SNS相談の落とし穴:ハマらない工夫
■結論:はっきりと文字にする、複雑さから一貫性を紡ぎ出す
相談の機会広がるも、相談員が不足
いまSNS相談(ここではSocial Networking Serviceを使った心理相談を指します)は急速に社会に広がっています。子育て相談、いじめ相談、女性相談など、対面や電話で行われてきた相談の多くがSNSでも行われるようになっているのです。
SNS相談は、手軽にアクセスできるので、多くの人が利用しやすい相談サービスです。その一方で、大量に寄せられる相談に応えるための相談員育成は間に合っていません。
対面とは違う技術が必要
というのも、SNS相談には対面や電話相談とは違う独自の相談技術を必要とするからです。
1.独自の相談技術とは
SNS相談には次のような技術が必要です。
(1)はっきりと文字にして伝える
・積極的に関心を示して質問していく。
・表情や声など非言語的に表現される内容を言葉で伝える。
(2)応答に独自の工夫が必要
・必要に応じて、相づちを文字にして相談者をサポートする。
(3)幅広い年齢層、特に若年層に対応する
・幅広く、多様なニーズがあることを理解して尊重する。
このような技術を身につけたとしても次のような失敗をしがちなことがわかっています。
失敗に備える
2.ありがちな失敗
こうすれば心の問題が解消する、ということは難しいものですが、よかれと思って対応したことが思わぬ失敗につながることがあります。
(1)問題を引き受けない相談員
SNS相談中に、その場で問題を引き受けずに他の相談場所に行くことを進めてしまうと、相談者はその相談員に信頼をもてなくなる。
(2)自分の話を始めてしまう
相談の場で相談員の経験が有効に働くのは、相談者の話をしっかりと聞いて信頼関係が築けてからのこと。関係構築の段階で自分の経験を話しても相談者はついていけなくなる。
(3)導きすぎる
相談者よりも相談員の言葉が多くなってきたら要注意。相談員主導でプロセスが進むのであれば、それはカウンセリングとはいえない。相談者が少し先を行き、相談員はそこに添うように付いて行くイメージでちょうどいい。
(4)相手に委ねる
相談者の気持ちを受容的に返すだけでは、相談者の心の扉は開かれたまま放置されることになる。心の扉を開くように促すのであれば扉を閉じるまで責任を持って対応しなければならない。
おわりに:非言語コミュケーションが使えない世界で抽象的思考能力を培う
このように対面ができず、電話口で相手の声さえも聞こえない状態で相談を受けるには、独自の工夫と訓練が求められます。
非言語コミュケーションが使えない世界では、私たち相談員の抽象的思考能力が頼りです。この能力の育成体制を整えることが期待されています。
※いまSNS相談の現場で何が起こっているかを知りたい方は下記をオススメいたします。
参考:『SNSカウンセリング・ケースブック 事例で学ぶ支援の方法』
監 修:杉原保史
発 行:誠信書房、2020
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。あなたの「スキ」が励みになります。「サポート」されると張り切ります。私の記事が必要としている人に届きますように。