2023.1.5 イールドカーブコントロールの意味-④

こんにちは。今回はYCCの最終回。イールドカーブコントロールとは、「長期債の無制限売買により、短期金利のみでなく、長期金利に至るまで包括的に金利水準をコントロールする政策」でした。現在の混乱について話します。

YCCの限界現在YCCは限界を迎えています。なぜそのようになったのか。まず日本国債(長期債)は、「将来の期待インフレ率」を大きく反映して動きます。なぜなら日本国債は究極の「無リスク資産」。日本政府なら絶対にお金を返してくれる、という信頼があります。確実ですから、市場参加者は余った「現金を価値保存する手段」として日本国債を買うのです。国債を買うからには、将来のインフレ率と同じだけ利率をつけてくれないと困る(現金の価値が目減するから)、という訳です。現在日本にもインフレの波がやってきています。今後一層のインフレが期待され、当然10年債利回りも上昇するはず。しかしYCC政策により、10年最利回りは上昇できない(日銀の買い支えによる)。これでは市場参加者は10年債を買う意味がなくなり、どんどん売り払います。でも日銀がこれを買いまくる、というチグハグなことが起こっていたのです。実際、事件も起きていた。近年ではYCC政策は、10年債利回りの誘導目標を±0.25%としていましたが、2022年6月22日、日本の10年債利回りが一時0.255%となりました。これは、市場参加者が国債に怒涛の売りを仕掛け、日銀の買いが追いつかなかった、ということ。まさにアウトオブコントロール。

ついにYCCの修正2022年12月19,20日に行われた金融政策決定会合で、黒田総裁はYCCの修正を言い渡します。10年債の金利誘導目標を、従来の±0.25%から「±0.50%」としたのです。さすがに日銀も、コントロールできなかったのでしょう。これは今までの黒田総裁の態度とは大きく異なります。市場にとっては大きなサプライズとなりました。

なぜ今なのか?日銀総裁の黒田東彦氏は、安倍首相と共に「アベノミクス」を推進してきた人物。わざわざ任期の延長までしてもらい、2013年から総裁の地位に君臨。歴代最長でした。しかしその任期も2023年4月まで。長い日銀人生の「レガシー」として、後任の金融政策(おそらく引き締め方向に転換する)のレールを敷いたのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?