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2分0秒小説『キミと拳銃とハムスター』
キミの言葉借り
キミの事ばかり
考えて眠れない
朝、キミは家を出ます。半歩引き返してポストを覗きます。捻れた靴底が悲鳴をあげ、コンクリートに跳ね返る。
分譲住宅を勧める的外れな封筒の上に、拳銃が置かれています。
「誰のイタズラだろうか?」
眉根を寄せ、躊躇う指で銃身に触れます。伝わってきます。金属特有の冷徹さがまざまざと。送迎バスを待つ親子の会話が排気ガスと混ざってキコエル。グリップを握ります。
心臓が止まります。僅か0.02秒ですが、鼓動が途切れました。理由は?冷たい銃身と違い、グリップは温血動物の肌のよう、いや、キミと全く同じ体温だった、からです。
山積した郵便物がもりもりと動いてハムスターが顔を出します。薄目を開けてキミを見つめます。キミはグリップを握ったまま、思い出す「自分がお世話を忘れてしまったせいで、この子を死なせてしまった。あれはいつの日だったか」あれは夏の暑い日でしたね。
「今日キミはダレを撃ちますか?」
ハムスターが問います。
「今日キミはダレを撃ちますか?」
ハムスターが問います。
キミは辺りを見回し、鞄に銃を入れます。愛する人の目元を浮かべます。その横に、自分を傷付ける人の髪型を並べます。溜め息を吐きます。
「ダレを撃とうか?」
セカイのどこかで子どもがバスに轢かれました。彼は将来、バスの運転手になるのが夢でした。
キミは自分の足音に怯えながら歩き出す。撃鉄の感触を架空の人差し指に感じながら。
開けっ放しのポストから、ハムスターが落ちて鈍い音がしたよ。だから、
「その銃でボクを撃ってくれ」
愛なんてなくとも、キミを愛し続けることができると確信していたあの夏のボクを。
「愛よりも先に、ボクを終わらせてくれ」
さもなくば明日の朝キミのポストに、老婆とマシンガンを詰め込むよ。
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