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少女は卒業しない


あまりセンチメンタルな気持ちになるのは好きじゃない。
だからか。絶妙に「リアル」を描く、朝井リョウが少し苦手だ。

そんな私が、唯一、朝井リョウさんの本で
手元に置き続けている本。

この本は、別の学校と合併する学校で、校舎が取り壊される前日に行われた卒業式の一日を軸に、7人の女の子の視点で七つの話が書いてある連作の短編小説だ。

その中の一つ、「寺田の足の甲はキャベツ」が特に私のお気に入り。
この話は、東京に行く「私」と地元の国立を目指して予備校に通うことになる恋人の「寺田」の卒業式の後のお話だ。

まぁ、短いので。
内容についてはあまり書かないけれど、

それぞれ7人の女の子と大切な人のお話になっている。
卒業式の翌日には校舎は取り壊されてしまう。
2人をつなぐ学校がなくなってしまう。
そんな中で、「私」が「大切な人」との関係のためにどういう言葉を使ってどういう行動をするのか。
なにを選択するのか。

それが妙にリアルで。
冷静に考えてもこんな小説みたいな高校生活は送ってきていないけれど、それでもどこか懐かしくて、絶対に戻れない時間を思い出す。

例えば。
今でも仲が良い高校の友達がいる。
だけど、高校で学校の帰り道にテストの話とか部活の話とかをしていたのと、今たまに会って話をするのとでは、仲の良さで言ったら変わらないかもしれないけれど、でもどうしても空気感は違っている。あの頃には戻れない。

最初に、センチメンタルな気持ちになるのは好きじゃないと書いた。

でもそれはただ、あの頃に戻れないことを
まざまざと突きつけられるのが怖いだけなんだとわかっている。

私はこの、「少女は卒業しない」を通して

何も求めず、何も求められず、大切なあの人の隣にいることをただ許されていたあの頃に、戻りたいだけなのかもしれない。

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