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3分50秒小説『箱の中身はナン?』

「では今から、こちらの箱に手を入れて頂いて、中身がナンかナンでないかを当てて頂きます。1問正解するごとに賞金20万円、5問すべて正解すれば、賞金はなんと100万円となります。ただし、一問でも間違えるとその時点で獲得していた賞金はすべて没収となります、さぁ、箱の中身はナン?」
「え?」
「箱の中に手を入れてください」
「はい?」
「箱の中身はナン?」
「すいません一つだけ、ナンって、あのナンですか?」
「それに関してはノーヒントです。ではどうぞっ!」
「……はい、手を入れました……うわ、なんかありますね……ナンだろ?これ、いや、ナンじゃない?」
「さぁ、箱の中身はナン?」
「……ナンじゃありません」
「正解!見事賞金20万円獲得です。では次の問題です。箱の中身は――」
「ちょっと待ってください!結局箱の中身はナンだったんですか?」
「いえ、ナンではないです」
「じゃなくて、何が入ってたんですか?」
「ではお見せしましょう。箱の中身はこちらでーす」
「……パイ?」
「そうです、箱の中身はパイでした。では次の問題、箱の中身はナン?」
「熱っ……熱っ、ナンだ?これ……いやナンじゃないなこれ」
「さぁ、答えをどうぞ!」
「ピザ」
「ナンかナンじゃないかでお応えください」
「ナンじゃない!」
「正解です!箱の中身はピザでした。賞金40万円獲得です。では次の問題。箱の中身はナン?」
「うわー、今までで一番ナンっぽいな……うん、これは」
「さぁ、お答えください」
「……難しい。考えてみたら、ナンって食べたことあるけど、感触なんて覚えてないし……いや、でもたぶん……」
「さぁ、お答えください」
「箱の中身は、ナンじゃない!」
「正解は……ナン」
「え?」
「ではありません」
「ちょっと!」
「箱の中身はメキシコのトルティーヤでした。賞金60万円獲得です。では次の問題!これが最終問題となります」
「え?5問あるって言ってませんでした?」
「ちょっとトラブルがありまして、上手に焼けなかったので、4問目は無しということで、次の問題が最終問題となります。最終問題の賞金は40万円です。見事正解すれば合計100万円獲得となります。では、箱の中身はナン?」
「嗚呼……嗚呼……うん、間違いない」
「お答えください、どうぞっ」
「ちょっと時間ください。いや、絶対ナンだろこれ……まさか最後までナンじゃないってことあり得ないだろうし……いやー、100万円かぁ……親に金返して、引っ越ししよう」
「さぁ、慎重にお答えください。いいですか?箱の中身は?」
「……はい、決めました。ナンです」
「ファイナルナン?」
「え?」
「ファイナルナン?」
「ちょっと意味わかんないですけど多分、はい」
「では正解は……こちらです。残念!正解は”ナンではない”でした。最終問題でまさかの不正解ということで、賞金はすべて没収となります。いやー、惜しかったですね?」
「ちょっと待ってください!これナンにしか見えませんけど?」
「ヌンです」
「え?」
「ヌンです」
「ヌン?」
「はい、ヌンです」
「え?ナンじゃなくて?」
「ヌンです」
「あの、やっぱりナンにしか見えないですけど」
「ヌンです」
「ヌンってナンなんですか?」
「いえ、ヌンはナンではありません」
「いや、違うくて!ヌンとは一体どのようなものなのですか?」
「ナンです」
「え?」
「ヌンはナンです」
「ちょっと理解できないんですけど、そのこのヌンっていうものはナンなんですね?」
「そうです、こちらはスリランカの少数部族の間で食されているもので、ヌンと呼ばれています」
「じゃあナンじゃないんですね」
「いえ、原材料も製造方法もナンと全く一緒なのでそういう意味ではナンと呼んでもなんの矛盾もありません」
「じゃあこれはナンなんですね?」
「ヌンです」
「でもナンと同じものなんでしょう?」
「はい、でもヌンです」

 ・ ・ ・

「また来週!」

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