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祥子のPhoto Journey【第2話】

アフリカへ


「今年はもうアフリカに行ったの?次はいつ行くの?」
久しぶりに会う時には必ずこう尋ねられるようになった。他の国もたくさん訪れているのだけれど、皆さんに印象深いのはやはりアフリカらしい。確かに写真を学ぶようになって、私のアフリカ旅行は益々頻度が上がってしまった。だって、写真に没頭するには最高なんだもの。

アフリカ=野生動物というイメージがあるが、本当はアフリカはそれだけではない。誰でも自分が最も好きな被写体を選び放題追いかけ放題の夢の国なのだ。

動物・鳥類・花・滝・山・星・建造物、そして人々…。あらゆる被写体が、微に入り細に入り唸りたくなるような圧倒的に美しいデザインと色彩を持ちあわせ、限りない魅力を醸し出す。

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野鳥のみ、お花のみ、民族衣装のみなど1つのテーマに絞ってひたすら追いかけるツアーが多いのも頷ける。

世界中からプロアマ問わず写真家が殺到するから、カメラマンに特化したお宿も多い。バッテリーの充電で困ったことはないし、とても買えないような凄いレンズをレンタルすることも出来たりする。ガイドしてくれるスタッフのホスピタリティの力量たるや。常にベストなアングルを提供するため、僅かな光の加減や草1本の影響を考慮して、巨大なジープを数㎝単位で動かしてくれるほどだ。私でもあんな写真集が作れたりするのは、全て彼らの絶え間ない努力と思いやりのおかげなのである。

写真を撮るのは結構疲れる。そんな毎日を癒してくれるのは、ゆったり浸かれるお風呂とふかふかのベッドと美味しいご飯。ご存知の通り、マグロを含め私達が大好きな美味しいお魚の多くの漁場はアフリカ近郊。お肉は世界トップ3。食後のコーヒーや紅茶はご存知の通りの超有名産地。ワインなどは、南アフリカのとある1都市だけでも約300ものワイナリーが点在し、呑ん兵衛の皆様が口を揃えてイタリアやスペイン以上と絶賛するお味の上に格安だったりする。まさに天国。

そんなアフリカでの今回の私の旅は約1カ月。友人の大きな車に、巨大な2つの冷蔵庫たっぷりの食料とテントを積み込んで。大好きな音楽をかけながら、国境を超え一路アフリカ大陸最大の動物保護区セントラルカラハリ横断へとひた走る。主要な道路は日本の何倍も質が高く快適で長距離でもあっという間だし、オフロードに入ってもカーナビが路面が砂地に変わればちゃんと「sand!」と声でお知らせしてハンドルさばきに注意を促してくれる。私の目には全く区別のつかないブッシュの中に迷い込んでもきちんと「車道はここよ」と示してくれる。本当に便利な世の中になったものだ。

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旅の目的地セントラルカラハリ保護区は約5万2,800k㎡。東北地方5県相当という広大な野生保護区だ。その広さに比例して撮影場所も被写体も千差万別。右に左に空に地面に、次々に出現する。日常の何十倍も濃密な毎日のオンパレード。

恐らく日本人女性として初めて来たに違いないと言われた記念すべき未踏の地でのキャンプを皮切りに、あまりの素晴らしさに知恵熱なのか単なる日焼けのしすぎなのか(笑)、「顔がレインボーカラーになってるぞ!」と体温計でお熱を測られる事態になったのはご愛敬だ。

この地にしか生息していない、数あるライオンの種類の中で最も美しいと言われる黒いたてがみのカラハリライオンの群れによる夕焼けの中での咆哮大合唱。

早朝に道路の上に残されたアフリカ象の足跡を大追跡すること延々70㎞。

従来、広大な乾燥地帯のカラハリにはアフリカ象は生息していなかったそうだ。近年、気候変動で干ばつが厳しくなり新天地を求めてどんどんアフリカ象が集まってきているらしい。私達が足跡を見つけた場所から遂に出会えた場所の間に1つも水場はない。このアフリカ象は一滴の水も飲めずに、それでも一般的に言われている象の一日の移動距離を何十㎞もオーバーして、最後には足を引きずるようにして移動していた。心配しながら追いかけ続けて、遂に追いつき無事に水場に辿り着かんとする象と遭遇したときの大感動。

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砂漠に一瞬降る雨がもたらす奇跡はまさに壮観だ。

去年に引き続き、私達はこの奇跡の瞬間を目の当たりにする幸運に恵まれた。しかも各地に到着した時には極限の枯れ野原。テントを設営し準備万端整ってから満を持しての雨の到来。見ているそばからドキュメンタリー映像早送りの驚異的なスピードで、枯れ枝はピカピカの若葉を纏い始め、地面はふかふかの花畑へと世界を変貌させる。それと同時に一斉に昆虫は羽化し、小鳥はさえずり巣作りを始める。

一夜明けるとヘソの緒を付けた赤ちゃん連れの大集団が見渡す限りに増えていて、我が眼を疑う事態に世界は変貌を遂げている。前日には枯れ木に残された僅かな木陰に1~2頭。今にも息絶えそうなしんどさで蹲っていたのに。

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漆黒の地平線の彼方で繰り広げられる何百回もの雷ショーはもはや怖さを超越し荘厳なシャッターチャンスに他ならず。

プラネタリウムの何千倍もの数で星が煌めき、有名な星雲さえも肉眼で見えるような満天360度の星空では星座なんてものは存在出来ず。ただただあんぐりとお口を開けて見惚れるのみだ。

そんな中で毎晩焚き火を囲み火のはぜる音を聞きながら、美味しい食事と共に何時間も語り合う最高に至福の時を過ごす。虫の音や動物達の息遣いを聞きながら眠りにつき、小鳥のさえずりを聞きながら朝食を。

あなたなら、そのファインダーで何を狙いますか?

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写真・文:山田祥子

山田祥子(Yamada Yoshiko)プロフィール
構図講座をきっかけに、2014年からアルトフォーカスに参加。
幼いころからブローニー・二眼レフカメラ・ポラロイド・110フィルムなど様々なカメラに囲まれて育つ。新たに齢90を超える伯母愛用のカメラをまもなく譲り受ける予定(笑)。
国内外を暮らすように旅することが大好き。初渡航は数ヶ月かけてのアメリカ大陸横断旅行。以降、訪問国は数十ヶ国に上る。特にアフリカは20年以上前から度々訪れ、近年は年1回は欠かさず通っている状態。
実は趣味のゴスペルで、有名人の全国ツアー共演なども・・・。




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