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短編小説

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今までのお話をまとめました。隙間時間に寄り道がてら、読んでいってください。
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#夏

青すぎる空と共に

放課後。夕方の教室。紙が擦れる音。セミの声。グラウンドから聞こえる部活動の掛け声。それらをBGMに、机を向かい合わせにして、ノートにシャーペンを走らせる。 二つの机がくっつくことはない。開いた隙間は境界線のようで、これ以上縮めてはいけない彼との関係を表しているみたいだ。でも、そうせざるを得ない訳も身の程も、きちんとわきまえているつもり。 モデルの仕事をしている彼。学校を休んで東京に行くこともしばしば。詳しくは知らないけれど、オーディションや撮影があるらしい。 休んだ分の

クロと僕と君と夏

大学に住み着いた猫。真っ黒だからクロすけと呼んでた僕と、ゴマと呼んでた彼女と、名前のない黒猫の、一夏の物語。 教授が体調不良のため今日の授業は休講。これだけ暑けりゃ体調もおかしくなるわなぁ。日本の夏蒸し暑すぎるよなぁ。働かない頭でそんなことを考えながら、突然できた空き時間に暇を持て余していた。特にすることもなく、校内をてきとうに散策する。歩いてみると意外と行っていない場所もあり、通い慣れたはずのキャンパスがなんだか新鮮に感じられた。 いつもは前を通り過ぎるだけの、校舎と校

炭酸のプールに落ちた夏、始まり

いつも通りの夏になると思っていたあの日。ぼくは、炭酸のプールに落っこちた。 何の変哲もない見慣れた通学路。暑すぎて我慢できず、片手には駅の自販機で買ったサイダー。肌が焼けていくのを感じながら、なるべく日陰を選んで歩く。昨日までの雨が嘘みたいな快晴。 のろのろ歩きながら、腹減ったなぁなんてのんきに考えていた。だから、曲がり角から人が来ていることに気づけなかったんだ。 突然視界に入り込んできた人影。ぶつかりそうになって、急いで一歩下がる。顔を上げた先に、驚いた顔のきみ。先週