見出し画像

ピート・シェリー/ルイ・シェリー『ever fallen in love-the lost Buzzcocks tapes』(11)

アイ・ドント・マインド
I Don‘t Mind
 
シングル
B面:「オートノミー」
録音:オリンピック・スタジオ、バーンズ、ロンドン
発売日:1978年4月14日
ソングライター:ピート・シェリー
プロデューサー:マーティン・ラシェント
スリーヴ・デザイン:マルコム・ギャレット
 
これはアルバムに収録された最初のシングルになりました・・・・。
 
発売したシングルをアルバムに入れないっていうのが僕らの主義だったわけだけど、アルバムが出た後にシングル・カットするのは気分よかったのが本音だよ。それが商売の鉄則だったわけだからね。先にアルバムを買ってしまっていたら、もうシングルを買う必要はないよね。けどシングルをラジオで聴いて、じゃあアルバムを買おうってこともあるわけだよ。できるだけ余分に売ろうとする。今とはちがっていたね!
 
いつどこで創作したんでしょうか?
 
全く憶えてないんだよ。77年の夏だったとは思うんだけど。
 1974年に「ノスタルジア」書いたときにメタファーにはまってたんだ。「アイ・ドント・ドント・マインド」でそれがぶりかえして再びとり入れることにしたんだけど、「ノスタルジア」でのことなんて全く意識してなかったね。
 僕の曲には常にくりかえされるテーマがあるんだ。二つの感情があって、恋愛関係が成就するか図りかねるときのなんだ。人は恋におちるとき、自分がそれにふさわしい人間なのか思い悩むことってあるだろ?自分の心の中には疑惑があって、自分で勝手に解釈して思い悩む。「何でこうなるんだろう?」って感じでさ。半信半疑の感情。自分への疑いと二人の関係への疑い。これを描いた。恋愛って募る程に悩んで、「自分は名優なのか、それとも大根役者なのか、魔術師なのか、それともイカサマ師なのか、判らない」っていう思いに往々にしてなるもんだよね。
 
当時はどんな人と交流がありましたか?
 
たくさんの人と接してきて、長い間創作活動してきたけど、特定の人物をテーマに曲を書いたってことはないんだ。一人の人間について書くってまずないね。その人だけじゃなくって、その人も含んだ、いろんな状況を絡めたものを反映させてるんだ。他人のバイオグラフというより僕自身の自叙伝のようなものだね。他人はひとつの取っ掛かり。僕に影響をもたらすものをもたらす取っ掛かりだね。曲は人との交わり、恋愛関係、読んだ本からのこととかを混ぜ合わせたカレイドスコープみたいなものさ。一人のアメリカ人の伝記映画と言っていいのかな。そう、架空の物語を創るにあたってたくさんの人から一人の特定の人物を創り出す。その人物の伝記映画みたいなものかな。
 もし一目惚れするなら、まっしぐらだろうねぇ!どれ位相手に執着し、長く想い患い、どれくらい深く片思いするか。その時次第だろうけど。
 パラノイアックになって冷静にはんだんできなくなっているサマを歌ってるんだ。「僕は思う。君から電話がかかってくるとき、君は僕を嫌ってるんだろうと」もちろん、相手が自分に電話してくるとしたら、何故そのとき相手から嫌われてしまうと思ってしまうのか、とも思っているわけだ。相手が自分を傷つけることを訴えているんだよ。
 話は変わるけど、僕が十代の頃、街では毎年お祭りがあって、仲間とよくくり出したよ。ある年のことだった。女の子たち数人と僕らは仲良くなってね。その内の一人に一目惚れして、何とか彼女をモノにしたくて、彼女の友人の娘と接触するようにした。ペニー通貨が廃止になるほんの少し前の時代のことさ。その友人の娘は僕に惚れていたんだ。なのに僕の方は気付いてなかったんだ。僕自身本命の娘にばかり気が入ってたからね。けど本命の方は僕には関心がなかったのさ。シェイクスピアを地でいってるね。『お気に召すままAs You Like It』に出てくるロザリンとか、『間違いの喜劇The Comedy of Erros』そのものだよ。そうでなかったら『シラノ・デ・ベルジュラックCyranoCyrano de Bergerac』とかね。僕は迂闊だったよ。
 
ライヴの時は、誘惑が常にありましたよね。
 
そうだね。ホレたハレたの問題だよね!誘惑はなかったとは言わないよ。毎日たくさんの人間と会ってきたし。けどライヴが終わったら大抵まっすぐ家に帰っていた。そういうチャンスはめったに巡ってこなかった。今と変わらないよ。ショウが終わって控室に戻り、ホテルのバーで一杯ひっかける。ベッドに入る。けどお相手はいないぜ!毎晩ハメ外してなんてことはないさ。そりゃあ積極的に言い寄られたらってことにはなるかもしれないがね!けどバンドに入ってそういうことを望んでいたわけじゃない。お誘いを受けたりとか拒み切れない状況に至るなんてことにもならなかったし。このテーマは僕のソロ・ナンバー「イフ・ユー・アスク・ミー・アイ・ウォント・セイ・ノーIf You Ask Me I Won’t Say No」で取り上げているよ。
 
誰もが不安に心惑わされますよね。
 
皆不安を抱えているものさ。精神病とかそういうのではない意味でね。自分の思い描いていたのとはまるでちがった結果に陥ってがっくりくるんだ。そして傷つくことを恐れ逃げようとする。僕は僕自身と同じ経験をした人たちに向けて曲を書く。僕の曲を聴いたよって言ってくる人がどこからともなく現れるんだ!思っていても口には出せないことを言ってくれたと皆から言われる。アーティストの役目の一つってそこにあるんだよ。インストルメンタルだって人の心は表現できるよ。
 僕は一人の人物をテーマに曲を書くことが多いけど、特定の人物について書いたことはない。特定の人の微に入り細を穿つマネはしないようにしている。そうすればリスナーは自分の身に引き寄せて想像力を働かすことができるようになる。僕のことじゃないよ。リスナー自身だよ。僕のことばかりをネタに書いたって,聴く方はつまらなくなるだけだもの!