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6分0秒小説『こわしてあそぼう』

「教室のみんなぁー!こんにちわー。『こわしてあそぼう』始まるよぉ。僕の名前は、どきどきさん。色んな物を壊すのが、だぁーい好きなお兄さんだよ。そして、隣にいるのが、相棒のポロリ。さぁ、ポロリ、皆に挨拶して」
「みんなぁー、元気ぃ?僕はボロリ。宜しくね。とろこでお兄さん」
「なんだい?ボロリ」
「早速だけど、今日は何を壊すの?」
「そうだねぇ。じゃあ、今日は人間関係を壊してみようか?」
「人間関係?」
「そう、人間関係」
「ねぇねぇお兄さん。人間関係って何?」
「人間関係って言うのはね。例えば、僕とボロリの間にも存在するもので、人と人が関わっていく上でとても大切なものなんだよ」
「ふーん……何だか難しいやぁ」
「よし、説明していても埒があかないから、早速人間関係を壊してみよか。まず手始めに、番組スタッフとの人間関係をブチ壊しだぁ!」
「わぁ何だかドキドキするよぉ、お兄さぁん」
「ふふふ。じゃあいくねぇ。番組スタッフの皆さん、聞いてください。僕は、最近民放の番組なんかにもよく呼ばれて行くんだけど、そのたびに、民放のスタッフさん達の、とても迅速丁寧な素晴らしい仕事を拝見して感動してしまいます。それに比べて、貴方達の仕事っぷりときたら……愚鈍で杜撰でお粗末極まりないクズっぷりで……どうして、そんなに仕事が出来ないんですか?嗚呼、これから先も、あなた達みたいな三流人間と一緒に仕事をしていかなければならないと思うと吐き気を催してしまいます」
「わぁ、いきなり痛烈だねぇお兄さん」
「でも事実だからしょうがねいよね。実際、この人達はね。国営放送っていう既得権に巣食うダニのような存在なんだ。だから向上心がない。与えられた仕事をこなしていれば、それでいいと思っている最低の人達なんだ。そのくせプライドだけは高いから、少しでも意見すると、すぐ顔真っ赤になって反論してくるんだよ」
「たちが悪いんだね」
「そう、その通り。まぁ、この番組が何とか持ちこたえているのも、すべて僕のおかげであって、スタッフの皆さんは、僕の人気におんぶにだっこの、本当に本当にダニ以下の存在なんだ。だから、みんな死ねばいいと思っている。心の底からね」
「あっ、お兄さん。今スタジオの空気が変わったきがする」
「ボロリ、よく分かったね。そう、今まさに長年積み上げてきた人間関係が、一気に崩壊したんだよ」
「へぇ、何だかギスギスしてきたねぇ。あちこちから舌打ちが聞こえてくるよ。うひゃー、怒号まで聞こえてきた……あ、あの人怒って帰っちゃったよ」
「大丈夫、居てもいなくて同じようなもんだから。じゃあ次は、ナレーションのおねぇさんとの人間関係を壊してみようか」
「え?おにいさん、いいの?」
「何が?」
「だって、おにいさんと、おねぇさんは……その……」
「大丈夫。その辺の世間をはばかる男女の関係性も含めて、跡形もなくぶっ壊してみせるから、見てて」
「うん分かった。ドキドキ」
「おねぇさん」
「はーい、どきどきさんこんにちわー」
「何が『はーい』だ!必死に若作りした声出してんじゃねぇぞババア」
「……ババア?」
「画面に映らないからって、調子こいてんじゃねぇ。実際てめぇ、先週38歳の誕生日を迎えたアラフォーじゃねぇか。あ、それと先週お前を抱いた時に、『嫁と別れてお前と結婚する』って言ったの、まさか真に受けてないよな?」
「え?どういう事よそれ?」
「は、まだ分かんねぇのか。口から出任せだよ。おめぇとの都合のいい関係を維持したいから、心にも無いこと言ったんだよ。いいか、よく聞けよこの腐れマ○コ。おめぇみたいなブスと付き合ってるのは、おめぇが巨乳だから、ただそれだけだ。この際はっきり言っておくがお前はブスだ。乳だけ100点満点のブス。お前ほど残念な巨乳に、俺は出会ったことがない。勿体ないから、その乳を引き剥がして、貧乳美女にくっつけてやりたいと、お前の顔を見るたびに俺は思う。それにしても最高だよお前の乳は。だから、『奥さんと別れて』とか、『いつか私と結婚して』とか、そういうウザったいこと言わないで、これからも末永く、俺の都合のいい乳でいてくれ。大好きだよ」
「……最低」
 ぶつ
「あ、おねぇさん……音声が途絶えちゃったね」
「どうだいボロリ?今の壊しっぷりは」
「凄まじいの一言に尽きるよお兄さん……僕、この場にいるのがだんだん居た堪れなくなってきた」
「ぶっ。何、かわいこぶってんだオヤジの癖に。てめぇのそのキグルミの中身、中肉中背のハゲオヤジじゃねぇか。知ってんぞコラ。てめぇ最近五反田のフィリピンパブの女に入れあげて、嫁に逃げられたそうじゃねぇか。よくそんな悲惨な家庭環境で、この仕事続けてられるな?」
「え?……ひょっとて、次は僕の番?」
「は?トロいんだよすぐ気づけ。あ、後おめぇの体臭かなりヤバイぞ。分厚いキグルミ着てても臭ってくるってどんだけなんだよお前の体臭は、ザリガニの死体でも脇に挟んでんじゃないのか?ああん?」
「……ザリガニ」
「いっぺん『体臭がヤバイんですが、僕病気でしょうか先生?』って、病院行ってこい。本名、山田源次。年齢48歳。実家は栃木県……」
「うわ、ちょっと個人情報は勘弁して」
「うるせいハゲ!俺から離れろ。臭すぎて番組の収録に支障がでてしまう。てか吐きそうだ。おぇ」
「…………」
「はい、教室の前のみんなー。今日の『こわしてみよう』どうだったかなぁ?どきどきしたかなぁ?でもね、大丈夫だよ。今日壊してみた僕らの人間関係は、そんなに脆いもんじゃないからね。番組のためにやっていることだって、きっとスタッフもおねぇさんも、ポロリも分かってくれているはず。だから、すぐに修復できるんだよ。ね、ポロリ仲直りの握手をしようほら」
「気安くさわんじゃねぇよ。クソがぁ!」
「……手を、思いっきり払われちゃったね……これで分かったよね?一度壊れた人間関係は、簡単には元通りにならないんだ。だから世の中には、壊しちゃいけない物もあるって事、勉強になったね。じゃあ、また来週?」

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