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今日、どこかの教室で #1

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国の学校で臨時休校が要請され、さまざまな措置が取られている今日この頃。前代未聞の状況の中全国の学校でいろいろなことが起こってるのではないかと、勝手に妄想しています。

学生は登校しませんが、僕は平日は毎日投稿していくつもりです。

3月2日・〇▼高校・3年B組
生徒・川上しのぶ(18)と先生・中神孝志郎(28)の場合

中神「いやぁ。まさか臨時休校知らずに今日来ちゃう生徒がいるとはねぇ」

しのぶ「すいません・・・」

中神「卒業式いないからおかしいと思ったんだよねぇ。今どき誰かから聞いたりしなかったの?ネットでもあんなに話題になってたし」

しのぶ「あたし・・・今携帯無くしてて・・・」

中神「まぁ高三通常授業日あんまりこないもんね・・・。親御さんには教えてもらえなかったの?」

しのぶ「勝手に行くと思ってたって」

中神「まぁ生徒と教師だけでやることになったからね」

しのぶ「終わっちゃったんですよね・・・まさか土曜日に前倒しになるとは・・・」

中神「本当に残念そうだったよ。お別れできなくて」

しのぶ「はい・・・」

中神「まぁ会えなくなるわけじゃないんだし、春休み長くなったんだから遊びに行ってきなよ・・・って外出ちゃダメなのか」

しのぶ「そうですね・・・」

中神「大丈夫だよ、みんな元気にしてると思うから。携帯みつかったら連絡とってみなよ」

しのぶ「ありがとうございます・・・」

中神「じゃあ、俺仕事あるから。家帰りな。元気でな」

しのぶ「あの!」

中神「なに?」

しのぶ「卒業式、みんなどんな感じでした?」

中神「あぁ、かなり簡単にやったからそんなに気持ち入ってなかったかもなぁ。泣いてるやつとかあんまりいなかったもん」

しのぶ「そうだったんですね・・・」

中神「もしかしたら来ても来なくても一緒だったかもな」

しのぶ「そんなお気遣いなく・・・ありがとうございます」

中神「別に、そういうつもりじゃなかったけど」

しのぶ「あぁ」

中神「それじゃあ。落ち着いたらまたいつでも会いに来いよ」

しのぶ「・・・」

中神「気をつけて帰れよ」

しのぶ「あの!」

中神「何?」

しのぶ「最後に、どんな話しましたか?みんなの前で」

中神「ああ、そうだな。聞いてなかったんだもんな」

しのぶ「あたしだけ聞けないの、寂しいです」

中神「んなもん、友達から聞いてくれよ」

しのぶ「意味ないです。先生の口から聞かないと」

中神「えぇ?恥ずかしいな」

しのぶ「お願いします」

中神「うーん。大した事言ってないよ。『まだこれから君たちの人生は続きます。ずっと未来を向いて進んで下さい。でもときどき振り返ってくれると嬉しいです』みたいなことを言ったかなぁ」

しのぶ「おぉ」

中神「やめろよ。いいかげん早く帰るんだぞ、じゃあな」

しのぶ「先生は!」

中神「なんだよ!何度も」

しのぶ「先生は泣いたりしなかったんですか?」

中神「それ聞いちゃう?」

しのぶ「じゃあ・・・」

中神「泣いてないよ」

しのぶ「あぁ・・・」

中神「みんなの前では」

しのぶ「えぇ」

中神「みんなと同じで、式の途中ではなんか実感わかなかったけど、家帰って来週の予定見た時、『そっか、来週はもういないのか』って気づいて、ちょっとな」

しのぶ「意外です。中神先生が」

中神「絶対言うなよ」

しのぶ「言わないです」

中神「信用できないな・・・」

しのぶ「え・・・」

中神「川上も、なんか教えろ、隠してること」

しのぶ「隠してること・・・」

中神「秘密の交換。もし川上が俺が泣いたことばらしたらお前の秘密をみんなにばらす」

しのぶ「そんな・・・」

中神「言うまで帰さない。ってそれじゃ俺のためにならないか」

しのぶ「好きです!」

中神「ん?」

しのぶ「先生のことがずっと好きでした!」

中神「川上・・・?」

しのぶ「言えた・・・」

中神「そ、そうか」

しのぶ「実は知ってました」

中神「は?」

しのぶ「卒業式は土曜日にやるって」

中神「え!?」

しのぶ「知らないふりして、月曜日ふらっと来たら、会えるかなと思って」

中神「マジか・・・。でもさ、土曜日終わった後とかでも時間あったんじゃない?自分で言うのも恥ずかしいけど」

しのぶ「それじゃダメなんです」

中神「なんで?」

しのぶ「間に合わないんです!」

中神「何が?」

しのぶ「これ!受け取ってください」

中神「なにこれ」

しのぶ「先生への愛をしたためたラブレターで、モザイクアートを作りました」

中神「これ、俺の顔・・・?」

しのぶ「そうです。卒業式の日に渡せるように逆算して一日一枚進めていったので。どうしても今日じゃないといけなくて」

中神「そう・・・なんだ・・・」

しのぶ「毎日刻一刻と変わってく気持ちを表現していったので、どうしても前倒しってわけにもいかなくて」

中神「このために、わざわざ卒業式休んだの?」

しのぶ「はい!先生も言ってたように友達とはいつでも連絡とれますが、先生に会うのは同じようにはいかないので」

中神「そう、だね」

しのぶ「どうですか?」

中神「うん、ちゃんと秘密にしておくよ・・・」


ー了ー



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