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30秒小説『7月なのにもうセミが死んでいる』

 アパートの階段降りていると踊り場にセミの死体。すぐ横にクロックスを着地させ、軽く横薙ぎに蹴る。横転して背を返す。着信は無い。
「7月なのにもうセミが死んでいる」
 こんな所に誰が置いた?問わずもがな彼自身………か。
 曇天に覆われた朝、涼しくはないが暑くもない。階段を降り、コンビニへ向かう。ネットニュースで見たスイーツを目当てに。

 もしくは僕だ。あれを置いたのは僕。自身の死のカリカチュアなのだ。
 それでも僕は、まだ7月にいる。

 


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