裏DVD⑤/飛ぶやつ
「Nが飛びやがった」
初夏の晴れた昼下がり、ボスが電話口で呟いた。
こういう時のボスって、ブチ切れそうなイメージがあるからなんか意外だった。
電話の後、僕の持ち場にやってきたボスはやっぱり怖い顔だった。
「ったく、あの野郎」
「まあ、そういうことだから悪いけど今日は休憩無しだ」
と僕に伝えた後、電話をしながらどこかに去っていった。
後ろ姿からでも眉間にしわを寄せているのが分かった。
Nさんは、ボスに信用されていたと思う。
一人だけ部屋から現金を別の場所へ移す仕事を任されてい