまでに帰るから
 
ハル:そんなこと言って……この前だって、皆で川まで遊びに行った時も、日が落ちてたじゃないか
 
ヒナミ:そうだったっけ?
 
ハル:そうだよ
 
ヒナミ:なんか楽しくって、忘れちゃった。そんなに暗かったかな?
 
ハル:あれだけ暗かったら誰でも分かるよ?
 
ヒナミ:それでもハルは一緒に遊んでくれたでしょ?
 
ハル:ほっといたら、ヒナミずっと遊んでるだろ
 
ヒナミ:心配してくれるの? すごい嬉しい
 
ハル:茶化すなよ……。それで、ここに何しに来たの?
 
ヒナミ:そうそう。こっちこっち
 
ハル:こっちって……! この先崖だよ!?危ないよ!
 
ヒナミ:危なくないよ?
 
ハル:落ちちゃったら終わりじゃないか!
 
ヒナミ:終わりじゃないよ?それっ。
 
0:ヒナミが崖から飛び降りる
 
ハル:うわっ!?ヒナミ!!!
 
ハル:えっ……! あっ!
 
ヒナミ:どう?ハル?
 
ハル:すごい…飛んでる
 
0:ヒナミは空を回った後、ハルの所へ戻ってくる
 
ヒナミ:っと……。もう、分かってること言わないでよ。これ、結構練習したんだから
 
ハル:なんで飛べるの!?
 
ヒナミ:しっ
 
ハル:……っ?
 
ヒナミ:村の人達には、秘密にしてる
 
ヒナミ:多分、これ知っちゃったら、あたし、どうなるか分かんないし。
 
ハル:……ヒナミ?
 
ヒナミ:ある日ね、ホント自覚が無かったの。少し、高いところから足を滑らせそうになって……気づいたら、宙に浮いてた。それで、村の皆にバレない所へ行って、本格的に試してみたら、飛べちゃった。えへへ。
 
ハル:空を飛ぶ……そういえば
 
ヒナミ:何?
 
ハル:前に聞いたことがある。昔話で……えっと、何だっけ
 
ヒナミ:白い大樹の話?
 
ハル:そう。昔に大きな白い大樹があって
 
ヒナミ:その大樹は、元は普通の少女で、空を飛ぶ能力があった
 
ハル:…話の通りじゃないか
 
ヒナミ:私ね。その伝説の大樹さんの、末裔(まつえい)みたい
 
ハル:っ!
 
ヒナミ:ふふ
 
ヒナミ:……せっかくだから、ハルに見せておきたかったんだ
 
ハル:…
 
ヒナミ:顔、暗っ。…はぁ、あたしの手、触れて
 
ハル:え、え!? ってうおっ!?
 
ヒナミ:そーれっ!
 
0:ハルと手を繋いで、ヒナミと一緒に空を飛ぶ
 
ハル:うわああああああ!
 
ヒナミ:あははははははっ!
 
ハル:お、落ちる……落ちるぅぅぅ??!
 
ヒナミ:手を離したら落ちるかもね
 
ハル:辞めてよ?!
 
0:
 
0:
 
ハル:はぁ……はぁ……怖かったぁ
 
ヒナミ:あ?楽しかったあ! ハルってこういうの苦手?
 
ハル:苦手も何も、空なんて飛んだことないし……。ビックリするよ……。
 
ヒナミ:あはははっ。……でも、ありがとね。ハル。
 
ハル:……。村の人達には、秘密にしておく
 
ヒナミ:……白い大樹は、元々は普通の女の子なんだって
 
ヒナミ:その子が、大樹になって、最後に毒をまいて、世界を滅ぼしちゃった
 
ヒナミ:その言い伝えも、知ってるよね?
 
ハル:……。
 
ヒナミ:ハル。
 
ハル:何?
 
ヒナミ:……これからも、ずっと居てくれる?
 
ハル:えっ?
 
ヒナミ:言葉の通りよ
 
ハル:もちろん、ずっと居るよ!
 
ヒナミ:ありがと。すごく嬉しい。私も、ハルと居て、ずっと楽しくて、
 
ヒナミ:辛い時も、悲しい時も、ハルは私の事を励ましてくれた。
 
ハル:……ヒナミ
 
ヒナミ:……あっ。もう日が暮れるね
 
ハル:……っ、そうだね
 
ヒナミ:戻ろっか
 
ハル:……うん……。
 
0:ヒナミが先に帰ろうとする
 
ハル: 
 
ハル:……ヒナミっ!
 
ヒナミ:?
 
ハル:……僕は、ずっと
 
ハル:ヒナミの傍に、ずっと居るし、離れないから!!
 
ヒナミ:っ……。
 
ヒナミ:…ありがと!ハル!!
 
迅雷:……
 
0:目が覚めると、迅雷の目の前には、無機質な部屋が広がっていた
 
ニテラ:あ、起きた
 
ニテラ:おっはよーございます。先輩
 
迅雷:なんだ、ニテラか
 
ニテラ:いい寝顔してたのに、起きた途端に台無しですね
 
迅雷:サイボーグに求めるな、そんなもの
 
ニテラ:えー
 
ニテラ:せんぱい、私達の中でいちばん人間に近いのに、人間じゃない反応してどうするんですか
 
迅雷:反応をしたところで、メリットはないし、戦闘能力が上昇するわけでもない
 
ニテラ:うわ~。かった。鋼のように固すぎますよ、迅雷先輩
 
迅雷:アンドロイドも似たようなものだろ
 
ニテラ:人間を真似てるだけで、生まれも育ちも全部機械です
 
アングイス:戦えればどうでもいいじゃん、そんなこと
 
0:携帯ゲームをしながらアングイスはそういった
 
アングイス:僕たちはアンドロイドなんだから、無駄じゃん、考えたところで
 
ニテラ:無駄なんてことないよ、アング
 
ニテラ:機械でも、命は命
 
ニテラ:ここにある大切なものなの、こういうの
 
アングイス:ロマンチックだねー、二テラは
 
アングイス:アンドロイドとは思えないくらい、感情豊かな発言で
 
迅雷:…確かに。自分の生命の重要さを認識すれば、生存率が高くなる検索結果はあるな
 
アングイス:出た…
 
ニテラ:はい!今日も検索大先輩、絶好調!
 
迅雷:馬鹿にしていると分析した
 
アングイス:分析って…いやそこは気楽にいこうよ
 
迅雷:気楽が俺には理解ができない
 
アングイス:…あーなんでだろ、機械なのにすっごい息が詰まる。
 
ニテラ:ぶっ。アングに呆れられてるじゃないですか~、先輩!
 
ニテラ:「俺の名前は迅雷。今日も検索を導き出すサイボーグなのであーる」
 
迅雷:誰だそれは
 
ニテラ:先輩の真似
 
アングイス:ニテラ、流石に草生えるよ、それ
 
迅雷:それは真似ではなく、改変というんだ…少しは検索しろ
 
ニテラ:はい!検索大先輩からおしかり頂きましたー!ありがとうございます!
 
アングイス:パイセンほんと知らなすぎ
 
迅雷:知ったところで何になる
 
アングイス:楽しい事、知っておいて損ないけど? 戦闘データより価値あるよ、ぶっちゃけいうと
 
迅雷:……よくわからん
 
ニテラ:ほんとーに、アンドロイドより機械チックですよね、先輩
 
迅雷:それが最適解だ
 
迅雷:人間のそういった感情は、時に戦闘において障害となる
 
アングイス:…ま、そこは分かんない事、ないけど
 
アングイス:ゲームだって、いちいちキレてたら、話になんないし
 
ニテラ:アングはキレたことあるの? それこそ折っちゃうくらい
 
アングイス:ただの一度も。だって、バカみたいじゃん。こんなの暇つぶしなんだからさ
 
アングイス:戦闘だって一緒だよ
 
迅雷:戦闘は暇つぶしじゃない
 
アングイス:暇つぶししてるのに怒ったら本末転倒でしょ?
 
ニテラ:たまにはアングの怒るところ、見たいと思うけど
 
アングイス:見せ物じゃないし
 
ニテラ:先輩は、意外と怒ってる時、ありますよね
 
迅雷:どこがだ
 
ニテラ:ほら、カツラギさんとかに対して
 
アングイス:あー、確かに
 
ニテラ:機械のこと馬鹿にされて突っかかってるじゃないですか
 
迅雷:……
 
迅雷:卑下(ひげ)は、戦闘において重要じゃない
 
ニテラ:隠すの下手ですね、バレバレです
 
ニテラ:やっぱり人間なんですね、先輩も
 
アングイス:パイセンも少しは趣味の一つや二つ持てば、どうでもよくなるのに
 
迅雷:趣味を持ったところで、何も変わらない、俺は
 
アングイス:…かったいやつ
 
ニテラ:あ、趣味といえば!
 
0:ニテラは部屋から出て、しばらくすると戻ってくる
 
ニテラ:これ!
 
迅雷:…なんだその道具は
 
アングイス:予想通り
 
ニテラ:コーヒーですよ! 山ごもり老人もびっくりの検索大先輩様!
 
迅雷:余計なものは検索しないだけだ。それで?
 
ニテラ:最近ハマってるんですよーこれ
 
ニテラ:アングも飲む?
 
アングイス:どっちでも
 
ニテラ:じゃあ確定で
 
0:ニテラはその場でコーヒーを淹れ、迅雷とアングイスに出す
 
ニテラ:はい、どーぞ
 
アングイス:…豆、変えた?
 
ニテラ:分かる? この前とは別のやつ!
 
アングイス:前のほうが好きかな
 
ニテラ:えー、せっかく変えたのにー
 
迅雷:……苦いな
 
ニテラ:わぁ、先輩まで!
 
迅雷:……だが、……俺の味覚機能からすれば……うまい、な
 
迅雷:これが、コーヒー、か
 
アングイス:生まれたての赤ん坊みたいな発言
 
ニテラ:そうですよそう! 先輩も分かってくれるんですね!
 
ニテラ:じゃあ、今度は前の豆で……
 
0:そこで、通信が入る
 
カツラギ:聞こえるか?
 
迅雷:こちら迅雷。…カツラギ。なんだ
 
カツラギ:緊急任務が入った。第3地区の2番通りに集合しろ
 
カツラギ:以上
 
迅雷:…
 
迅雷:…行くぞ
 
 
 
迅雷:…
 
アングイス:……でかい
 
ニテラ:こんな遠くからでも見えるんだね
 
カツラギ:聞こえるか?
 
0:迅雷たちの耳から、カツラギの通信音声が響く
 
カツラギ:簡易的に述べる
 
カツラギ:第3地区の研究所で爆発が起こった後、お前達が見えているあの巨大な樹……生物が現れた
 
カツラギ:コードネーム「TI(ティーアイ)」。我々の駆除対象だ
 
カツラギ:……ラオ
 
ラオ:そんなに睨まないでくれたまえ、カツラギ君
 
0:カツラギの音声の他に、もう一人の男性の声が響いた
 
ラオ:久しぶりだね、みんな
 
カツラギ:あれは、ラオが研究所で作っていた兵器の一つだ
 
カツラギ:研究所を破壊した後、奴が地上から伸び出るように現れた
 
カツラギ:…私もこの目で見るまでは、ああいった生物兵器だとは知らなかった
 
アングイス:……つまり、樹の形の、生体兵器ってこと?
 
ラオ:その通りだよ。アングイス君
 
ラオ:厳重に保管していたんだけどね
 
カツラギ:責任追及は免れないぞ。少しでも上層部からお咎(とが)めをもらいたくなければ、情報提供をくまなく頼む
 
ラオ:……TIは、幹の中にコアがある。ただ、奴はデクノボウと呼ばれる人形を従えていてね
 
ニテラ:人形? アンドロイドではなく?
 
ラオ:いいや。TI自身が生み出している生命体だ
 
ニテラ:生命体……
 
アングイス:科学の進歩ってすごいね
 
ラオ:はは、アングイス君。研究所で造られたばかりの頃より、皮肉が板についているね
 
アングイス:それはどうも
 
カツラギ:お前達は、TIの元に向かいつつ、現れたデクノボウを駆除しろ
 
ニテラ:他の人たちは?
 
カツラギ:避難は完了している
 
カツラギ:先行部隊としてアンドロイドを向かわせた
 
迅雷:……ターゲット情報、検索……。これか。…………なるほどな
 
ラオ:早速検索をかけてくれているとは。一応、現時点でのTIとデクノボウのデータは記載させてもらったが、意外と仕事が早いじゃないか。迅雷君
 
迅雷:俺が信用出来ないか?
 
カツラギ:当たり前だ
 
迅雷:それは、是非とも結果を残したいところだな
 
カツラギ:まるで自分の立場が同等かのような言い方じゃないか。特殊試験体サイボーグ君
 
ラオ:正式名称は辞めたまえ。だからコードーネームを彼に与えているというのに
 
アングイス:……結局さ。これってあんたらの汚点ってことでしょ
 
カツラギ:…貴様
 
ニテラ:アングイス
 
アングイス:っ
 
ニテラ:今は喧嘩するところじゃないよ
 
ニテラ:目の前のことを見よう
 
ニテラ:終わったら、また私達の時間が戻るんだからさ
 
アングイス:…ニテラ
 
迅雷:…お前たち「ネムズ」の犬になった覚えはない。任務をこなすだけだ
 
カツラギ:それこそ、その任務を命じたのは我々、世界管理機関「ネムズ」だ
 
カツラギ:機械だらけの君に、任務というものを与えたのはどこの誰になるんだろうな?
 
迅雷:……
 
ラオ:いいじゃないか、カツラギ君
 
ラオ:彼自身が、自分の考えで動くことも大切だよ
 
カツラギ:サイボーグは信用できない。自分の立場をわきまえろ、ラオ
 
ラオ:おやおや、それは手厳しい。カタブツだねぇ
 
カツラギ:…迅雷。分かったら任務をこなせ。今、お前達の目に見えるものは、我々の命運を分けるものだ
 
カツラギ:ここであの化物を止めなければ、ネムズは壊滅的な被害を受ける
 
迅雷:そんなに出世がしたいのか? それとも本音か?
 
ニテラ:先輩
 
迅雷:……。すまない。任務に関係のない事項だった
 
ニテラ:すぐに頭を冷やせるところも好きですよ、先輩
 
カツラギ:機械らしく、まともな思考を持っているらしいな、ニテラ
 
ニテラ:カツラギさんの指導には、助けられていますから
 
ニテラ:アンドロイドとの訓練の時も、的確じゃないですか、言う事
 
ニテラ:頼りにしています
 
カツラギ:…
 
カツラギ:とにかく、目的は一つだ
 
カツラギ:これより、1300(ひとさんまるまる)
 
カツラギ:TI討伐作戦を開始する
 
ラオ:さてさて。どうなることやら
 
カツラギ:お前の実験ではないぞ、これは
 
ラオ:実験体がどういう成果をもたらすのは、研究者ならだれしも気になるだろう
 
ラオ:君も一度、その堅物のマスクをとって、没頭してみたらどうだ?
 
カツラギ:肩が凝りそうで勘弁願うよ
 
ラオ:…迅雷君。彼が持っている神器(じんぎ)は、オリジナルではない。かつて昔に存在していた、古代の神器のその欠片……それを元に新しく作り上げた発明品だ
 
ラオ:神器の中に含まれる「魔素」が、時に電力となり、風力となり、使用者が持つ感情の流れに伴って力が発揮される
 
ラオ:アンドロイドの中身も、同じように「魔素」で構成されているが、機械の個体と武器では、また扱いが違ってくる
 
カツラギ:サイボーグ、アンドロイド、そしてあの神器(じんぎ)の事は知っているが、TIの事に関しては、お前からしか情報筋がない
 
カツラギ:責任を果たせよ
 
ラオ:仕事はするさ
 
0:
 
0:
 
ニテラ:こうやって3人で動いていると、前の任務を思い出しますね
 
ニテラ:最後は、いつでしたっけ……そう
 
アングイス:前の探索任務?
 
ニテラ:そうそう、それ
 
アングイス:パイセン暇そうだったもんな
 
アングイス:まー分からないこと、ないけど
 
迅雷:…
 
0:
 
0:
 
0:一週間前
 
ニテラ:これと、これ……でっと
 
迅雷:…
 
アングイス:あのさ。パイセン、仕事してくれない?
 
迅雷:…3人も必要か、この任務?
 
アングイス:暇つぶしには最適じゃない?
 
アングイス:それに、僕たちがこれで働けば働くほど、もっと暇になりそうだし
 
ニテラ:「魔素」の制御装置の生産量を増やすために、砂漠なり廃墟なりにある、鉄や鉱石の塊をとってくる……不思議ですね。こんな無機物一つで、私達と同じ機械人形が生まれるんですから
 
アングイス:何と戦おうとしてるんだろうね、政府って
 
ニテラ:西の都市にあるカサドラだったっけ? そこを制圧して管理するために、準備しているのは聞いたことあるわね
 
アングイス:でも、相手は人間ばっかりなのに、そんなに必要ないでしょ
 
ニテラ:それとも、ほら、前にラオさんが言っていた…昔の化物の話
 
アングイス:ティリスト…イレス…だっけ?
 
ニテラ:正解、アングえらいえらい
 
アングイス:と、唐突になでるなよ
 
ニテラ:それと同じ化物が現れてもいいように、アンドロイドを今から量産している、と私は推理してみます
 
アングイス:なにそれ、おとぎ話にびびってるってこと?
 
ニテラ:でも、ネムズってその、ティリスト・イレスとの戦いがきっかけで生まれた組織なんでしょ? それだったら、分からない事はない気もするけど
 
アングイス:コスト使いすぎっしょ
 
アングイス:ヒヤヒヤして手を出しすぎると、もっと追い込まれるじゃん
 
ニテラ:ゲームも同じっていいたいのね?
 
アングイス:良く分かっていることで
 
迅雷:仕事を続けるぞ
 
アングイス:あ、パイセン。僕らがだべってるのを逆手にとって、自分仕事してるアピールしようとしてない?
 
迅雷:お前達が話し込んでいたら、いつまでたってもまとまらないだけだ
 
ニテラ:厄介者扱いしないでくださいよ~
 
アングイス:さっきまで仕事してなかったのはどっちなんだか
 
ニテラ:アングも結構サボってる時あるけどねー
 
アングイス:手を抜いて仕事したほうがラクじゃん、実際
 
アングイス:どうせ、生かされてるだけの僕らなんだから
 
ニテラ:…それは、ちょっとどうかと思うけど
 
ニテラ:活かされてるなら、活かされてるなりにもっと、こうワンダフルにふるまってもいいのに
 
アングイス:それはニテラじゃん
 
アングイス:僕はそういうくだらないことはしないの
 
ニテラ:くだらないって、そういう所は迅雷先輩と同じなのね
 
アングイス:別に、パイセンと一緒じゃないし
 
アングイス:パイセンはめんどくさいだけ
 
ニテラ:アング、最近、先輩に対してちょっとツンケンしてるよね、なんかあった?
 
アングイス:そう? 勘違いじゃない?
 
ニテラ:ゲームしてくれないから?
 
アングイス:…っ。は、はぁ?
 
ニテラ:図星っぽいね~
 
迅雷:……
 
ニテラ:迅雷先輩は私達の中で一番年上なんだから、下の面倒は見てくれないと、困りますよ~プンプン
 
アングイス:…いや、別に困らないし
 
迅雷:…あまり、遊ぶという感覚が分からない
 
迅雷:俺と遊んだところで、アングイスにメリットはないだろう
 
アングイス:……そういうことじゃ、ないんだけどな
 
迅雷:?
 
アングイス:…何でもない
 
アングイス:さ、仕事仕事
 
0:
 
0:
 
迅雷:……そういえば、そうだったな
 
迅雷:……アング
 
アングイス:…?
 
迅雷:……この任務が終わったら、やるか
 
アングイス:…な、なんだよ急に
 
ニテラ:よし! じゃあ、3人でがんばろ!
 
迅雷:とっとと行くぞ
 
ニテラ:はーい!
 
ニテラ:良かったね、アング
 
アングイス:うるさい
 
0:迅雷たちは第3地区を進む
 
迅雷:……建物の被害、およそ60%か
 
ニテラ:…
 
アングイス:ニテラ?
 
ニテラ:…いいものじゃないね、こういうの
 
ニテラ:アングイスは、どう?
 
アングイス:…さぁ。よくわからない
 
ニテラ:そう、よね。機械は壊れるだけ、だもんね
 
ニテラ:…怖いなぁ、それって
 
迅雷:壊れはしない
 
アングイス:パイセン?
 
迅雷:俺の仲間である以上、それはない
 
ニテラ:……先輩
 
0:
 
ラオ:熱いねぇ…
 
カツラギ:随分と楽しそうだな
 
ラオ:それもそうさ、迅雷君も、僕が造ったんだ
 
カツラギ:その傑作たるゆえん、実力を見れるといいがな
 
ラオ:…彼の持つ「雷神剣(らいじんけん)」は、感情に対して反応する
 
カツラギ:…適応者、と呼んでいたな
 
ラオ:そう。あれを使うには、機械であることと、人間であることが条件
 
ラオ:彼は、アンドロイド以上の結果をもたらすだろう
 
カツラギ:他の二人は役に立たないと
 
ラオ:君から見れば、どうだね?
 
カツラギ:アンドロイドとの訓練データからみても、戦闘能力として、アングイスは上々だ
 
カツラギ:ニテラに関しては、少々心配な部分はあるが…サポートとしては適切な能力値だ
 
ラオ:……評価ができていることで
 
0:
 
迅雷:……?
 
アングイス:……あれって?
 
ニテラ:っ!
 
迅雷:他のアンドロイド…!
 
カツラギ:……先発部隊
 
カツラギ:君たちより先に向かわせた、アンドロイドだ
 
ラオ:これはこれは
 
ラオ:四肢(しし)をもぎ取られているな
 
ラオ:デクノボウは思っている以上に狂暴らしい
 
ニテラ:……っ
 
迅雷:大丈夫か?
 
ニテラ:…あはは、ごめん。先輩
 
ニテラ:震えちゃってるよ、私
 
アングイス:……震える事なんてないよ
 
アングイス:…こいつらだって、別に恐怖を感じていない
 
アングイス:…ただ、壊れただけなんだから
 
迅雷:アングイス
 
アングイス:……ごめん
 
0:
 
ラオ:ニテラが震えるか、無理もない
 
ラオ:感情を植え付けているアンドロイドだからね
 
カツラギ:……特別に感情をインストールした個体
 
カツラギ:……人間のようだな
 
ラオ:あれ? おかしいな
 
ラオ:機械嫌いのはずじゃなかったのかい?
 
カツラギ:…彼女がああまで気持ちが変わるとは思っていなかったさ
 
カツラギ:普段は皮を被ったような笑顔だったが、私の見間違いだったか
 
0:
 
ニテラ:平気なのすごいね、アングイス
 
ニテラ:機械は機械って考えてみようって思ったけど、やっぱり無理だ、私は
 
アングイス:…ニテラは、ニテラだよ
 
ニテラ:ううん、機械は、機械。あんなにガラクタのように積まれているのをみて、改めて思った
 
ニテラ:結局、私もニテラという名前がついているだけの存在、なのかもね
 
アングイス:…いや、それは
 
迅雷:恐怖心は、生存本能には欠かせない
 
迅雷:それがあることで、生き延びようとする
 
ニテラ:…?
 
アングイス:パイセン…
 
迅雷:実際に、生存する確率はあがるデータはある
 
迅雷:ただの検索結果だ
 
ニテラ:はは
 
ニテラ:さすが、検索大先輩。頼りになります
 
迅雷:…行くぞ
 
迅雷:…同胞の仇はとる
 
0:
 
カツラギ:…本当に、変わった奴だ
 
カツラギ:唯一の「人間」が混ざった機械が、アンドロイドの事を、同胞と呼ぶとは
 
ラオ:やはり……
 
ラオ:彼は、素質があるな
 
カツラギ:何?
 
ラオ:いやいや
 
ラオ:興味深くてね。彼の奥底にあるものが
 
0:
 
迅雷:…!
 
ニテラ:あれは、デクノボウ…!
 
カツラギ:各体、武器を展開しろ
 
迅雷:…戦闘モード起動
 
迅雷:戦闘バッテリ―消費予測、10%
 
ニテラ:敵行動予測、戦闘データと照合完了
 
アングイス:予測曲線の変化、5%
 
アングイス:……やれる
 
カツラギ:迅雷は前面の敵を、アングイスは両脇を片付けろ。
 
カツラギ:ニテラは二人の死角を警戒。サポートに入れ
 
ニテラ:了解!
 
迅雷:これより、攻撃を開始する
 
0:迅雷は剣を抜いた
 
迅雷:邪魔だッ!
 
アングイス:攻撃パターンは、アンドロイドの訓練と同様!
 
アングイス:とっとと片付けるっての!
 
迅雷:! 後ろ!?
 
ニテラ:除去コード 05(ぜろご)!
 
ニテラ:「ロールバッシュ」!
 
迅雷:…すまない
 
ニテラ:サポート完璧でしょ、今の動き?
 
アングイス:こっちも頼むよ、ニテラ
 
ニテラ:分かってるわ!
 
0:
 
カツラギ:…連携に問題なし。順調だ
 
ラオ:……デクノボウ
 
ラオ:ティリスト・イレスが操っていた木の人形
 
カツラギ:……古代の大樹の話か
 
ラオ:TIはそれを再現した兵器だったが、こうも似ているとはな
 
ラオ:我ながら驚きだよ
 
カツラギ:…恐ろしいものを作る
 
カツラギ:奴らを残らず消し去るにはどうすればいい
 
ラオ:それは、本体を倒さないとね。奴らは湧いて出てくるから
 
0:
 
迅雷:敵掃討、完了
 
アングイス:周囲に……敵は…っ!?
 
迅雷:……ニテラ?
 
ニテラ:……あ…
 
アングイス:!? デクノボウ…!?
 
0:ニテラの後ろで、デクノボウが腕を鋭い剣に変えて、彼女を刺していた
 
カツラギ:何!?
 
ラオ:ただ…強い個体がこうも現れるとは、思っていなかったがね。デクノボウも成長をしている、ということか
 
0:
 
迅雷:っ!!
 
ニテラ:あ……あ……ぁ
 
アングイス:…ニ、ニテラ…!
 
カツラギ:迅雷!!
 
迅雷:っ! ニテラから離れろ!!!
 
ニテラ:……っ……
 
0:迅雷は、ニテラを刺していたデクノボウをはがした
 
アングイス:……あ、あ
 
ニテラ:…ありがとう、ございます
 
アングイス:…こいつ…!
 
アングイス:…くそが!
 
アングイス:…死ね! 死ねよ! 死ねよお前!!
 
迅雷:アングイス!!
 
アングイス:っ!
 
迅雷:…デクノボウの反応は消えた
 
ニテラ:……先輩
 
ニテラ:ごめん…なさい
 
迅雷:……っ
 
ニテラ:……アング……
 
アングイス:い、嫌だ……ニテラ…そんな
 
ニテラ:は……はは
 
ニテラ:らしく…ない…よ? アング
 
0:ニテラはアングの頬に手を添えた
 
ニテラ:…せん……ぱい
 
ニテラ:…壊れるって……こんな感じ……なんですね
 
アングイス:…っ……ぁ
 
ニテラ:…まだ…みんなと
 
ニテラ:…楽しく……過ごしたかっ……
 
0:ニテラの意識が消滅し、体が人形のようにうなだれた
 
アングイス:…パイセン
 
アングイス:…ニテラの
 
アングイス:…ニテラの反応は
 
迅雷:……消えた
 
アングイス:…っ……そうだよ……消えた
 
アングイス:……ニテラは、消えて……壊れた…だけ…なんだ
 
アングイス:……っ……ぁ
 
迅雷:……
 
0:
 
カツラギ:ニテラ……
 
ラオ:はは…面白いな…
 
ラオ:彼女の死が、取り残されたサイボーグと、アンドロイドの情を刺激するか…
 
ラオ:感情のあるあの子がもたらした、面白い反応だ
 
カツラギ:…口を閉じろ、ラオ
 
ラオ:……やはり
 
ラオ:機械嫌いって嘘っぱちだね、カツラギ君
 
カツラギ:……迅雷、聞こえるか
 
0:
 
迅雷:……ああ
 
カツラギ:TIはまだ消滅していない
 
カツラギ:デクノボウは、奴を倒さない限り、無限に現れ続ける
 
迅雷:やることは変わらない
 
迅雷:…アングイス
 
アングイス:……
 
迅雷:行くぞ
 
アングイス:……了解
 
0:
 
0:
 
迅雷:……目標(ターゲット)、発見
 
アングイス:……TI
 
ラオ:見れば見るほど、大きいな。迅雷君たちの視界データを介しても、迫力は段違いだ
 
ラオ:作戦前にも言ったが、TIの幹の中に「核」がある、それを壊せば、僕たちの勝利だ
 
ラオ:TIに敗れたアンドロイドのデータも、ネムズのサーバーに随時転送している
 
ラオ:死者の遺言は引き継がないとね
 
カツラギ:TIに壊されたアンドロイドは、君たちの目然に広がっている
 
カツラギ:僅かの時間に、これだけの数が破壊された。
 
カツラギ:それに比例して、TIのデータの蓄積量も増えている。有効に使え
 
迅雷:敵行動予測再確認。雷神剣の電力チャージ開始……。
 
迅雷:ネムズからTIのデータをインストール
 
迅雷:……完了
 
迅雷:敵の攻撃パターン、分析。…予測曲線の変化率、50%
 
迅雷:損傷率、80%
 
迅雷:…最適解は既に決まっている
 
アングイス:……そっか
 
迅雷:どうした?
 
アングイス:……今になってわかったよ
 
アングイス:怒るって感覚
 
迅雷:…
 
アングイス:TIは、必ず殺すよ
 
カツラギ:迅雷、アングイス、頼むぞ
 
 
 
カツラギ:…作戦時刻1400(ひとよんまるまる)。これよりTI本体への攻撃を始める!
 
迅雷:……行くぞ、TI!
 
0:TIの蔓攻撃が飛んでくる
 
迅雷:お前の攻撃パターンは既に分析している、無駄だ!
 
アングイス:その蔓(つる)、邪魔なんだよ!
 
カツラギ:敵ダメージ予測50%! 迅雷、アングイス、その調子だ。 ペースを崩すな!
 
迅雷:TIの攻撃、おおよそ98%予測。全て正確に回避。異常は見られない。
 
迅雷:このまま行けば、奴の破壊は造作もない!!
 
ラオ:98%……素晴らしい、素晴らしい数値だ、迅雷君
 
アングイス:斬り尽くしてやる!!
 
アングイス:除去コード06(ぜろ ろく)「スケイルラージ」!
 
0:アングイスが二刀で一気にTIへ斬りこんだ
 
アングイス:はぁぁぁっ!
 
カツラギ:TIの外殻(がいかく)がはがれた…!
 
ラオ:除去コードのモーション練度も高い……アングイスも見事だね
 
アングイス:外側は破壊した! あとは核を! …?
 
カツラギ:!? 蔓(つる)を集結させた!? 
 
アングイス:…! しまっ……
 
0:アングイスが反応に遅れ、攻撃を受けてしまう
 
カツラギ:! アングイス!
 
アングイス:あっ……が…
 
迅雷:除去コード 045(ぜろ よん ご)!
 
迅雷:天雷一閃(てんらいいっせん)!
 
0:雷を纏わせた迅雷の攻撃がTIを貫き、動きが止まった
 
迅雷:アングイス…ッ!
 
アングイス:パイ…セン……
 
アングイス:…パイ…セン
 
アングイス:ミス…った…
 
迅雷:喋るな!
 
迅雷:カツラギ! アングイスの損傷度は!?
 
カツラギ:……100%を超えている
 
ラオ:あの一瞬で……攻撃予測を上回るとは……
 
ラオ:なるほど……データでは測れない領域にいる、存在という事か、TIは…
 
迅雷:……!
 
アングイス:……はは。ごめん、パイ……セン
 
アングイス:ニテラが死んで…分かった
 
アングイス:僕は、……いなくなるのが、淋(さみ)しかっただけ…なんだって
 
アングイス:その気持ちを……気まぐれに、ごまかしてた
 
迅雷:……お前
 
アングイス:こうやってみると……パイセンって……お兄さん…みたいで…
 
アングイス:機械の体なのに、あったかいな…
 
迅雷:…
 
アングイス:…そっか、僕、やっぱり…
 
アングイス:……はは
 
アングイス:欲しかったんだね…そういうのが
 
迅雷:…っ!
 
アングイス:…パイセン、嬉しかった
 
アングイス:帰ったら、ゲームしようって言ってくれて
 
アングイス:…はぁ、惜しいなぁ
 
アングイス:…一緒に、出来なくて…
 
0:アングイスの腕から力が消えた
 
迅雷:…………
 
カツラギ:アングイスの生体反応……停止
 
ラオ:ただ、アングイス君の戦闘データも保存はされた。TIには対処しやすくなった
 
迅雷:……了解
 
迅雷:戦闘データ、インストール
 
迅雷:……
 
迅雷:……完了
 
0:迅雷は、アングイスの空いた目を伏せる
 
0:自身の拳を強く握り、雷神剣に手を伸ばす
 
迅雷:あとは……TIの核を破壊するのみだ……!
 
0:そこで、TIの幹の部分から割れるような音が鳴る
 
カツラギ:なんだ……? TIの中から、何かが出てくる?
 
ラオ:クク…
 
カツラギ:油断をするな、迅雷!
 
迅雷:分かっている…!
 
迅雷:……? あれは…幹の中から……少女?
 
0:TIの幹の中から、巨大な花が出てくる。その花の中央部には、少女が居た
 
ヒナミ:ハル!
 
0: 
 
0: 
 
迅雷:っ!!!!ぐっ?!あっ……!がぁ……!
 
カツラギ:どうした! 迅雷!!
 
迅雷:なんだ……この……痛み……は!?
 
迅雷:……TIの、攻撃!? ……いや、これも……検索結果には……ない……!?
 
迅雷:俺の、頭に……何が……!?
 
迅雷:……が、があああッ!
 
カツラギ:!? 迅雷の脳に大きな……損傷ダメージ!? 致命的な欠陥はなかったはず……そのはずだ
 
カツラギ:……待て 
 
カツラギ:なんだ……これは?
 
カツラギ:迅雷の脳から……ダメージが「生まれて」いるだと?
 
ラオ:はは、ははは!
 
カツラギ:これは一体どういうことだ…ラオっ…!
 
ラオ:落ち着けよ、カツラギ君
 
カツラギ:…っ!
 
ラオ:痛いじゃないか、そんなに掴んだら
 
ラオ:僕は機械じゃないんだ、もう少し優しく扱ってほしいんだがね
 
カツラギ:状況を分かっているのか!
 
ラオ:何事にも真剣になりすぎだ
 
ラオ:そんな掴みかかってきてさぁ
 
ラオ:君のそういうところ嫌いなんだよ僕
 
カツラギ:…お前!
 
ラオ:何も考えずに従い、ぬるい檻(おり)で威勢よく生きてるその感じが
 
ラオ:古臭いんだよ、君さ
 
カツラギ:…答えろ、ラオ。…TIの核が、人間などと聞いていない!
 
ラオ:それがTIの正体だよ
 
ラオ:まぁ…無理もないか。それを知ってるのは僕と、政府の一部の上層部だけ
 
ラオ:古代に存在していた大樹…ティリスト・イレスは、元は1人の少女だった
 
ラオ:だから、その人間で出来ているのだよ
 
ラオ:あれは、ティリスト・イレスの末裔(まつえい)だ
 
カツラギ:…なに!?
 
ラオ:あれについては研究していたが、よもやその末裔(まつえい)が見つかるなどと思っていなかったからね……運命とは不思議なものだ…そして、その結末もね……はは
 
カツラギ:…なぜ、私には何も知らされて……
 
ラオ:それは君が、都合のいい道具だからだ、カツラギ君
 
ラオ:…僕と同じように
 
カツラギ:…?
 
ラオ:さて、迅雷君……君は、どうするかな?
 
0:頭が割れる感覚と、激しい感情に迅雷は襲われる
 
迅雷:……あ、あぁ、あ…………ぁぁあ……あ。
 
迅雷:ヒ、ヒナ…………ミ……?
 
迅雷:ぐっ、ああああぁぁああああああああああ!!
 
0:    
 
ヒナミ:ハル
 
0:  
 
迅雷:辞めろ……辞めろ!!
 
迅雷:その声で……その名前で、俺を呼ぶなあああっ!!
 
0:    
 
ヒナミ:ハル
 
0:  
 
迅雷:黙れ……黙れ……黙れええええええええ!
 
0:
 
ハル:……
 
ヒナミ:ハル、今日は眠たそう
 
ハル:……さすがに君が飛んでるところみたばかりだしさ
 
ヒナミ:あはは~ごめんごめん。でも、ハルに見てもらえてよかった
 
ハル:てっきり何か見つけただけかと思ってたよ
 
ヒナミ:それが実は
 
ハル:魔法のように飛べるなんて、誰も思わないでしょ
 
ヒナミ:そうよね~。
 
ハル:……
 
ヒナミ:ねぇ、ハル
 
ハル:ん?
 
ヒナミ:白い大樹の話、覚えてる?
 
ハル:うん
 
ヒナミ:……もしさ。もし、私が、その大樹になったらさ
 
ハル:ヒナミ?
 
ヒナミ:聞いて。
 
ハル:……
 
ヒナミ:白い大樹は、特殊な力を持った人間の慣れの果て
 
ヒナミ:分かるんだ、私の中に居る「化物」が、そう伝えてきてる
 
ハル:…
 
ヒナミ:……もし、自分がそうなって、村の人たちを……殺したらと思うと……体が震えちゃうんだ
 
ヒナミ:……ねぇ、どうしよう。私、もうこのまま、どこかに飛んで行って……居なくなった方がいいのかな……
 
ハル:……そんなことにはさせない
 
ヒナミ:……ハル?
 
ハル:ヒナミが化物になる未来なんて、まだ決まってない。
 
ヒナミ:でも、私は!
 
ハル:勝手に決めちゃいけない。決めてしまったら、ほんとにそうなっちゃう。だから、僕が変える
 
ヒナミ:……!
 
ハル:…ヒナミがそうならないように、助ける方法を考える。白い大樹になったとしても、そこから人間に戻る方法だってあるはずだ
 
ヒナミ:ハル……
 
ハル:僕は、必ずヒナミを救う。
 
ヒナミ:…。なんか、まるで昔のナイト様みたいだね、ハルって
 
ハル:なんでも、構わないさ
 
ハル:だから、化物になっても大丈夫。大丈夫だから。
 
ハル:絶対に、僕がヒナミを助けるから
 
ヒナミ:……うん。
 
ヒナミ:……ありがとう、ハル。
 
0:
 
ニテラ:せーんぱい
 
迅雷:なんだ?
 
ニテラ:好きです
 
迅雷:どういうことだ?
 
アングイス:ニ、ニテラ?
 
ニテラ:あ、でもあれですよ。ラブじゃなくて、ライクのほう
 
迅雷:…
 
アングイス:…そっか
 
ニテラ:あれ? どしたの?アング
 
アングイス:いや。ニテラがまた変なことを言ってるなーって
 
迅雷:変、というよりは、理解ができないことだ
 
ニテラ:えー
 
迅雷:それを言った所でどうなる?
 
ニテラ:だーかーら、そうじゃないのにぃ……ってまだ先輩には早いのかもですね
 
アングイス:……別に早くなくていいんだけど
 
ニテラ:そんなこと言ったら、先輩可哀想でしょ、アング
 
迅雷:俺の成長速度は、成人男性と変わらない
 
ニテラ:はいはいロジカルシンキングオタク~。今日も最適解ご苦労様でーす
 
アングイス:ロジカルシンキングオタクは草
 
迅雷:馬鹿にしていると分析した
 
アングイス:早速オタクぶりを発揮
 
ニテラ:馬鹿にされてるって自覚があるの、面白いですよね、先輩
 
ニテラ:でも、いつか分かりますよ
 
迅雷:「好き」という感情が、か?
 
ニテラ:はい
 
ニテラ:だから、いつでも言いますよ
 
ニテラ:私は、先輩が、好きですって
 
ニテラ:…といっても、これもインストールされた感情でしかないんだけど
 
アングイス:結局、政府が造ったデータじゃん
 
ニテラ:でも、それじゃ、つまんないよ
 
アングイス:?
 
ニテラ:私の感情でありたいじゃない
 
迅雷:私の、感情……。
 
ニテラ:確かに人から与えられた、プロットで出来た感情かもしれない。でも私は、これが好き
 
ニテラ:毎日心が躍りそうで、先輩のこといじったり、お話したり、こういう時間を楽しいと思える、この「感情」が
 
ニテラ:もちろん、私だけじゃなくて、アングも…先輩も
 
ニテラ:その感情の動きが「好き」なんです
 
迅雷:……よく、分からないな
 
ニテラ:先輩ならわかりますよ
 
ニテラ:じゃあ、先に訓練行ってますね~!
 
迅雷:…
 
アングイス:…感情なんて、分からないよ、ニテラ
 
アングイス:このゲームの中にいるキャラと変わらない
 
アングイス:…僕も、造られたキャラの一人
 
アングイス:…でも
 
迅雷:…? 
 
アングイス:……キャラクターでも…その、楽しさは、共有できるのかな、と思ったこともあって
 
アングイス:……だからさ、パイセン
 
アングイス:今度…一緒に…ゲー(ムを)
 
迅雷:(かぶせて言う)訓練の時間だ、行くぞ
 
アングイス:…。あっそ
 
0:
 
アングイス:そういうところ、変わんないね、パイセンは
 
0:
 
迅雷:…アングイス
 
0:
 
ニテラ:またコーヒー、飲みましょ、先輩
 
0:
 
迅雷:ニテラ……
 
0:
 
迅雷:俺は…お前たちを……救えなくて…
 
0:
 
0:
 
迅雷:…だから……俺は……
 
迅雷:ニテラと…アングイスを……救…って
 
迅雷:TIを……ヒナ…ミを…殺し…て…
 
迅雷:……救って……殺して
 
迅雷:……救って……殺して……
 
迅雷:だから……
 
0:
 
ヒナミ:ありがとう、ハル
 
0:
 
迅雷:が、が…ああ……あ
 
0:
 
迅雷:ああああああああああああああああっ!!!
 
0:
 
0:
 
0:
 
迅雷:……俺の
 
0:
 
0:
 
迅雷:……俺の……最適解……は
 
0:
 
迅雷:…はは……はははは……ははは!
 
0:
 
0:
 
迅雷:はははははははは!
 
ヒナミ:……ハル?
 
0:
 
カツラギ:迅雷! 
 
迅雷:……っ
 
0:迅雷は、TIの蔓(つる)による攻撃を一気に切り伏せた
 
ラオ:…ほう、一撃で!
 
0:そして、強く、機械の手が壊れるほどに、雷神剣を握る
 
0:それと同時に、迅雷の口から、笑みがこぼれおちた
 
迅雷:…はは……はははは
 
迅雷:はははははははは!! はははははははははは!!
 
カツラギ:…! 雷神剣のエネルギーが…大幅に、上昇している
 
迅雷:…「魔素」…転換!
 
迅雷:……雷神剣。電力エネルギーチャージ、開始…!
 
ラオ:そう…そうだ。それでいい!
 
ラオ:その人間としての「感情」が、雷神剣の出力を上げる…!
 
ラオ:それが君の力だよ…! 迅雷君!
 
迅雷:ははは…はは…ははは
 
迅雷:TI…
 
迅雷:…俺の
 
迅雷:俺の最適解は……
 
迅雷:貴様を…殺すことだ!!
 
迅雷:殺して……すく…って
 
迅雷:ヒナ…ミを…ころ…して…ニテラも…アングイスも…救って!
 
迅雷:だから…ヤツを…殺す!!
 
迅雷:はは……ははははは!
 
迅雷:ははははははっ!!!!!
 
カツラギ:出力が規定値を…
 
カツラギ:……雷神剣…これが、神器(じんぎ)の力
 
ラオ:…この力、クク
 
ラオ:古代のナイトに、強大な実力を持っている人間がいると聞いたことがあるが
 
ラオ:まるで、そのナイトのようだ
 
0:
 
迅雷:チャージスロット、リミッター解除!
 
迅雷:雷神剣、フルチャージ!
 
迅雷:電力エネルギーフル解放!
 
迅雷:殺す……殺す……!
 
迅雷:殺して……救って…殺してやる! 
 
迅雷:TI……!貴様を……殺す!!
 
迅雷:除去コード111(イチ イチ イチ)!!
 
迅雷:雷極刃覇衝(らいごくじんはしょう)!!
 
迅雷:あああアあアアアああああアあああああああああっッ!!!!
 
0:迅雷は大きく雷神剣をふるった。
 
0:空から降り注ぐ「雷」が落ちるように、TIが縦に切り裂かれた
 
0:雷鳴が、辺りに響き渡る
 
0:
 
カツラギ:…終わった、のか
 
ラオ:…見てみろ
 
ラオ:…TIは見事に、粉々だ。素晴らしい
 
カツラギ:…
 
0:
 
0:ふわり、ふわりと
 
0:上半身が破ける、宙に浮いた少女は、涙を流しながら、迅雷を見た
 
ヒナミ:ハ…ル……
 
0:少女は砂のように消え、TIは崩れていった
 
0:
 
0:迅雷は笑う
 
0:笑った後、彼は頭を抱え、嗚咽(おえつ)を漏らした。
 
迅雷:は、ははは…ははっ、はは、あ……あっ……あ、ぁぁ…ああ…あ…ぁ……ぁぁ
 
0: 
 
カツラギ:……
 
迅雷:…カツラギ
 
迅雷:聞きたいことがある
 
カツラギ:…なんだ?
 
迅雷:……俺は、誰なんだ
 
迅雷:ハルとは、なんだ
 
カツラギ:…私にも、分からない
 
迅雷:なら、この感覚はなんだ??
 
迅雷:敵は倒した
 
迅雷:ニテラや、アングイス。同胞の仇はうった……なのに…なのに…
 
迅雷:……最適解じゃない
 
迅雷:最適解じゃないと、俺の頭が否定してくるんだよ
 
迅雷:もう気持ち悪くて、仕方がないんだ
 
ラオ:君は、街を救った英雄さ
 
ラオ:その事実は覆らない
 
ラオ:そうだろう、カツラギ君
 
カツラギ:…迅雷
 
カツラギ:この件に関しては、まだ不透明なことが多い
 
カツラギ:ただ、まずは戻ってこい
 
カツラギ:メンテナンスが必要だろう
 
迅雷:…了解した
 
0:
 
0:数時間後
 
0:ネムズの政府本拠地から離れた街の路地
 
カツラギ:…
 
ラオ:おや、カツラギ君
 
ラオ:呼び出しておいて銃を向けるなんて…何のつもりだい?
 
ラオ:それとも、排除の命令でも下ったかな?
 
カツラギ:あれは、なんだ?
 
ラオ:なんだと思う?
 
カツラギ:…迅雷のあの様子は、普通じゃない
 
カツラギ:TIの中に居た少女と、何らかの関係がある
 
カツラギ:お前は、それを分かっていて、迅雷を作った。違うか?
 
ラオ:…僕は
 
ラオ:盗られただけだ
 
カツラギ:何?
 
ラオ:その結末が、あれだったということさ
 
ラオ:でも、見事なものだった。僕があれを造ったと思うと、心地のいい感覚を覚える
 
カツラギ:その過程を詳しく聞きたいところだ、ラオ
 
カツラギ:ただ、同行しないのあれば、排除するしかない。それが命令だ
 
ラオ:飼われているね、君は
 
カツラギ:何度でも言え
 
ラオ:どうとも思わないのかい? ネムズに対して?
 
カツラギ:……
 
カツラギ:お前にそれを答えたところで、何もない
 
ラオ:本当に堅物だな、君は。まるで機械のようで
 
ラオ:つまらないよ
 
カツラギ:…それで、どうするんだ?
 
ラオ:よほど疑われているようだね、僕は
 
0:ラオが宙から、何かレーザーのようなものを放った
 
カツラギ:っ!?
 
0:カツラギは物陰に隠れ、もう一度銃を向けようとしたが、ラオはいなかった
 
カツラギ:…逃げられたか…
 
0:2ヶ月後
 
迅雷:……
 
カツラギ:調子はどうだ?
 
迅雷:視界良好。魔素の転換装置、および電力エネルギーに問題はない
 
カツラギ:よし
 
迅雷:…
 
カツラギ:そっちの傷は癒えたか?
 
迅雷:もう二か月前の話だ
 
迅雷:それに俺は、サイボーグだ
 
カツラギ:それでも
 
カツラギ:お前には人間の部分がある、そうだろ
 
迅雷:…随分丸くなったな、カツラギ
 
カツラギ:いや…そもそも丸かったのかもな
 
迅雷:?
 
カツラギ:誰かを失うことを恐れて、私は壁を作った
 
カツラギ:これ以上、失いたくはない。その気持ちが、私を固くしてしまった
 
カツラギ:必要以上に干渉してしまえば、事を仕損じてしまうと、長らく思っていたのかもな…
 
カツラギ:大切なものが近くにある時に限って気づかない
 
カツラギ:鈍感な人間だよ、私は
 
迅雷:……
 
迅雷:それも、カツラギのいい部分だと分析する
 
カツラギ:分析ではなくて、慰(なぐさ)めじゃないか? それは
 
カツラギ:人間らしいことをするな、サイボーグ
 
カツラギ:…これから、お前には西にある都市カサドラへ向かってもらう
 
カツラギ:目標は、ラオの排除
 
カツラギ:ネムズからの命令だ
 
迅雷:……ラオ
 
迅雷:……TIを作り出したのも、俺を作ったのも、奴だ
 
カツラギ:2か月前の討伐戦で終わりではない、ということだ
 
カツラギ:ラオの足取りはカサドラだと掴めているが、都市の何処にいるかはわからない
 
カツラギ:…本当は奴を掴まえて聞き出したいところだが、政府が排除と判断した以上、それに従わざるをえない
 
カツラギ:…また、今回の任務に関しては、お前に全ての行動権をゆだねる
 
カツラギ:必要最低限の報告のみでとどめろ
 
迅雷:……了解した
 
0:ふと、迅雷は自分を手を見やった
 
迅雷:…
 
カツラギ:どうした?
 
迅雷:…TIを斬ってから、手が震えるようになった。それだけの事だ
 
カツラギ:…「政府の犬になった覚えはない」といったのは、どこのだれかね?
 
迅雷:っ?
 
カツラギ:君が野生の動物なら、震える前に、人間へ牙をむく
 
カツラギ:いや、昔に存在していた、魔物に例えてもいいのかもしれないな
 
迅雷:……俺は機械だ
 
迅雷:野生の動物ではない
 
カツラギ:その口のきき方が出来れば、問題はない
 
カツラギ:いつものように、私に突っかかる心意気があれば、今回の任務も問題はない
 
カツラギ:お前なりの答えは、おそらく見つかる
 
迅雷:……答えといえば、ラオの研究所から何か見つかったのか?
 
カツラギ:いや、データベースはひととおり洗ったが消されている
 
カツラギ:復元作業にとりかかっているが、まだまだ時間はかかる
 
迅雷:そうか
 
迅雷:……俺のミスで、ニテラも、アングイスも、失った
 
カツラギ:…デクノボウにしろ、TIにしろ、予想を上回るものだった。未知は常に、我々を凌駕(りょうが)してくる
 
カツラギ:…それに対応できなかった私の失態だ
 
カツラギ:お前が責任を負う必要はない
 
迅雷:……
 
カツラギ:…飛行機能はどうだ? 重たいか?
 
迅雷:……いや、問題ない
 
カツラギ:お前からその機能をつけたいと聞いた時は驚いた
 
カツラギ:ニテラやアングイスが聞けば、なんというだろうな
 
迅雷:…カサドラについて検索をかけたが
 
迅雷:どうにも、殺し屋など、裏社会の人間が多いと聞いた
 
迅雷:ネムズの都市よりは危険度は上だと、容易に推測できる
 
カツラギ:カサドラか…
 
カツラギ:…ネムズ管轄の都市とは違い、アンドロイド技術は発展していない、時代が遅れている都市だ
 
カツラギ:それでも、警戒はおこたるな
 
迅雷:…これより、カサドラへと向かう
 
カツラギ:ああ。健闘を祈る
 
0:迅雷は空へと飛び、目的地へ向かった
 
迅雷:これが、空を飛ぶ感覚……か
 
迅雷:……悪くはないな
 
0:
 
 
 
 
 
 

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