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『東京組曲2020』深堀り企画 vol.2

【吉岡そんれいさんインタビュー】
= 偏屈な僕が、家族愛100%になった =

三島有紀子監督の企画に賛同し、一緒に本作をつくった出演者の皆様たちのインタビューによる『東京組曲2020』深掘り企画。第2回目は、吉岡そんれいさんです。

―― 初めての緊急事態宣言後、コロナについて何もわからない、外出もままならなかった当時を振り返ってみて、今、どのように思われますか? 

不要不急で芸能の仕事が動けない時期でしたが、建築現場の仕事もしていた僕にとっては生活リズムにあまり変化はありませんでした。普段は朝礼が8時にあるのですが、ちょうどこの自宅撮影をしていた頃の現場はコロナ対策を取っていたので、朝礼が7時で16時に仕事が終わるという生活スタイルに変わり、仕事は休みにはならなかったものの、朝早いから帰りも早くて気分がとっても良かったです。
芸能活動が休止になったことは、みんな一旦お休みね。という安心感はあったのですが、メジャーな俳優の方々の悲しいニュースも増えて、「芸能界って、なんなん・・・もう普通に仕事して生きていければそれでいいじゃん」みたいなことを思ったりもしました。
あの当時、YouTubeで古民家DIYとか投資の動画をよく見ていて、気持ちがすごく芸能界離れした時期でしたね。それに、日本政府の残念なコロナへの対応・対策のニュースを見た時に、「日本、結構ヤバい国に仕上がってるな・・・」といった危機感を感じました。

―― 本作の企画へ参加したきっかけについて教えてください。 

芸能・映画・音楽や飲食などいろんなことがお休み状態になる中で、日本はインバウンド消費欲しさにコロナ対策、対応がもの凄く遅れているようでした。でも、そんな残念な日本政府にしたのは投票率が低く、政治は政治家任せ、投票へ行っても変わらないという自分たち国民の責任でもあるなと、すごく自分の中で気持ちがモヤモヤしていました。
そんな時に、三島監督から「今、思っていることを記録してください。そのままを撮ってください」といった企画内容の案内をいただき「これなら自分も参加出来る。やってみたい」と思ったんです。

―― 三島監督とはどのような対話を重ねて撮影に臨まれたのでしょうか? 

何度も対話を重ねてたどり着く、という作業をしてみたかったのですが、リビングで寝転がって猫のきんときくんに政府への不満や世の中に対する不安を話している試し撮りが良かったようで、すんなり方向性が決まってしまいました。それと、三島監督から「それだけだと物足りないので、食事のシーンも撮りましょう。そこで好きな食べ物について何か言ってたり、それをきんときに話していたりする映像があると良いかもしれませんね」と提案をいただきました。きんときくんに話してはいますが、猫さんの横でひとりで喋っている男なので、どこか説明台詞的になってしまわないか心配でした。

―― 「みんな、どうして楽しいことばっかり呟くんだろう」「楽しいことだけ考えて生きたいよ。でもそれじゃあ、ヤバいんじゃないの? ちゃんと批判しようよ」とぼやくように話していましたよね。
完成した映画をご覧になって、客観的にあの頃の自分の様子をどのように思われましたか? 

政府についてもそうだけど、日本の違和感がすごく気になってTwitterで政治関連を調べることにとらわれていました。とらわれ過ぎて、すぐ横にあるギターを弾いて楽しみたいのに何を弾きたいか思い浮かばず、ほんとにスマホで調べ物ばかりしていました。時間の使い方がもったいなかったかもしれませんが、でもそのおかげで三島監督の企画に参加出来たわけですし、きんときくんと映画に出れたので、うーむ、それはとても良かったです(笑)。

吉岡さんがTwitterのチェックをしている横に、猫のきんときくん。

―― ずっと寄り添ってくれた猫のきんときくん。吉岡さんにとって、どのような存在ですか? 

愛嬌先生。そんな甘え方あるの!?先生。好きなことだけして生きる先生。デトックス先生。リセット先生。常に側にある食べ放題の焼きたてパン。めちゃくちゃいちゃいちゃしていい先生、友だち、子ども、でしょうか。
ちなみにきんときくん、だいぶ慣れた関係性に見えるかもしれませんが、撮影時、里親になってわずか2ヶ月なんです。

―― わぁ、時と場合により、いろんな関係性になれるんですね。今回は、共演者ですね。三島監督からのシチュエーションポイント「明け方(朝4時)に女の泣き声がどこからか聞こえてくる」というシーンでもきんときくんは一緒でした。その女の泣き声を聞いた時、どのように感じましたか?

明け方4時に実際に撮影したんですが、かすかに聞こえてきた泣き声がなかなかおさまらなくて、そのうちだんだん大きくなってきて、心配になってきて、家庭内暴力とか事件性があるやつかと思ってベランダから見渡して聞いていました。
聞いていると泣き声は、目の前の誰かなのか電話の相手なのか、寂しい思いを訴えているんだなと、会いたい人に会えない寂しさを訴える泣き声なんだなと感じ、泣き終わるまで聞くことにしました。
その後、朝食の時きんときくんに話しかける時に、別れた妻の名前できんときくんに話してしまっている。というのを撮ったんですが
そこは本編では使われませんでしたね。

―― コロナ期間を経て、自分自身で「変わったな」と思うことはありますか? 

コロナ禍でいろいろなネット動画を見ていた時、ある小さな子どもの兄弟のYouTube動画を見たんです。自分自身もまだ幼いお兄ちゃんが弟のことをとても気遣って面倒をみているんですよ。僕にも兄がいるんですが、兄も子どもの頃、きっとそうしてくれていたのではないか、よくケンカしていたのは自分が偏屈だったからだ・・・と気づいたんです。
僕は、子どもの頃から兄弟仲良くないことにコンプレックスがありました。自分が27歳の頃に母が亡くなってからも、実家で兄と顔を合わすと大抵うまくいかずケンカになっていました。そのうち兄も恐らく気を遣って僕と顔を合わせないようにしていたと思います。でも今は、自分の偏屈さに気づいてからは 素直に兄の言葉を聞ける様になりました。
母に一度 悲しそうに、「たったひとりの兄弟なんだから、、」と言わせてしまったことがあるので、、やっとひとつ母を安心させることが出来たという気持ちです。
家族って大事だなと自分の中の家族愛が100%になりました。

―― 逆に、コロナとか関係なく、「これはずっと変わらずにいたい」と思うことはありますか? 

以前から、人間の正義はおそらく3歳くらいまで。もしくは、せいぜい小学生低学年くらいまでが限界じゃないか?と思っているんです。なので、自分の中の子どもの心を大事にというか、子どもから学ぶ気持ちを大事に変わらずにいたいと思っています。

―― 今後、チャレンジしてみたいことについて、お伺いできますか? 

アクションを身につけたいと、自分にあうアクションを教えてくれる方を探していたのですが、2022年12月よりアクロバット、主にバク転・バク宙のパーソナルトレーニングに通っています。僕は、ジャッキー・チェン世代なので彼のようなアクションに憧れがあり、いつか映画でアクロバットなことが出来る役をやってみたいと思っています。

―― 映画を観てくださる方々に向けて、メッセージをお願いします。 

皆さんもあの時、いろんなことを感じたと思います。でも、人間って忘れてしまう生き物です。
それこそ政治哲学で「国民はやがて忘れる」と言われています。僕は3年前に「芸能活動出来なくても別にいいじゃん」と思ってたことも忘れていました。
『東京組曲2020』には、あの頃のいろんな人たちが出てきます。一人で観に来たなら、帰り道に「はっ」として立ち止まるかもしれません。あの頃、自分はああ思っていた!とか。
誰かと観に来たなら、お互いあの頃の自分のことを喋りあって盛り上がるかもしれません。
この映画にそういう作用があれば嬉しいです。この映画が、自分自身を振り返るきっかけになったらいいなと思います。

そして、皆さん、日本の選挙の投票率を上げましょう!! 投票率が上がることで日本の政治、わたしたちの生活は良くなると思います。映画と投票率をぜひよろしくお願いします(笑)。


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