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アヴァンギャルド


白石かずこの詩の”一部”が異様に好きだ。
アヴァンギャルドできれいだから。
でも、全部は少し苦手なときがある。
ちょっと残酷だったり官能的な表現があるから。

こんな読み方をしたらいけないのだけれど、
詩の”一部”だけ切り取ってしまう。
でもその切り取られた言葉には
不思議なリズムが宿り、
心が引っ張られてクラクラする。



白石かずこ  詩人
1931年カナダ・バンクーバー生まれ。
7歳で日本に移住。

アメリカのビート詩人アレン・ギンズバーグや
アフリカのビート詩人マジシ・クネーネら海外詩人との交流、モデル活動、ジャズとシャーマニックでメディテーションな詩の朗読、翻訳など多彩に活動。





私がクラクラした詩の”一部”
                < 思潮社 白石かずこ詩集より >

あたし いかれてるかしら いかれてるな


その頃
わたしはスミレとチョコレートをもって
銀のコスチュームをつけ
白い蛇をつくる女に逢いにいった


髪を紫色に染めたわ  いや
金色に染めるのである
人間の不幸を 金色に染めるのである
陽気でないのは キライだからネ


Oh,  ロマンチックな ジュンよ
犬はとてもかわいい
正直に みぶるいする
哀しみがある


わたしは 東洋にいた
アネモネをかかえ
この小さな花束を
ある人生の春の 旅人に
渡しにいこうとしていた





横尾忠則さんがデザインされた本も素敵だ。

天声出版 1968年刊行


新書館 1967年刊行


そして、絵本の訳も最高に素敵だ。

『ちいちゃな女の子のうた 
わたしは生きてるさくらんぼ』

 デルモア・シュワルツ 文
バーバラ・クーニー 絵
白石 かずこ 訳
  (ほるぷ出版 発行)

わたしは 木
わたしは 猫
わたしは 花になって ひらいたりもするの

わたしは なりたいとおもったら
いつでも あたらしいなにかに なれるのよ。
とてもとしとった 動物園の魔法使いとか。
わたし いつでも おもったとき
すてきな だれかに なってしまうの。

そして ときどき わたしは いろんなもの
ぜんぶになりたい なんておもうの。

わたしは いつも わたしでしょう。

わたしは あかよ。
わたしは 金。
わたしは みどりよ。
わたしは 青なの。


「自分らしく生きたい」とかいう言葉になると
微妙な固さが伴うけれど、
この絵本の中の言葉はもっと自由で
生き生きしている。
白石かずこが訳す言葉は、優しい中にも
力強いリズムを帯びている。
読むだけで、瞑想をしているような
安らかな気持ちになれる不思議な絵本だ。

寺山修司や稲垣足穂をも魅了した
白石かずこ。

「アヴァンギャルド」ってよくわからないけど、
白石かずこから”香り立つ”この感じが、
私が思うアヴァンギャルド。

まだまだ生きてるあいだに、
心をクラクラ揺さぶられるアヴァンギャルドに
もっともっと触れていきたい。

わたしは いつも あたらしくなるのよ


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