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屋久島 モッチョム岳 遭難記録

2021/11/21 屋久島モッチョム岳の下山中に遭難しました。
時系列をまとめたのでNoteに記載します。かなり「山を舐めてる」案件ですので、それらが不快な方は見ないでおいてください。
遭難の理由は完全に自業自得のもので、公開するかも迷ったのですが、自戒を込めて残しておこうと思います。

また、自分の不用意な入山によりご迷惑をおかけしました方々には本当に申し訳ないと思っております。
今こうして自分の命があるのはひとえに捜索隊の方々の尽力によるものです。捜索にご尽力いただいた屋久島警察署・消防隊、役所で関連業務に当たられた方々には感謝しかありません。

▼TL;DR

・観光に行った屋久島モッチョム岳にて下山中に道迷い遭難
・屋久島警察署に電話で救助要請、捜索隊に救助された
・大した怪我もなく無事

▼事前情報

・登山前日まで登山するつもりは無く(遊歩道のような整備された箇所の観光を想定)3泊分の荷物+キャンプ椅子を20Lバックパックに詰めていた。

・屋久島には一泊二日で滞在。帰りのフライトの時間は11/21 19:00。
登山は高尾山くらいしか経験なくほぼ初心者、ボルダリングジムに行っていた程度。

▼11/20:前日

21時ごろ
11/21の予定がなかったため、同宿の方と民宿の女将さんに情報を聞き、モッチョム岳に登山することに決める。
以下、前日に仕入れていたモッチョム岳の情報

1. 940mの低山
2. 登山時間は6時間~7時間程度
3. 「この山を登ることが出来れば屋久島の山は大概登ることが出来る」wikipediaより
4. 当日の天気予報は18時ごろまで晴天、のち豪雨の予報
5. 気温は20℃程度
6. 同宿の方と宿の女将さんの話
「今はもうやってないが、昔は小学生の遠足ルートだった」
「急坂が多いので登るときは良いが、下山時はかなり怖い」
「一日で登って下山するには丁度いい時間」
「登山ルート自体は厳しいが、成人男性なら問題ないだろう」
「入山口は宿からほど近い」

すでに近隣スーパー等は閉まっており昼食・行動食は買えなかった。
昼食・行動食は翌日に確保しようと考え、就寝。

▼11/21:登山当日

06:00 起床、近所の温泉に行き朝風呂
07:30 宿で朝食を取る。
近所のスーパーの開店は9時以降ということがわかる。開店時間まで待つと時間的に厳しくなるため、昼食・行動食を携行せずに登ることに決定
水分は500mlペットボトルを2本持っていた。

08:00 宿をチェックアウト、入山口に向かう
08:30 入山
入山にあたり、登山届(登山計画書)は出していない。
入山口付近の案内看板を撮る

※案内看板、ついでのつもりで撮っていたがかなり役に立った

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10:00 万代杉(780m地点)に到着この時点で登山道が想像以上に急坂で予想より疲労が溜まっていることは自覚していた。入山道あたりの案内看板によるとスタート~万代杉・モッチョム太郎のあたりが一番急坂であることから、ここからはそこまで急坂はないと判断して登山継続(実際には急坂が頂上まで続く)
途中の小川で飲みきったペットボトルに沢水を汲んだ。

・万代杉
周辺に大きな岩が転がっており休憩しやすい

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・沢の様子
行きはチョロチョロとした軽い水流だったが、帰り道は急な豪雨で膝まで来るくらいの濁流になっていた。補助ロープがなければ渡るのはかなり危険

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・急坂の例。木で滑りやすく、足元が悪い。これが延々と続く

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12:00頃 他の登山者二名(下山中)とすれ違い、軽く会話する。※今回は有意な情報にならなかったが、後ほど遭難救助隊の方から「他の登山者から目撃情報を聞いた」と伺った。挨拶は大事。

12:30 登頂完了
脚が疲労でかなり辛い状態。下山に若干の不安感

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12:45 下山開始
下山中、神山展望台付近でハンガーノック様の症状が出る。

・ハンガーノックで足が震えてる様子。このとき気温は高く、暑いくらいだった


休憩したところ、若干回復したので休憩を挟みながらゆっくり下山

15時ごろ 日が沈みかけていることを自覚。徐々に周囲が見辛くなっていく。
16時ごろ 万代杉付近に到着。小休止。
上りの時間を逆算して考えると下山が17時~18時程度になり、レンタルバイクの返却時間等を考えるとフライトに間に合わない可能性が出てくるため、焦りが生まれる。ペースを上げて下山再開。

17時すぎ 400m地点を通過
周辺がかなり薄暗くなってくる。時間も迫っており、焦りが募る。

17:15頃 いつの間にかピンクテープをロストしていたことを自覚。
最後のピンクテープ付近まで戻るが、次のピンクテープが暗くなっており見つからない。登山道のような道があったためそちらに進行。(実際には登山道ではなかった)
そこから進み始めて少しした地点で足を滑らし、滑落。5m~10m程度滑り落ちた。(滑落といってもそこまで急坂ではなく怪我なし。尻で滑り降りるような形)
ここでピンクテープを完全に見失う

・ピンクテープの例。画像は午前中に撮影したものだが、すでに木で薄暗くなっており、ピンクテープがなければ判別が難しい箇所も多い。(下山中は特に)

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スマホを見たところ電波が通じていることを確認。
GoogleMapで現在地点を見たところ、駐車場(千尋の滝展望台)まですぐ近くの地点だったため、登山道に戻ったら時間的にフライトに間に合わないと判断。登山道に戻らず、このまま方角だけ駐車場(270m地点)に向かえば下山できるのではないかと考え、そのまま下に滑り降りるように下山開始。

…後から思えばこの時点すでに遭難状態でした。時間的な焦りと体力の低下で冷静な判断ができなくなっていたように思います。
普通に考えて、登山道に戻らず下山できるはずがないんですよね。典型的な道迷い遭難の思考パターンにはまりました。

17:30ごろ 崖にぶち当たり下方向に進むことが不可能になる。
登山道に戻ることも考えたが、ほぼ日が沈んでいたため足跡をたどることもできないと判断。ここに至ってようやく、「遭難状態である」と自覚。

17:41 屋久島警察署に電話。
屋久島警察署に現在の状況(GPS座標・スマホの充電状況が十分にあることなど)を伝え、遭難救助要請を行う。
屋久島警察署の指示で動かず付近に留まり、捜索隊を待つことに決定

18時頃から雨の予報があったため、雨よけできる箇所を探す。
ちょうど付近の岩肌に1m程度の洞穴があったため、そこに避難。
身体が冷えないように用意していた上着を重ね着し、救助まで身体を休めて下山に備える。

・洞穴前の様子。「死んだらこれが最後の写真だな…」と思って撮影。
木の向こうは崖になっており、進行不能
以後、スマホの電池節約のため、しばらく電源を切る

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18時ごろ 小雨が振り始める。
18:30ごろ バケツを引っくり返したような豪雨に変わる。日は完全に落ちて暗闇になる。
洞穴内は乾燥していたため、豪雨でも濡れずに済んだ。

19:01 屋久島警察署から入電。
「捜索を開始する、20分~30後程度には付近につくはず」との連絡。
ホイッスルの音が聞こえたら電話を入れるように指示があった。

19:35 屋久島警察署から入電。
「すでに付近にいるはずだが、ホイッスルの音は聞こえなかったか」という連絡あり。聞こえてない旨を返答。
「かなりの豪雨のため聞こえ辛い可能性がある」
「ライトの光などにも注意して見ておいて」
と指示あり。

20:00 ホイッスルの音が聞こえる。
屋久島警察署に電話し、ホイッスルの音が聞こえたことを連絡。電話を繋げながらスマホのライトを振りながら応答する。程なく捜索隊のヘッドライトの光が見え、呼びかけが聞こえる。
目の前の崖が激しく、かなり迂回しながら捜索隊が近づいてくるのが見えた。

20:20ごろ 捜索隊と合流。
行動食を貰い、登山道まで戻るため補助されながら登る。
登山道に戻るまでに他の捜索隊と合流(捜索隊は五名)。登山道に戻る。
(雨が酷く登山道も小川のようになっており捜索隊も見間違えて一度スルーしてた)
捜索隊と一緒に登山道を下山。登山道入ってすぐの小川が豪雨のために脛付近まで水位が上がっていた。

22:37 下山完了
23時ごろ 付近の東屋で事後処理を終える。その後は急遽とったホテルに移動して宿泊


▼まとめ

▼悪かった点

・準備不足
登山するには準備があまりにも不足していた。
特にマズかったのは、昼食・行動食の確保に失敗したのに入山したこと。
ハンガーノック様の症状が出たときに行動食があれば、頂上付近で昼食を取っていれば、もう少し早く下山でき時間の余裕が出たはず。
また、入山届を出していなかったことも致命的な要因になりかねず、迂闊だった。
装備も満足では無く、ヘッドライトやグローブ、トレッキングポール、本格的なレインウェアがなかった

・時間/日程的余裕の無さ
例えば、二泊三日などでバッファを持っておけば下山を焦ることも無く、心理的に余裕ができていて道に迷うこともなかったかもしれない。
荷物も不要なものが多く、体力を削られた。二泊三日なら不要なものは宿に預けるなどして軽くできたはず。
そもそも、突発で登山ということが褒められたものではなく、十分な情報も仕入れないまま入山するべきではなかった。

・引き返す判断
万代杉のあたりで、「想像以上に急坂」ということは解っていたので、無理して頂上まで行かずそのまま引き返す判断をしておけば遭難する要因はない。準備不足も合わせて、引き返すという選択肢は現実的なものだったが、旅行先特有の「この機会を逃したら一生目にしない光景が有る」という強迫観念から強行してしまった。

・道迷い時の判断
登山道の外を降りるとかありえんだろう、と今は思うんですが、体力の低下と心理的な余裕の無さ・焦りで冷静な判断ができてなかった。


▼良かった点
・怪我をする前に遭難救助要請を出せたこと
崖の前で止まってよかった…もし強行していたらと思うとゾッとしません

・遭難を自覚した後の行動
電波が通じていたこともあり、ある程度冷静に行動できたと思います。
遭難を自覚したとき「生きて帰る」ことに全てのリソースを振れたのは大きかった。(自覚後、旅程やらなんやらを全て諦めた)

・当日の天気予報を調べていたこと
屋久島の天気予報は当てにならない、と聞いていましたが、この日の天気予報は正確でした。「日暮れから降り始める」という情報を把握していたからこそ本格的に降り始める前に雨の当たらない地点に避難でき、そこで救助開始まで体力を温存・回復できました。

・沢水を確保していた
最後の手段だと思っていたんですが、念の為沢で水を確保していて良かったと今は思います。脱水症状にはならずに済みました。

▼幸運だった点
・遭難地点で電波が通じていたこと
道迷い後に、GoogleMAPを見ながら降りていたときも「電波は通じているな」と把握していたが、実際に遭難地点で電波が通じるとは限らないので、それは本当に幸運だった。
入山届を出しておらず、警察に救助要請を出せなければ救助が2、3日は遅れていてもおかしくなかった。

・遭難地点が登山道付近だったこと
当日の豪雨の影響でホイッスルの音がかなり聞こえ辛くなっていたが、遭難地点が登山道付近の崖上だったために運良くホイッスルが聞こえた。
(あとから聞いたところ、300m地点に近いところにいたらしい)


▼最後に

ご覧頂いたとおり、遭難の顛末は完全に自業自得のものです。
ご迷惑をおかけしたにも関わらず、救助時に無事を喜んでくれた捜索隊の方々、本当に暖かかったです。捜索隊の方々には感謝してもしきれません。

下山できたときは身体中から力が抜けて、その場でへたり込んでしまいました。山、少なくともしばらくは登らないだろうなぁ…


・更新履歴
2022/10/18 画像を追加

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