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2分0秒小説『すべての光が集う場所』

 朝の光が窓辺に腰かけている。そろそろ午後になる。昼の光がやってきて話しかけてきた。

「交代だぞ」
「分かっている。ちょっと待ってくれ」

 昼の光は不機嫌そうに、「待てないよ。だってもう午後だぞ」と言った。朝の光は「分かっている」と言うには言うが、動こうとしない。
 「そもそも何を待つ必要があるというんだ?」尋ねると、朝の光は指差しながら、「もうちょっとだけ、あの子を照らしていたい」
 昼の光が視線を移すと、ベッドでの上で半身を起こしている少女がいた。手探りで何かを探している。「おい、あの子、目が見えないんじゃないのか?」「ああ、そうだよ。いや、そうだ……それでも」

 少女の指が、ぬいぐるみに触れた。手のひらで包み込むように触り、その輪郭を確かめると満足そうに微笑んだ。
「もうちょっとだけ、彼女に光を……」
 昼の光はため息を吐き、「いいからそこをどけ、善人ぶるな。いや、あの子を馬鹿にするな!」「何?馬鹿になんかしていない!」「いや、している。朝には朝の光、昼には昼の光、例え目が見えなくても、皆と同じように、あの子の周りには光が存在するべきだ。違うか?」
 朝の光は、はっと肩を竦め。「確かに、君の言うとおりだ」窓から降りた。
「そんな顔するな。俺が彼女を照らす」
「え?」
「当たり前だろ?さっき言った通りだ。それにお前、俺がサボってたら天使にチクるだろう?」
 顔を見合わせて、二つの光が笑った。
「もしいつの日か、彼女の目が見えるようになった時、どちらがここにいて彼女の瞳に映るか、賭けをしないか?」
 天井から声がした。
「俺も入れてくれ」
 蛍光灯の声。
 卓上スタンドからも同じような申し出があり、テレビも、冷蔵庫の中の電灯も、ポットについている小さなLEDまでも、声を揃えて賭けへの参戦を申し出た。そして皆、自分の勝利へ賭けた。
 二つの光は大きく頷き、ハイタッチをして交代した。
 そうして今、昼の光が、女の子を照らしている。

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