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渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)×武田カオリ スペシャルインタービュー by am

普遍性と新規性を融合した作風で無二の存在感を放つam8(エーエム・エイト)。
リミックスプロジェクト『am8 killed by シリーズ』の第六弾としてリリースされた「Anywhere - Schroeder-Headz Nowhere Mix」は、80年代のテクノ/エレクトロサウンドのテイストをふんだんに入れ込んだ原曲を、am8のメンバーとも長い交友をもつ渡辺シュンスケ氏によるポスト・ジャズ・プロジェクト”Schroeder-Headz”がリミックスした作品。
オリジナルヴァージョンの佇まいから受けるインスピレーションで自由に再構築してほしい、というオーダーに対して、意外にもディープでアブストラクトなトリップホップ系のトラックに大変身させている。


●お二人の影響を受けたアーティストや音楽を教えて下さい

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武田カオリ 一番は“エヴリシング・バット・ザ・ガール“のトレイシー・ソーンですね。本当そればっかり聴いていましたし、真似していました。最初の頃のライブとかはカバーもしていたんです。
それまでジョニ・ミッチェルとかローラ・ニーロとかも好きで聴いてはいたけれど、トレイシー・ソーンに出会ってからはそればっかり。「ミラーボール」はライブでもカバーしたりしていました。


am8 武田さんのちょっとヨーロッパ系のシンガースタイルは、やっぱりその辺りから大きく影響を受けているんですね。

武田カオリ 実はそんなにソウル・ミュージックとかは聴いてきてないんですよ。
だからフェイクするとか、歌い上げたりとかっていうテクニックが身についてないというか、元々持ってないんです。仕事でやることはあるんですけど。

am8 それは意外ですね。

渡辺シュンスケ 日本人で好きなアーティストはいますか?

武田カオリ 最近ウォーキングをしているんですけど、そこでよく聴くのは矢野顕子さんですね。
恥ずかしながら、ちゃんと聴いたのはここ5年ぐらいなんです。ピアノと歌だけのアルバムが何枚か出ていて、それを聴いてすごく衝撃を受けました。「ピアノと歌だけなのに、こんな色んな世界が描けるんだ!」って。

渡辺シュンスケ 僕は武田さんよりも世代がちょっと上なんですけど、元々のルーツは洋楽じゃなくて日本人なんです。
中学生の時にバンドブームというのがあったので。
それまで音楽なんて全然興味なかったのに、急に「バンドをやるのがかっこいい!」ってなって。そんな不純な動機で始めつつも、なぜかキーボードに興味がいったんですよね。小室哲哉さんとか、坂本龍一さんにすごく憧れて。

武田カオリ 小さい頃から習っていたわけじゃないんですね。

渡辺シュンスケ 中学2年生の時にキーボードを初めて買って、そこからですね。
高校の時に坂本龍一に憧れて「音大に行かなきゃダメだ」ってなって、高校3年くらいからピアノを習いに行って、東京の音大に受かって東京に出てきたんです。
それが90年代頭かな。僕が東京に出てきた頃はちょうどクラブ・ジャズ・ブームで、ジャミロクワイとかが流行っていたんです。それまで邦楽しか聴いてなかったのですが、それからソウルとかそういう音楽を掘り始めました。


●お2人が知り合った経緯を聞かせてください。

渡辺シュンスケ 知り合ったのは僕が上京して大学に通っていた頃ですね。武田さんはまだ10代だったよね。

武田カオリ 19歳でした。だから23年前か。

渡辺シュンスケ 武田さんがTICAっていうユニットを始める時に、ライブを手伝わせていただいていて。色んなカバー曲をやったのが最初ですかね。エヴリシング・バット・ザ・ガールの「ミラーボール」をカバーしたのもその時だし、いろんなソウルの曲もやったし、ゲストでいろんなミュージシャンの人も参加したりしていました。

武田カオリ でもその頃はしょっちゅう会っていたわけじゃないですね。

渡辺シュンスケ 割と最近だと、僕がやっているSchroeder-Headzで10周年記念のアルバムを出したんですけど、いろんなゲストの人を呼んで、一緒にコラボするっていう企画があって、そこで歌ってもらいました。僕も武田さんと一度コラボしたいってずっと思っていて、歌詞もちょっと手伝ってもらって。お会いするのは久しぶりでしたね。


●お互いが出会った時の印象はどんなものでしたか?

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渡辺シュンスケ 最初会った時は僕も 20代だったんですけど、日本人離れした天性の歌声だと思いましたね。武田さんが歌うと独特な透明感が残るし、全部いい曲に聞こえるなと思いました。

武田カオリ 大学生で初めて一緒に合わせるっていう段階で、めちゃくちゃ上手かったですね。私もまだ19歳だったから、プロってすごい、音大生ってすごいって思いましたね。

渡辺シュンスケ 武田さんは当時も今も飄々としていて、独特な時間の流れの中にいる人だなって。

武田カオリ それはそのままお返しします。初めて会った時から何一つ変わってないです。

渡辺シュンスケ なんか周波数が近いところがあったんだと思います。
今思うと、武田さんと一緒に演奏していた時期って、プレイヤーとしてすごくいろんなものを吸収していた時期で、今自分がやってることもそれが土台になっているなと思いますね。


●am8に対する印象をお聞かせください。

渡辺シュンスケ 日本の音楽シーンって、メジャーな音楽からインディーだけど良い音楽まで、いろんな世界がある中で、お2人はバランスが取れているなと思いましたね。音楽への熱い気持ちがありつつ、遊びながら仕事をクリエイトできる人たちみたいな。だから良い出会いだったなって思っています。
活動をはじめたと聞いたときも、「やべえ、ついに本気出してきたぞ」と思いつつ、聴かせてもらってやっぱり「やべえ」と。これまではどちらかというと裏方でクリエーションする仕事に関わってきた人たちが、コロナとかあって今なかなかワクワクすることない中で、すごくワクワクする事をやっているなっていうのが最初の印象です。
自分より上の世代の人がそういういう活動をはじめられたので、逆に俺も頑張らなきゃなみたいにも思いました。

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●今回のプロジェクトの印象など教えてください。

渡辺シュンスケ お話しをいただいて最初に打ち合わせをした時に、お2人から「好きにしていいし、どちらかというと壊して欲しい」と伺って。色々と悩んだんですが、原曲を”ポジ”とすると、”ネガ”みたいなリミックスを作れたらいいなと思いました。武田さんの声の好きなところというか、空気感みたいなところを、逆にピアノが引き立つような感じで暗いリミックスにしたいなと思って。そんなイメージで作りました。

武田カオリ リミックスをする時って何を聴いて何を基準に肉付けしてるんですか?最初にぱっと聴いた瞬間、こういうコードが聴こえたんだよねって言う人もいるだろうし、全部歌だけ残して聴いて0から作っていく人もいるし。

渡辺シュンスケ 原曲と同じことしてもしょうがないと思うんです。なので、おもちゃもらって、それを使って自分が遊んでみましたぐらいの気持ちでもいいのかなって。

武田カオリ 渡辺さんのリミックスって、どういうジャンルっていうのは変だけど、ピアニストだけどクラシックの感じもするし、ジャズの感じもするし、ポップスの感じもするし、ものすごく不思議な存在ですよね。それがめちゃくちゃ貴重な人だなって思います。

渡辺シュンスケ 武田さんの声は導いてくれるというか、景色の見える声っていうか。夜が明ける直前の青さみたいな。暗くも明るくも、どっちが上なのか下なのかもわからない、ちょうど間の時間が止まっているような、そういう印象があって。あの曲はそういう映像が見えたんですよね。

武田カオリ めちゃくちゃ嬉しい。1番好きな時間帯です。

●アナログレコードに対する思い入れとかレコードについて何かあれば教えてください。

渡辺シュンスケ 大学生の頃に再発盤が色々出始めて、最初に買ったレコードは洋楽でしたね。ジャズとかやっぱりレコードで聴くといいなって思いますね。

武田カオリ 本当に初めて買ったのは子供の頃ですけど、それはアニメのやつでしたね。高校生の時にはなんでもかんでもレコードが出ていた気がします。
レコードって必ずB面にインストが入ってるじゃないですか?初めて私がオーディションに送ったカセットテープは、あれにオリジナルの曲を乗っけてそれを録って送りました。最大のレコードの思い出はそれかもしれないですね。

渡辺シュンスケ レコードは音楽がモノとしてちゃんと存在していることが良いと思いますね。好きなものを手に入れたっていう感覚はやっぱり配信だけで音楽聴くのとは違うのかなと。


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渡辺シュンスケさんと武田カオリさんのコラボレーション曲「Anywhere ft. Kaori Takeda - Schroeder-Headz Nowhere Mix」が収録されたam8のリミックスアナログ「am8 was killed by?」はこちらよりお求めいただけます。


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